第26話
26話
阿部先輩
・・勝つ。勝つ方法は。
超えられる方法は。・・・俺が出来る事は。
俺は子羽のダンスを見ている時ずっと考えていた。俺が勝つにはどの様なダンスをすればいいのかと。・・・1ラウンド目は単純に上から押し潰された。第二ラウンド目は、技術の差、そして応用性で負けた。
それなら、3ラウンド目は?どうする。ここで、何か注目されないと・・・。勝つ為に何をすれば・・・。
・・・・一旦落ち着こう。こんなに思いつめても何も思いつかない。・・・そもそも俺はハウスを踊っているんだ。勝つことだけ頭でいっぱいしていたら、勝てる物も勝てなくなる。まずは音楽を聞け。
ハウスは音に体を乗せるダンス。
俺が決めるんじゃなくて、音が決める。曲が勝手に「こんな感じ」って教えてくれる。そんなダンスだ。・・・なんで考えているのか分かんなくなってきたな。
俺は曲にしたがって踊れば良いだけなのに。そうしていれば今まで練習してきたムーブが勝手に出てくるのに。・・・考える必要なんて無かったんだ。
ただ、自然に。
勝手に体が答えてくれる。音楽が俺の体をコントロールしてくれるんだから。
☆
子羽
ふぅふぅ。
まじで死ぬ。まじで。・・・でもこれで潰せた。もうやれる事は無い。
阿部さんのハウスは、一つ一つの熟練度が高くて見ごたえがある。でも、その上かrあ押し潰したら、何も出来ない。答えが出てこないのだ。さっきだって、何をするのかと思ったら、場を走り回るだけ。
それだけしか出来ていなかった。それに対して僕はどうだ?ダンサー受けする、ムーブでさらに踏みにじられた。もう回答はないだろ。
そう思って見ていたら、何と言う事か。
出してきたスタイルは1ラウンドと同じムーブ。2ラウンドのようにスタイルを変えて場を走り回る事はせず。最初にやっていたハウス。
僕にはその行為は負けを認めたように感じた。だって、もう潰したダンスなのだから、もう一度やってもまた上から潰せるんだから。
「・・・何それ」
そう思っていた。
だけど、実際に出したハウスは最初にやっていたスタイルとは同じであるが、人が変わったように別のダンスをしだした。何かに憑依されたように。
ダンスはその人の感情が出てくる。だから、どんなダンスなのか。どんな事を思ているのか、ダンスをやっていれば分かる。
それなのに、目の前のハウスにはその感情が・・・無いと言えば語弊になる。だけど、薄いと言うか、そもそも自分でダンスをしていないと言うか。・・・それでも、僕が前のバトルでやったような、何の感情もない嫌味ったらしいダンスではない。
・・・分からない。なんであんなダンスが出来るのか。・・・でも、、、僕に勝てるダンスじゃない。そんな純粋なダンスだと。。。面白味が無いんだから。
「絶対に勝つ。」
☆
「勝者 子羽!」
阿部先輩は負けてしまった。・・・途中までは接戦だった。やってやり返してそんな攻防がでどちらが勝つか分からない。そんな興奮する。ダンスで合った。でも、最後の決め手は・・・3ラウンドの一番最後。
子羽さんのダンスが決め手であった。
何をしたのか?・・・正直単純すぎた。ただ、普通のブレイキンをやった。それだけであった。
ならなぜ、阿部先輩が負けるまでになったのか?
阿部先輩のダンスは最後になるにつれてドンドン上手くなっていった、とう言うか何と言うか。
俺たちの心を揺さぶってくれた。3回とも違うダンスで最後のダンスは凄かった。
ダンスに身を任せていて、勝手に体が動いたように・・・音楽を聞いていた。たぶん、あれが先輩のハウスなんだろう。
音楽に合わせて勝手に体が動く様な。でも、そのダンスの中には先輩の味と言うか
、らしさがちゃんとあって。そして、勝つと言う息がちゃんと感じられた。感情が無いと言う事ではないのだ。
・・・そんな先輩のダンスが負けた。簡単だ。
「子羽さんのブレイキンが先輩より上手かった。」
ただそれだけ。熟練度も、迫力も、そのダンスにかける思いも、何もかも勝っていた。
結構前だが剛毅さんに、ダンスのジャンルで差別はあるのか?と聞いたことがある。その答えは、ある一部の人はあると答えると言う、ありふれたものだった。
だから、俺はその一部にはならないだろうな。だって、今だって差別なんてしないし、そんな事をする奴は相手の気持ちを分かっていない。そう思っていた。だけど、たぶん・・・ここにいる人たちは、今の一瞬だけブレイキン以外に差別をしてしまっただろう。
それほど、子羽さんのブレイキンには迫力があって、目が離せなかった。あの迫力はブレイキンでしか、立ちダンスでは出せない物であった。
そう考えこんでいると、さっきまでダンスをしていた先輩が控えの方に来た。俺は先輩の事を考えながら、どう声をかければいいか分からなかった。
「阿部せんぱ、、」
「今は1人にしてくれ。」
今の先輩の心情は酷い物だろう。
もし2ラウンドまでの僅差で負けたのであれば、たぶんへらへらしていたのかも知れない。・・・だけど、3ラウンド目。先輩は最高のダンスをした。これほどのダンスなら勝てる!!
そう確信して、疑わなかった。俺も先輩の勝利だと確信していた。でも、それを裏切ったのは、単純なレベルの差。技術の差。
なぜそれを1ラウンド目からやらなかった!そう思ってしまうが、・・・小奈津さんも、先輩と同じように、あのバトルで興奮して、勝とうと思って。
だから、あれほどのダンスが出来たんだ。だけど、・・・自分と同レベルだと思った相手に、技術の差で負けるのは屈辱である。
だから、今は気持ちを整理する時間をつくらなければ行けない。先輩もそう思ったんだろう。
・・・次は自分の番だ。たまたまここまで来れたが、次に先輩のようになるのは自分かも知れない。・・・先輩の仇を打つとは言わない。それは俺のダンスでは無いから。
☆
小奈津さんに一言言ってからフロアに行くと、そこにはバトル相手と思われる人がもういた。結構速く来たと思っていたけど・・・はやくね?
「あ!光さんですよね。さっきのバトル凄かったです。」
「ありがとうございす。」
すると、そのまま悪手に移ったのだが・・なぜかその時べたべたと触られた。
「それにしても、、、凄い体をしていますね?ダンスは長いんですか?」
「まだ日は短いです・・。」
「そうなんですか!俺は15年以上やっているベテランなんで何でも聞いてください!」
凄い長い期間ダンスをやっているんだな。・・・でも上手そうじゃない雰囲気がするんだが。・・いや、相手のダンスを見るまでは上手いとか下手とか気にしちゃだめだよな。
「おまえ、そう言って全然上達してないだろ。」
・・・
その人の仲間だろうか。その言葉はストレートパンチで合った。その攻撃はたまたま、溝内見はいりそこの空気は最悪のものとなった。
・・・ダンサーらしくない挨拶をして、さっそくバトルが始まった。
「3回戦1試合 X VS 光」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます