第15話 宿命を燃やして 6
「フ、フ、フ・・・。フッ、ハッハッハッハッハーーっ!」
アラインが絶叫すると、眼が妖しく赤く光り、左腕から赤い手が、両脚から赤い足がヌッと生えてきた。
「アライン、ダメだ!」
「感謝するぞ、スフィーティア。こいつを持ってきてくれて」
そう言うとアラインは、スフィーティアを押し離し、スフィーティアの頭上を飛び越え、オギルに剣聖剣
「ウギィーッ!」
しかし、手下のガラマーン・パラサイトが盾となり、代わりに
「ふむ、こうなっては、ここは諦めるしかないかの」
オギルは、そう言うと、手下のパラサイト等を盾にして、逃げ出した。
「逃がさん!」
アラインは、パラサイトを次々と斬り倒し、オギルに迫ろうとするが、オギルは部屋から出てしまう。
この騒ぎに気づき、生殖行為に勤しんでいたパラサイトも女たちも恐怖から我も我もと部屋から出ようと出口に殺到した。
「可哀そうに。暴虐な鬼畜どもに穢され、その子を無理やり身ごもらされた女達。鬼畜の子を産み落としたら死ぬしかない可哀そうな女達よ!この
アラインは、そう語り終えると、レッド・クリミナルをかかげた。レッド・クリミナルから炎が舞い上がると天井を焼き、屋根を突き破った。天井に燃え移った炎が広がり、火の粉が落ちてくる。
「死ね、緑色の
そう言うと、アラインは、レッド・クリミナルを周囲に一閃した。忽ち建物の中は、炎に包まれた。
「うぎゃー-!」
「きゃー-!」
パラサイトと女達の絶叫が響き、そこは阿鼻叫喚の場となった。
「アライン、止めるんだ」
スフィーティアは、アラインを止めようと近寄るが、アラインはジャンプし、開いた天井の穴から外に飛び出した。
「いやー!死にたくない。死にたくないよう!」
近くで薄汚れた灰色のシャツのようなものを纏っただけの栗色の髪の少女が涙を流しながら炎の中を逃げ惑う。炎に包まれた建物の中で、炎に焼かれる女達。少女もこのままでは、焼死してしまう。スフィーティアは、迷わず、少女に駆け寄り抱き上げると、ジャンプし、アラインが出た天井の穴から外に出る。大きく跳躍し、外に出た瞬間、轟音とともに館は炎に焼かれ崩れ落ちた。
スフィーティアは、外に飛び出ると崩れ落ちた館を背に着地した。集落の建物に次々と火の手が上がっており、ガラマーン・パラサイト等が逃げ惑っている。そのガラマーン・パラサイト等をアラインが殺戮していた。
「うぎゃーっ!」
逃げ惑うパラサイトが集落を脱出しようと集落を出る門に殺到していく。アラインの背中から赤い大きな翼がブハっと伸びる。一羽ばたきするとガラマーン・パラサイトの群れに飛び込み
「貴様らに行き場はない。ここが貴様らの墓場だ。フハッハハハー!」
アラインは、遠くにいたパラサイトには
スフィーティアが助けた少女を除いて・・。
「大丈夫だ」
スフィーティアが白い竜紋章のロングコートを脱ぎ、ブルブルと恐怖に震える栗色の髪の少女に羽織った。そこに、アラインがやってきた。
「スフィーティア、その少女を渡せ」
スフィーティアは少女の前に立ちはだかる。
「何をするつもりですか?」
「その少女も穢された。やがてガラマーン・パラサイトの子を孕むだろう。そうなれば、パラサイトの子は腹を突きやぶり出て来て、その少女は死ぬぞ」
スフィーティアは、まだ12歳頃の少女を見る。栗色の髪の少女は怯えていた。
「できません」
スフィーティアは、首を横に振った。
「なら、勝手にやるさ」
アラインは、少女を狙った。それを阻止するスフィーティア。二人の剣戟がぶつかる。
「退け、スフィーティア!」
「嫌です」
「あの少女はどうせ死ぬ。生まれたガラマーン・パラサイトは、また人に害をなすんだぞ!」
「助ける方法があるかもしれないじゃないですか」
「無い!甘い、甘いぞ。スフィーティア」
剣越しに睨み合う二人。
その間に少女は逃げ出し、その場から走り遠ざかっていく。
打ち合う二人。すると、空に閃光が走ったと思うと、二人を目掛けて雷が落ちてきた。
ズドドドーン!
鋭い雷鳴が響く!
