第18話


 18話



「は?」

「今度高校生限定のダンス大会があるみたいだから一緒に出ない?」


 それは俺が下校している時、今日は部活が無くてこの後どうしようか、考えながら。そんな時、後ろから声をかけてきたのは、同じダンス部の小奈津さん。まだ、ダンスは見た事無いけど、高校は居る前からダンスをやっていたみたいで、ウェーブとかスネークが凄く上手かった。


「大会?」

「ほらこれ!」


 そう見せられたのは、文明の利器であるスマートフォン。

 そこに移っているのは、でかでかと大会と書かれているサイトであった。よく見てみると、その横に高校生限定とも書いてある。


「・・・読めないから、教えてくれない?」


 ただ流石に、スマホで、さらに歩きながら見るには文字のサイズが小さく、良く見えない。


「再来週の3日に12時から大会があるの!ストリートでジャンルはなんでもOKの大会だってば。」

「お、おう。・・・で、それに一緒に出たいと?」

「そうだよ。」


 ダンス大会か。・・・動画の中でしか見た事は無かったけど、、、今度の夏の大会の前に一回くらいは経験しときたいよな。


 それに、・・・何か刺激が欲しくなってきたしね。最近先輩と即興でやったけどなんかあれのおかげで、誰かと対戦したい気分だし。いま。


「いいよ。どこのサイト?」

「ありがとう!後で送っておくね。」


 そう言った後どこかに行ってしまった。

 ・・・そっかぁ。行動が速いのは良い事なんだけど、もうちょっと教えてくれないかな。いま俺が持っている情報が、大会に出るくらいしか無いんだけど。


 まあ、後で送ってくれるみたいだから別にいいけどさ。・・・でも、大会に出るとしたら、ある程度準備はしないとな。


 それに、ダンスももっと上手くならないと出し。だれかアドバイスをくれる人は、いないかな。・・・阿部先輩は、なんか気まずいし、それに俺とのダンスを見た後から練習に没頭しているんだよな。

 心先輩は、部活の大会で忙しそうだから無理だろうし。・・・3兄弟はどうだ?あの人たちなら、ちゃんと教えてくれそう。


 それにダンスが凄く上手いから、いいアドバイスを聞けるだろうし。・・そう言えば剛毅酸とは全然連絡が取れないな。このまえ、返してくれたメールも忙しいみたいだし。


 じゃあ、3兄弟に連絡を入れておこう。


 ☆


 それは月の光が弱く、街灯が目立つとき。


「それで教えてもらいたい事ってなんだ!」

「なんだ!なんだ!」

「教えてやる!」


 連絡したその日に返信が来て、もうその日の夜には集まる事になっていた。


「今度、ストリートの大会に出るんですがそれまでに、自分がやるべきことを見つけておきたいんですよね。」

「そうか!」

「それなら直ぐに踊れ!」

「今踊れ!」


 そういうと、後ろのスピーカーをいじって音楽が流れた。

 ・・・この前の、阿部先輩とのことから、今日まで色々自分の中で考えて上手くなってきたと思う。だから、3兄弟を興奮させる事はさせたい。


 俺はどこか、ダンスに対して執着と言うか、・・・そんな感情が出てきた気がする。ダンスに魅了された俺は、魅了する側へ。立場が変わったいま、俺がダンスに対して抱く感情も変わる。


 だから、今の俺のダンスは・・・阿部先輩の時とは違って「ネェバァ」っとしている気がする。この前自分のダンスを撮影して見た時、俺が阿部先輩に感じた雰囲気とは違う物があった。


 なんで、そんな風になっているか分からない。だから、今はそこに目を行く必要は無い。出来る事をするんだ。・・・


「ふぅ。どうでしたか?」

「「「ん~」」」


 俺のダンスをみてから、なぜかずっと考えている。もしかして何か可笑しい所でもあったのかな。


「いや。凄かったぞ?」

「でも、あの空気感が」

「なんか・・・ん~。」


 やっぱり、俺も感じたあの雰囲気。

 俺もどうなっているのか分からない。ただ、部活の女の子に言われたのは、俺がダンスをしたときになる。らしい。


 でも、俺はそれも別に個性と捉えれば良いのかと思ってたけど。もしかして、何とかした方が良いのかな。


「なぜか勝手にこんな風になっちゃうですよね。」

「別にいいんだけど。」

「いい感じに圧力になってるからダンスの味として良いんだけど。」

「変える必要は無いんだけど。」

「「「ただ、ポッピンには合わないかな~」」」


 ポッピンは、不思議な動きを音楽に合わせて見せるダンス。だから、この雰囲気とは結構離れているみたいだ。


「ん~基本をやっていれば良いんじゃ無いかな。」

「応用は付け焼刃ににっなちゃうけど奥の手として。」

「雰囲気に合わないから合わせる用のムーブも覚えた方が、でも、ポッピンは崩さない感じで。」

「「「そんな感じ?」」」


 つまり、今まで通り基本とそれとプラスして驚かせるようのムーブを。後は、この雰囲気に合っているムーブ、これはポッピンに付け足す感じでいいのかな?


「ありがとうございます。それで、新しく覚えた方が良いムーブは何がありますか?」

「その前に聞きたい」

「なんで最初にポップを選んだ」

「理由は」


 それは今までになく真剣だった。さっきまではリズムよく、笑わせる感じで教えてくれていたが、ダンスを選んだ理由に関しては本気で奇行としていた。


「俺たちがやっている、ダンスはヒップホップだ。」

「テンポが良い」

「俺たちに合っている」


 だから、このダンスが好きなんだと。たしかに、兄弟のダンスは本当にこの人たちに合っている。

 ヒップホップ。ブレイキンとかとはちがって、音の上にダンスがあるんじゃなくて、・・・ダンスと同じ場所に自分の感情がある。そんなダンスだとおもった。


 兄弟以外のダンスも動画であるがよく見た。

 その中で、ヒップホップは人によって踊り方が変わると言うか。ダンサーの感情が伝わってくる。


 ・・・これほど、言ってくれたんだお返しとは一手なんだが、ちゃんと応えよう。


「なんででしょう。自分にも分からないんですよね。ただ、ある人が最初に数種類、ブレイキンとかポップとかロッキンとか踊ってくれて、その中で一番しっくり来たのがポッピンだったんです。」


 その言葉を聞くと兄弟たちは上を向きながら考え始めた。


「俺たちの主観なんだが、ダンスの種類には性格が出てくる。」

「ブレイキンは大技をだしたい。」

「ロックはぴしっとしたのが好き。」


「「「ポッピンはその独特な見た目が好き。もしくは、リズムをちゃんと取りたい。」」」


 ・・・!!

 確かに、その独特なダンスに魅了された節はある。・・でもそれ以上に、ポップはリズムが視覚的に分かった。そんなダンスだった。


 音が聞こえなくても、見ていたら音が聞こえてくる。そんな、音とダンスが同じ場所で混ざりあっているダンスに魅了されたのは、事実で、いま自分でもなんでポッピンを選んだのか分かった気がする。


「それで、ポッピン以外の要素を入れるとしたら何のダンスがいいですか?。」


 認識出来たからこそ、俺にはポッピンが合っているとおもった。・・・そして、なぜブレイキンがあまり好きでは無いのか。


 じゃあ、そんな俺が大会まで練習すべきなのは。


「「「ヒップホップ」」」

「リズムがちゃんと取れる。」

「ポッピンの技術と合わせられる。」

「ダンスの範囲が広い。」

「・・・」


 ヒップホップ。兄弟がやっているダンスだが、・・・ヒップホップの事についてはあまり知らない。おれが知っているのは兄弟のダンス位だ。


「ヒップホップは他のダンスに入れやすい。」

「最近はヒップホップを入れている奴も多い。」

「見ておけ!」


 そいういい、音楽を流すといつもとは違う感じで動き出した。

 いつも見ている兄弟のヒップホップは、兄弟で流れを読むことに重点を置いて、流れを一番上手く使える様なダンスをやっていた。

 例えば、この前見せてくれた即興なのにぴしっと元々相談していたのかと思うかの様なシンクロとかだ。


 それに比べて、いま踊っているダンスは・・・・ポッピンに近いと言うか。こんな感じじゃね?と教えてくれているダンスだった。


「どうだ!」

「上手かっただろ!」

「分かったか!」

「はい。ありがとうございます。・・・」


 確かに、このダンスは俺の好きなのとドンぴしゃな気がする。見ている人を魅せながらも、俺の雰囲気にも合っている気がする。


「だから、お前が覚えた方がいいのは■■■」

「■■■■」

「■■■■■」


 その日はダンスの練習に付き合ってもらい、帰るのは夜遅くになってしまった。



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