第5話

「何のために電車の中なんかに集められたんだよ」



朋樹がイライラしながらそう言う。



「そんなの知らないわよ」



「お前ら集められたって言ったんだろ!?」



「今の話やこの状況から考えて、そんなに簡単に答えが見つかるわけがないじゃない。あんたちょっとは頭使えば?」



愛奈の言葉に朋樹が拳を振り上げた。



「タンマ!!」



慌てて旺太が朋樹の拳を止めた。



「2人とも冷静になろう。とにかく、ここへみんなが集められたという可能性は高いと思う。



みんな同じように蝶を追いかけてここへ来ているんだから、仕組まれているようにしか思えない」



あたしは旺太の言葉に頷いた。



何者かが意図的にやった事としか思えない。



「ちょっと待って?」



澪が何か思いついたような顔で言った。



「どうした? 澪」



「みんな蝶を追いかけてここへ来たって事は、この電車がどこへ向かっているかわからないってことじゃない?」



「あ……そういわれればそうだよね」



あたしは頷く。



「マジかよ。ここにいる全員が電車の行先も知らずに乗ってるのかよ」



朋樹が呆れた顔でそう言った。



「朋樹は、この電車の行先を知っているのか?」



優志が恐る恐るそう声をかける。



「あ? しらねーよ、そんなの」



あ、やっぱり知らないんだ。



呆れた顔をしていたから、朋樹はこの電車の行先を知っているのかと思った。



どちらにしても電車は停まっているみたいだし、いまだ何のアナウンスも聞こえてこない。



あたしたちの状況は何一つ変わってはいなかった。

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