第24話


 24話


 それから、少ししてさっきのダンスで消費した体力が戻ってきたころ。

 そろそろ阿部先輩のバトルだと思い、休憩室みたいなところから出ていった。そすろなんということか、阿部先輩のダンスバトルはもう終わっていた。


 予定ではもう少し後のはずだったんだが・・・。俺はもし訳ないながらも、先輩の近くによって。いった。


「先輩、見れなくてすみません。」

「ん?ああ、良いよいいよ。

 それに俺の前のやつが、棄権したらしくてな。それで俺のバトルが速くなった見たいで・・・光ヶ丘も疲れてただろ?有んなダンスを一回戦にやるとは思っていなかったしな。」


 棄権。

 予選を突破したのに、棄権をする人なんているんだ。と思ったが、もしかしたら急な事情で早く帰らなければ行けないとかが、あったのかも知れない。



「先輩は勝てましたか?」

「ちゃんと上がれたぞ。」


 良かった。負けるなんてありえないと思っていたけど。

 これで阿部先輩までもが負けたら・・・結構心細かったし。


「そう言えば、そろそろお前が見たいって言っていた、奴の番だぞ。見て来いよ。」

「そうします。」


 それで、先輩は休むみたいなので、一旦分かれて俺は見に行くことにした。・・・さっき、俺がやって見せたティッキングを一瞬で真似て見せた。そんな人がどんなダンスをするのか、至近距離で見てみたい。


 そう言えば、予選の時はブレイキンだったよな。


「1回戦8試合 子羽 VS TV」


 始まった。

 曲は速めのテンポが良い。・・・楽しい曲だ。


 お!今回は子羽酸が先に出た。入りはブレイキンのエントリーから。エントリーはパワームーブと違って、立ちダンス。


 リズムに乗って立って踊る。よく見るダンスだ。・・・やっぱり入りだから、こんなダンスをするよと教えているのか?これから、パワームーブに入るから歓声を上げる準備をして終えけ。っていう。


 ・・・まだブレイキンの事は良く分かっていないから、、、でもブレイキンのテンプレではあるのかな。

 それで、・・・パワームーブに入った。


 やっぱり凄い。一つ一つの技が綺麗で、純粋に惚れる。

 ただ、パワーの力づよさが見えない。・・・何て言えばいいんだろうか、パワームーブを出したときって、やっぱりぐっと押される感じがあると言うか。


 でも、子羽さんのムーブにはそれが無い。綺麗すぎると言うか。・・・やっぱりそう来るんだって分かってしまう。・・・俺なりの言葉で言うと、、泥臭さが無い。


 当たり前のことを当たり前の様にやる。そんな風に感じてしまうダンスなんて、面白味が無い。もっと、俺はこんなことをしたんだぜ!っと思えるような。

 そんなダンスを見たかったんだが・・・


 相手の番だ。・・・子羽さんよりも技術が乏しい。だけど、何とかしてやろう。そんな息が伝わってくる。


 ・・・でも、同じ土台じゃない。

 ベテランとアマチュアを見ている感じだ。ベテランにアマチュアはかてない。そんな光景を目の当たりにしているかのように・・・ベテランが盛り上がらないのに、アマチュアが盛り上がる訳が無い。


「沼みたいなダンスだ。」


 そのダンスは一切盛り上がらない。楽しくないダンスで合った。

 子羽さんのダンスを楽しみにしていたけど・・見ていてつまらない。俺より技術が高い事は分かった。だけど・・・そのダンスにリスペクトを覚える事は出来なかった。


「勝者 子羽」


 ☆


 小奈津


 それは私の技術不足が原因だった。

 予選は順調に通過し、本選にまでこぎつけた。それは私の心を安心させて本選でも順調に行けるだろう。そう思っていた。


 だけど、そううまくは行かなかった。

 相手はお菓子さん。ヒップホップをしている人みたいで、予選ではリズムよく通過していた。


 最初だけど、私の方が個性が合って注目されていたし、今回は勝てるだろう。・・・せんこうは私、いつものようにまずはウェーブから空気を作っていく。

 続けてスネークにロール。を合わせて行って、私のダンスがかんせいだ。


 ・・・ちゃんと盛り上がっている。

 あまり見ないダンスで、そこは盛り上がっていた。だから、私は興奮していたんだと思う。


「勝者 お菓子」


 それは当然の結果だった。

 あの後の2ラウンド目、そして3ラウンド目。ドンドン私のダンスが薄れて行っていた。

 さっきは盛り上がったのに、3ラウンド目になると一切声があがらない。


 だから、焦って。他のムーブをやらなきゃと、同じムーブをやっても盛り上がらないと。そう思って、他の偶に練習をしていたムーブをだそうとしてた。だけど・・・上手く出来なかった。


