第12話 宿命を燃やして 3
「そりゃーっ!」
アライン・エル・アラメインは、サファイア・ドラゴンに向かって赤湾刀を振るい、ドラゴンの反対側に一気に駆け抜ける。
グゴゴゴゴーッ!
「ハアッ!」
さらにアレクセイ・スミナロフが、一瞬間を置いた後、同じ位置から特大の赤い大剣で突きの攻撃を行い、やはりドラゴンの反対側に駆け抜けた。
グギョギョギョギョーッ
二人の
サファイア・ドラゴンの硬い皮膚に大きな傷をつけ、ドラゴンは苦しい悲鳴をあげた。
その時だ。空がキラリと輝り、少し離れた場所に雷が落ちた。そこは、スフィーティアを待機させた場所の辺りだ。
ッドドドーン!
雷鳴が続いて響き渡る。
「スフィーティア!」
アレクセイがスフィーティアに待機を命じた方向に目をやる。
「アレクセイ、お前が行け」
「しかし・・」
「ここは、私が食い止める。だから早く行け。
「わかった。決して無茶をするなよ」
「ああ。わかっているよ」
アレクセイは、サファイア・ドラゴンを警戒しつつ、後退し、スフィーティアのいた方向に向かった。アラインは、不敵な笑みを浮かべサファイア・ドラゴンを睨む。
「さあ、ここからはタイマンと行こうじゃないか!」
アラインが、赤湾刀を斜に構え、ドラゴンに突っ込んでいく。
マズい!このままでは、やられる!動け、動け!
来た!
上空から、大きな黄色く輝く物体が落ちて来るのが確認できた。
ヘリオドール・ドラゴン!こいつ、大きいぞ!
身体よ、動け!
ほぼ頭上に落ちて来るドラゴンが見えていた。
「ぐはっ!」
その時私は、突然腹の辺りを蹴られ、大きく弾き飛ばされた。
ズドドドーンッ!
黄色く光るドラゴンが雷電を
「ううっ」
動ける!
私はよろよろと起き上がる。
前を向くと、白いロングコートを着た広い大きな背中が見えた。
「ごめんね。緊急だったからさ」
アレクセイ・スミナロフは、私にニコッと振り返った。
「いえ、おかげで動けるようになりました」
「良かったよ。なら、さっさと
「はい」
私は、カーリオンを抜き、アレクセイの隣に立ち、ヘリオドール・ドラゴンを見上げた。この時、私は自分が油断したのが原因だったのだが、このドラゴンに殺られそうになったことに無性に怒りがこみ上げていた。
「スフィーティア、雷撃と言うのは、最初は強烈なダメージを受けるが、慣れれば耐性をつけられるよ。だから、適度に浴びながら戦うといい。こいつは帯電しているから、剣で攻撃すれば、こちらも電撃のダメージを受ける。最初はきついが、慣れることだ」
「わかりました。やってみます」
私は、ヘリオドール・ドラゴンに突っ込み、硬い鱗に覆われた腹部を攻撃した。
「っつ!」
瞬間、バチッと腕が弾け、痛撃が腕に走る。しかし、堪え剣を落とすことはなかった。
「そうだ。それでいい。こっちも行くぞ」
アレクセイは、そう言うと、大剣を抜き、掲げると炎が10メートル位も吹き上がり、ドラゴンに振り落とす。
「言っていることと違う・・」
「僕はもう散々経験し、耐性あるからいいの。うわっ!それでも近づくとビリッと来るな。やっぱり、やっかいな相手だね」
その時だ。ヘリオドール・ドラゴンが飛び立ち、100m位上空で止まる。
クケケケ、キョヨーーン!
翼を広げ咆哮する。
「雷柱が来るぞ!」
いくつもの雷柱が上空から落ちてきた。
バチッ!バチッ!バチッ!バチッ!
光が落ちた後、間を置いて轟音が次々と響く。
今度は、私も間一髪だが何とか雷撃をかわしていく。
「こっちの番だ。スフィーティア、換装してあいつを落とす!」
「はい。
私たちは、
そして、私たちは、一気にドラゴンと同じ位置まで飛び立つと、互いにドラゴンを挟み込む形で攻撃を行った。
「ハーッ!」
「ドリャーッ!」
竜力を完全開放した私たちの攻撃に、ヘリオドール・ドラゴンは堪らず落下した。
「一気に決めるよ」
「はい」
アレクセイは、赤い大剣を上段に構えると、炎の火柱が上空高く舞い上がる。私は、カーリオンを下段右斜めに構え、凍気を剣に溜めて行く。剣は凍え、周囲も凍り出す。
「行け!スフィーティア!」
その合図で、私は、ヘリオドール・ドラゴン目掛けて突っ込み、一撃をかまし、ドラゴンの反対側に飛びぬけた。ヘリオドール・ドラゴンは一瞬で凍り付く。
そこに、アレクセイが、上段から剣を振り下ろし、焔撃がドラゴンを襲う。
ウギャギャギャーーン!
ドラゴンが焔に焼かれ、悲鳴を上げる。
「スフィーティア、君が止めをさせ」
私は頷いた。
「
一気に近づき、ドラゴンの胸を深く突き、抉った。ドラゴンの眼から色が消え、絶命した。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「君の成果だよ。竜石は君のものだ」
アレクセイは、私の肩に手を置き労ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
私は、倒したヘリオドール・ドラゴンの心臓から黄色く輝く石を取り出した。
「アラインの元に急ごう」
アレクセイは、そう言うや、すぐに飛び出した。私も後に続いて行く。
「アライン、無事か?」
アラインの所に到着すると、アレクセイが声をかける。
「この通り。傷ついちゃいるが無事だよ」
アラインのロングコートは裂け、紫色のシャツ、黒いスカート、紫色のレギンスも破れ、肌が露出していた。
「よし、加勢するぞ」
「一人で大丈夫だよ。お前達があっちを片付けのを待っていただけだ。一気に蹴りをつける。見ていろ!
アラインが換装し、赤と黒の
「散々痛めつけてくれたお礼をしてやるよ」
アラインが大きな赤湾刀を振ると、炎が剣身を覆う。
アラインは、サファイア・ドラゴンを中心にその周囲を回転するように駆ける。スピードがドンドン増すと、剣から出る炎が残像となり、炎の輪が、ドラゴンを包むように見えた。
「喰らえ!
アラインの残像が炎を纏ったようになり、次々と円周からアラインの炎が中心へと焔撃を仕掛ける。そして、ドラゴンの冷気を纏った鱗を徐々に燃やし、剥いでいく。
グウォーッツウォオ!
サファイア・ドラゴンの悲鳴にも似た咆哮が、周囲に響く。
「止めだ!」
最後の炎を纏った一撃がドラゴンの心臓を貫いた。
ズドドドーン!
ドラゴンの眼が色目を失い、竜は轟音を立て倒れた。
と、同時にアラインの
「アライン!」
アレクセイが、駆け寄ってアラインが倒れるのを支えた。
「無茶をし過ぎだ」
「お前を信じていたからな。必ず来てくれると」
アラインは、力なく言う。
「全く、君ってやつは・・」
「スフィーティア、竜石を・・。頼む。動けそうにない」
「はい」
私は頷いた。
「アレクセイ、暫くこのままでいさせてくれないか。お前の
アラインは、アレクセイの胸に顔を埋めた。
「ああ、構わないよ」
「あったかいな・・・」
アラインはいつの間にか寝息を立てていた。
この出来事をきっかけに私とアラインは親しくなり、私達が行動を共にすることも増えた。私はアラインを良き先輩として慕い、アラインも、何かと私を気にかけてくれたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます