第25話
25話
それは、俺にとって・・いやそのダンスを見ていた人にとって衝撃的なダンスだった。
ネームはPower。力と言う意味で使っているのだろうが。その名の通り、その人のダンスは力強かった。
ダンスのジャンルはブレイキン。子羽さんと同じで、ブレイキンのパワームーブ。ただ、その力強さは子羽さん。・・・それ以外のダンサーと比べても桁違いだろう。
そのムーブ一つを見ただけで、存在が違うそんな風に思ってしまった。
・・・この人のダンスは、曲の上に居るんじゃない。曲にかぶさるようにぬりつぶしている。
動画とかでよくパワームーブは見るのだが、その時に見るダンスは音の上にいるだけ。そんな風に見える。でもこの人はそんな常識を破ってきた。
・・・俺が嫌いなダンスと言えばいいだろうか。曲を潰している。そんなダンスだ。
でも、それでも上手い事は事実。
「勝者 Power」
それが起きたのは2回戦3試合目の事だった。
つまり俺は2回目のダンスを終えて、休んでいたころ。割と余裕をもって勝てたおかげでさっきの様に2試合の間ずっと休む事は無く。
なので、学習として見ておこうと。そう思って見ていたのだが。
「あんなダンスを見せられた後だと、やりにくいよな。」
「・・・あそこまで自分勝手なダンスは見た事が有りませんでした。」
あのダンスは自分勝手だった。でも、そのための力が合って・・・それに子羽さんが言っていた「感情を出して。」
それが出来ているダンスなのだろう。
「がんばってください。阿部先輩。」
「ファイトです。」
「あぁ。勝ってくるよ。」
気を取り直して行かなければ行けない。だって次は4試合目。つまり阿部先輩と、子羽さんのバトルなのだから。
・・・どちらが強いか。今の俺は分かっていない。
どちらにも強みがあって、どちらも勝てる要素があると思う。・・・だけど、どちらが勝つかそう聞かれた時俺は阿部先輩と答えるだろう。
「2回戦4試合 阿部 VS 子羽」
スタート。
☆
阿部先輩
ふぅ落ち着いて行け。
これまで何回もストリートの大会に出ている。部活をサボっていた時なんて、こういう場所に入り浸っていた。だから、簡単に負けるはずが無いんだ。気合を入れていけ。
俺はその舞台に立つことに対してなぜか酷く緊張していた。今まで何回もバトルをしてきて。優勝をしてきたはずだ。・・・だけど、目の前の子羽に酷く怯えている。
別に何かされたわけではない。そして俺が何かをしたわけではない。
ただ、その存在に恐怖を覚えていただけだ。・・・・なんでかは直ぐ分かる。・・・子羽さん。あの人は才能がある側の人間だからだ
さっきの子羽さんのバトルを見た時何となく予感があった。
あそこまで、相手を愚弄したようなダンスをするのはなんでなのか。ダンスはもっと楽しい物ではないのか。
・・・だから、分かったんだと思う。
「2回戦4試合 阿部 VS 子羽」
・・・速い曲だ。
思わず焦りで先行を取りたくなってしまう気持ちを押さえて、出来るだけ冷静に判断をしていく。・・・後攻と先行は大事な選択だ。一番最初に見るダンスはそのバトルの基準となる。
そのダンスを超えられるか。それが後攻にはもとめられる。
「・・・先に出るか。」
子羽は今の今まで一歩も動いていない。先に出る気は無いみたいだs。・・・君のダンスを見せてくれ。そんな選別されるような視線を向けてくる。
・・・そんなに見たいなら見せてやると思いながら。・・そうだ、勝つのは俺なんだ。それなら、先行後攻どちらでも同じだ。俺は俺のダンスを全力でやればいい。
そしたら、勝手にジャッジが俺の方に手を上げる。俺のダンスは上手いんだから。
俺のダンスのジャンルはハウス。一般的と言うか、普通と言うか。光ヶ丘とか、小奈津と比べたら、一言で片付いてしまうかも知れない。
光ヶ丘なんて、ポッピンと最近だとヒップホップだっけか?