 上手く出すことが出来なかった。その様子に、見ていた人はウェーブはあんなに上手くできたのに、なんで?と思っただろう。

 私も、なんでここまでかくかくに不器用な感じになってしまうのか。


 単純だった。私の練習が足りなかった。そして、ウェーブに縋りついていたからだ。私は自分の不甲斐なさに思わず涙が出てきてしまった。


 自信満々に勝てるのは私だと、そう思っていた。

 現実は3ラウンドも持たなかった。私のダンスは1ラウンドの途中までしか効力が無い。そんな廃品みたいなもんだったんだ。


「残念だったな。小奈津。」


 ・・・そんな時来てくれたのは、阿部先輩だった。・・光ヶ丘くんは?私の想像では、今頃光ヶ丘君が私の事を慰めてくれる。そんなふうに思っていたけど。


 ・・・そう言えば、自分の事に夢中になっていたから忘れていたけど、光ヶ丘君はいつにダンスをするんだろう。もしかしたら、今なのかもしれないし。それなら・・・しょうがない。


「光が丘君は?」

「ん?ああ、今行ったぞ。」


 ・・しょうがないか。


「もう大丈夫なのか?」

「ハイ、それより見に行きましょう。」


 気持ちを切り替えて見に行かなければ。

 これで、見そこねましたとかなったら、嫌だし。


「1回戦4試合! 光 VS kouya スタート!」


 丁度始まる頃で遅れる事は無かった。

 曲は結構早いから、いつも光が丘君が練習しているポッピンを上手く使えるかどうか。・・・まえに、遅い曲の方が一つ一つの動きを整理できて結果的に良いダンスになるとか言っていたから。もしかしたら、つまずいてしまうかも。


 ・・・あっ先行を取った。てっきり相手の事を見てからいくのかとおもっていたけど。


「あれは・・・面白い事をやるな。」

「・・何をやっているんですか?」


 今踊っているダンス。あれに私は見覚えが無かった。いつも一緒に練習している時はポッピンの基礎中心で、あんなダンスを練習しているところは見たことが無い。


「・・・ティッキング・・とヒップホップを合わせているんじゃないか?」

「ヒップホップを練習しているのはしていましたけど。・・・ティッキングとはですか?」

「えっとな、ポッピンのスタイルの一つのアニメーションでよく使われる止まるムーブんなだが。」

「止まる?ロックとかと同じ感じですか?」


 ロックダンスは、激しい動きから突然止まる様子が鍵をロックする様子と似ている所からきている。

 ダンスで止まると言って最初に思い浮かぶのはロックだと思う。


「それとは少し違う。いや、突然止まるっていうところは合っているのかも知れない。ティッキングは基本的にオンカウントで止まる。急停止する事を繰り返す事を言うんだ。」


 ・・・確かに、光ヶ丘くんはちゃんとオンで止まっている。


「光ヶ丘はポッピンのこおてゃちゃんと調べていたみたいだから、その時に見つけたのかもしれないな。・・・俺たちに見せなかったのは、奥の手的な。」

「奥の手かぁ。」


 確かに、奥の手の一つでも合った方が良いだろう。いつもとは違う、急に違う、ダンスをするとそれだけで空気感が変わる。今回で分かったのだが、一度決まってしまった空気感は変わりづらい。


 ずっと盛り上がらない人のダンスは何か上手い事をしても、盛り上がりづらい。それに対して、盛り上がる雰囲気があるダンスはなぜかずっと盛り上がっている。


 だから、一度沈んでも空気を戻すために奥の手は合った方が良いだろう。


「でも、今回は初めからつかっていますよね?奥の手。」

「・・・光ヶ丘はなんか空気と言うか雰囲気と言うか、そう言う目に見えない物を読むのは上手いからな。前に俺と光ヶ丘が戦った時も最初っから、自分のダンスをするんじゃなくなった。


 俺はそれは悪手なんじゃないかと思っていた。その時はストリートを知らない奴しか居なかったからな。俺を挑発しても悪い雰囲気になるだけだと思っていた。だけど、その後の一発のムーブで全てをひっくり返した。」

「・・・」

「そう言う、何となくを見ぬくのが上手いんじゃないかな。今回だって光ヶ丘の相手 kouyaは結構ダンス歴が長かったはずだ。だから、最初に差を見せつけたかった。・・・もちろん他にも曲とかもあると思うが。」


 なんか想像以上に、上手くなっていたんだなって。

 私の方が早く始めていたから、私の方が上手いと思っていた。だってやっている歴が長い方が上手い。それは普通だと思っていたから。


 だけど、そもそも練習量がちがった。

 才能とか以前に。練習している時間が。・・・私は部活の後は普通に休んでいたし、そこまでダンスを考えていなかった。


 それに対して、光が丘君は帰っても練習して、ダンスの事を考えて。

 ずっとダンスに身をおいていた。


 だから、この短期間でここまで差がついてしまった。


「・・・」


 阿部先輩は何を考えているのか、ずっと光ヶ丘君のダンスを見ている。


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