第47話~旺太side~

家から出た俺は最低な気分でその場に立ち尽くしていた。



俺が償う理由がなんとなくわかってきた気がする。



1人が死ぬだけでこれほどまで環境が変化している。



それは償うのにふさわしい理由だと思えた。



俺の場合はまだいい。



人を助けて死んでいるから、死んだときの苦しみをリアルに思い出したりしていない。



でも……穂香たちは違う。



みんなそれぞれ違う理由で死んだにしても、死んだときの苦痛を思い出して自分から身を投げ出さなきゃいけない。



そう思うと、胸が苦しかった。



俺は暗くなった空を見上げた。



タイムリミットは残り4時間。



親友にも会えたし、家族にも会えた。



償う理由もわかった。



だけどあと1人だけ、今どうしているか知りたい人物がいた。



俺は目を閉じて、その人物の顔を思い浮かべたのだった。


☆☆☆


景色が変わってゆくのを感じた後目を開けると、そこは見知らぬ部屋の中だった。



出窓にたくさんのぬいぐるみが置かれていて、外国製のカラフルな家具が置かれている部屋をグルリと見回す。



窓際に置かれているベッドの中に、彼女はいた。



名前も知らない盲目の彼女。



俺は彼女の寝顔に自然と笑顔になっていた。



長いマツゲが小刻みに震えて、今にも目を開けそうだ。



俺ベッドの隣にしゃがみ込み、その頬に触れた。



もちろん、手は彼女の頬を通り抜けてしまう。



「君が生きていて本当によかった」



そう呟くと、彼女が寝返りを打った。



背中を向けむにゃむにゃと何かを呟く。



「なに?」



そう聞き返すと「あたしのせいで……ごめんなさい」という言葉が聞こえて来た。



ハッとして目を見開く。



まさか、俺の声が聞こえているのか?



「君の名前は?」



そう聞くが、しばらく待っても返事はなかった。



やっぱり聞こえるわけがないか。



ただの寝言だったみたいだ。



そう思い肩を落として立ち上がる。



とにかく、彼女が元気そうならそれでいい。



名前くらい知っておきたかったけれど、それは叶わぬ願いだ。



俺はその場で立ち上がり、彼女に背を向けた。



その、瞬間……。



「マリよ」



そんな声が聞こえてきて、立ち止まった。



「あたしの名前はマリ」



勢いよく振り返ると、ベッドの上で目を開けた彼女がいた。



「俺の……声……」



「聞こえる。顔も、見えるわよ」



そう言い、ほほ笑む彼女。



「な……んで……?」



喜びよりも驚きの方が大きかった。



「だって、これって夢でしょう?」



夢……。



彼女……マリにとってこれは夢の延長戦みたいだ。



でも、それならそれでいい。



「俺の名前は旺太」



「旺太。いい名前ね。あたしを助けてくれたのは、あなたでしょう?」



「どうしてそれがわかるんだ?」

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