間一髪で、お互いの剣戟の勢いで弾きかわすスフィーティアとアライン。空を見上げると、大きなヘリオドール・ドラゴンが舞っていた。
そのヘリオドール・ドラゴンが舞う高度よりも低い位置にオギルが浮遊していた。
「まさか、ここまでやられるとはな。ぬかったわ。だが、生きては帰さんぞ。ここでドラゴンに殺されるがよい。ウヒヒヒ」
「その前にお前を殺してやるよ!」
アラインが、翼を羽ばたかせ、オギルの元に詰め寄る。
「早くわしの子を産んでくれよ。その姿になってもまだわしの子はいよう」
オギルは、アラインの攻撃を交わすと、アラインの腹部を触り緑色の長い頬を摺り寄せる。
「おお、動いとる。動いとる。元気な子じゃ。ウヒヒヒ」
「貴様!」
アラインが怒気を発し、オギルを斬る。
アラインがオギルを十文字に斬り伏せたかに思えたが、オギルは消え、数十メートル先に姿を現した。
アラインは、自分の腹を赤く大きくなった左手で触る。
(ほんと、あいつの言う通りだ。腹の中で暴れてやがる。誰がこんな化け物を産み落とすか)
「誰が、お前の子など産むものか!」
アラインは歯を食いしばると、レッド・クリミナルを両手で持ち、自らの腹に突き刺した。
「グハッ!」
アラインは、口から血反吐を吐きながら笑みを浮かべた。
「残念だったな。お前の子は死んだぞ」
グシャッ!
アラインは、腹から剣を抜くと腹に手を突っ込み、小さな緑色の丸まったものを取り出し、掲げると握りつぶした。
「何ということを!わしの子を産むまでは生かしておいてやろうと思ったものを!」
「ハア、ハア、ゼイ、ハア・・。鬼の子などお断りだよ。ウグウァッ!」
「アライン!」
地上で様子を見守っていたスフィーティアが叫ぶ。アラインの様子が変だ。痙攣し、苦しそうにしている。そして、胸の輝石が赤く輝き出すと腹の傷は、見る見る埋まって行く。それと共に身体が赤色化していき、ゴツゴツした鱗に覆われて行く。
「不味い、アラインが竜華していく!」
「馬鹿め、自分から竜になることを選ぶとは。その前に、
そう言い残すと、オギルは、杖を振るうと残像を残し、姿を消した。と、同時にヘリオドール・ドラゴンの攻撃が始まった。
クケケケーーーーッ!
ヘリオドール・ドラゴンが狂声を発すると、幾筋もの落雷が落ちてきた。
(竜力が解放され、傷は埋まった。私は竜になり始めた?)
アラインは、竜華を自覚し始めた。
(この赤い身体が、私だと?なんかいっぱい光が落ちて来るな。ああ、当たっても痛くもないや。何か、痛みを感じなくなっているのか?)
「アライン!」
(スフィーティアが下で何かを叫んでいるな。何を言ってるんだろう。うん?何だ上にいるあの黄色い竜は?そうか、あいつが私を攻撃しているんだな。やられたらやり返さないとな。うふふ)
アラインは、翼を羽ばたかせるとヘリオドール・ドラゴンに飛びかかって行った。
「アライン!」
上空を見上げ、戦況を見守るスフィーティア。しかし、逃げ出した少女をあのままにはしておけない。アラインなら、あのヘリオドール・ドラゴンを倒せるだろうが、竜華が始まったアラインを放置しておくことはできない。
「私は、どうすれば・・・」
ズドドドーン!
スフィーティアが逡巡していると、上空から黄色いドラゴンが落ちてきたのだ。身を伏せるスフィーティア。
「ウハッハッハッハ!くたばれ、くそドラゴン」
上空からアラインはドラゴンをレッド・クリミナルで斬りつける。
ガキッ!
ヘリオドール・ドラゴンの皮膚は硬く剣は弾かれた。
「キュルキュルキュルキュル・・」
ヘリオドール・ドラゴンが咆哮し、頭の長い角が光ると幾筋もの雷が空から落ちてくる。その雷は、アラインだけでなくスフィーティアの方にも落ちてきた。スフィーティアはそれを、かわすとドラゴンを睨む。
「やはりこいつを始末するのが先だ」
アラインがヘリオドール・ドラゴンの正面から突っ込む。
「うがーっ!」
今度は、レッド・クリミナルが赤く炎を纏っていた。ヘリオドール・ドラゴンはこれを大きな翼を盾にし、食い止める。その間も雷が上空から落ち続けている。
「私も!」
スフィーティアは、カーリオンを正面に構え、呟く
「
剣聖剣カーリオンの剣身から凍気が
「うわおー――!」
アラインの攻撃への対応に集中していたのか、スフィーティアの攻撃には不意を突かれる形となり、ヘリオドール・ドラゴンは硬い翼で防御することができず、スフィーティアの剣戟を腹部に喰らった。忽ち、その部分から身体が凍り付いて行く。
すると、雷撃が収まる。
アラインは、この機会を逃さず、盾となっていた翼を剣戟で弾き飛ばし、露わとなった胸を目掛け
「これで
アラインの一撃が、ドラゴンの胸を焼き、切り裂いた。
クキャキャキャキャッ!
ドラゴンの悲鳴のような咆哮が響く。
「スフィーティア、決めろ!」
アラインが叫ぶ。
「
スフィーティアは一瞬でドラゴンの胸元まで移動し、剣聖剣カーリオンを開いた胸の傷口に突き刺した。剣が心臓を突き破り、凍結させると、ヘリオドール・ドラゴンの眼が色を失い閉じられていく。
ズドド-ン!
ヘリオドール・ドラゴンの巨体は、地面に崩れ落ちた。
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