小奈津も、ソウルと言っていたが・・・それにダンスバトルではそこまでだったかもそれないが、あいつのウェーブは一級品だ。
あそこまで鍛えたウェーブは高校生の中ではみない。
・・・俺にはそんな特徴と言いうか、ジャンルで人が分かるなんてことは出来ない。でも、俺はハウスが好きなんだ。
一時期は他のジャンルを練習した方が良いのかと、そう思ったけど・・・実際に練習した。でも、俺はハウスが好きなんだ。
子のダンスがこの心臓がバクバクする感じか、脳味噌が爆発する感じが、音を拾っている感じが。
☆
剛毅
阿部君だっけ?
ちゃんと音を聞けていて、、それに動けているし。綺麗なハウスだな。基本に寄って踊っていて、見本になる。
だけど、ちゃんと意思が伝わってくる。「絶対に勝つ」っていう。・・・最近の子はダンスを技術だけで考えちゃって、思いをぶつける事を忘れているんだよな。
特にこういうそろのダンスだと思い、気持ちは直に伝わってくる。どんなムーブをするのか、その選択から、ダンスの動き。
いろんな所を見るから、伴って感情も伝わる。その思いが強ければ強い程、ダンスンは深みが出てくる。気がする。ほんとダンスの経験で言っているから、合っているか分からないけど。
でも、阿部君の思いはちゃんと伝わってくる。・・それに比べて、子羽くん。・・・さっきのダンスは、初心者によくある動きに夢中になって感情が出せないとか、そう言う事はないはずなのに、一切ダンスに思いが無かった。
感情を自分から出さなかった。・・・やっぱりダンスにはその人の思いは大切だと思う。そのバトルだって、思いが無かっただけで一切盛り上がらなかった。俺も技術だけしか見れなかった。
・・・もし今回もそんな気持ち悪いダンスをするなら、、、いや。私情で落とすようなことは出来ないな。
「後攻 子羽」
まずは、ダンスを見なけれ・・ば。
そのダンスは俺が思っていた様な、感情が無いダンスとは真反対であった。・・・感情を思いっきり出している。ダンスに深みが出ている。
・・・これでは阿部君のダンスが霞んでしまうぞ。・・上位互換とまでは言わない。でも、それに近い感じだ。
俺のダンスの方が上手い。そんな上から押し潰すような。・・・良いな。こんなダンスを見たかった。それに、さっきと同じブレイキンのはずなのに、全然違う。前のブレイキンは透明感が合った。
でも、今のブレイキンは純粋に相手よりも上手いダンスをしようとしている。
「良いダンスだ。」
第二ラウンド。どんなダンスを返しくれるか。阿部君は・・・さっきのダンスを繰り返しているだけでは単純に比べられるだけだぞ。。
・・・ほう。スタイルをかえたのか?・・・いや、元々のハウスのスタイル、ロフティングの踊り方をかえたのか。さっきは、自分の周りだけの場所で踊っていた。・・別にそれは全ぜん良いのだが、その踊り方をかえて。
場を全部使うよな広い踊りかた。デカいダンスにかえた。・・いいよそう言うの。確かに、それだけで、見え方は変わって来るし。面白い。
子羽君はブレイキンだから、場を大きく使うには足を広げたりするしかない。でも、阿部君は体を移動して、全体で踊っているからそもそも比べる事は難しくなってくる。・・・それに、さっきとは違う踊り方だから、ダンスの質が落ちるとかも無い。
単純に相手と比べる様なダンスじゃないから、こっちとしても難しい。
・・・これにどう返して来るか。子羽君。・・ほう!良いねいいね。
そう言う、直線的なダンスは好みだよ。
さっきとは全くダンスのスタイルは変えずに、でも何も変わっていないかと聞かれえたらNOと答える。
何をやったか?ダンスの強弱を変えたのだ。たぶんスピードを本当に微妙にだと思うが遅くしたり速くしたりして強弱を変えたり、後は・・・・ヒットか?ムーブの終わりに入れるだけで、締まりが出てくる。
キビキビしたダンスでいいじゃないか。・・・でも流石にそのムーブは疲れてくるのか疲労が溜まっているな。筋肉をいじめる様なムーブだから、、それに少しでも音を外すと違和感が生まれる。
これにどう返すか。・・・阿部君も疲れているから、そこまで激しいダンスは・・・出来なさそうだな。同じ様な場所を広く使うダンスは出来るが、それ以上に激しいのは無理だな。
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