第17話


 17話



 それはバスケの時の記憶だ。

 そのチームにはなぜか、運命と言えばいいだろうか。俺の様な、天才が何人もいた。だから、その場所に居る時は・・・居心地が良くて、皆俺のプレーに遅れを取らない。


 それどころか、俺よりも上手い人だっていた。

 だから、ここだったらスポーツが出来ると思った。


 そんなある日の事、1人のチームメイトにこう声をかけられた。


「お前のプレーってなんか・・堅実だよな。もっと、暴れるようにプレーは出来ないのか?」


 そのチームメイトは、ポジションはセンター、一番相手との接触が多い。リバウンドとかのゴールしたでのポジションだ。


 だからか、こいつのプレーは力強いというか。背中を任せるなかこいつだと言いたくなるようなプレーをしてくれる。・・・でも、こいつのパワーに勝てる奴はこの年代だと少なくて、最近は思わず手加減してしまうらしい。


 本気で押すと、怪我をさせてしまうかも知れないからだ。別にスポーツで怪我をする事はよくある事だでもそれで、ファールが出たりとか、試合が止まるとプレーにししょうが出てしまう。


 だからか、いつも自分と張り合える奴を探している。


 そして、今日はたまたま、俺が標的になったみたいなのだ。


「あ~、どうだろう。」


 その時の俺は、何と言うか。・・・基礎ががっちりした、選手と言うか。そもそものプレー技術の差で押し潰す様な事が多かった。


 でも、特別なプレーは出来ないから、このチームの中だとまだ甘く見られると言うか。


「ほら、分かっていると思うけど、俺ってさお前の様なプレーは出来ないじゃん。」


 こいつの凄い所は、その体の大きさから来る圧倒的パワーだと思う。でも、俺にはそんなパワーは出ないし、そもそも身長は平均でバスケよりの体とは遠い。


「え?・・・でもこの前の試合で、、ほらあいつ、、えっと?」

「?・・・体がデカい奴?でもそいつだったら、お前もぶった押してたよな?」


 この前の試合で明らかに日本人ではない。俺たちよりも身長や筋力が強くて、身体能力が高い奴らと戦ったのだ。その時ほど、自分の身長を恨んだことは無かったが。


 でも、最終的には全員ぶった押して、70対60の僅差で勝った。


「ん~でも、俺でもぎりぎりだったよ?・・・そんなやつをぶったおしてたから、」

「あ~確かに。・・・あの時のことはそんなに思い出せないんだよな。」



 でも、確かに、そいつをぶった押して慣れないリバウンドをした気がするな。・・・あの時は敵の速攻が上手く決まって、俺しかゴールを守れる状況じゃなかったんだ。たぶんあの速攻が決まってたら、俺たちのチームは身体能力の差に絶望して、真面にプレーが出来なくなってたと思う。


 だから、俺が絶対取ると思って・・・いやあの時は確信の方が強かったかな。このボールを取るのは俺だと。・・・あの瞬間だけ、全能感がすごかった。


 だけど、本当にあの一瞬だけなんだよな。


 俺がなやんでいるのをみて、そいつはボールを俺に投げた。


「一回やろうぜ。何か分かるかも知れないし。リバウンドありで。」

「・・・それもそうか。」


 実戦に勝る経験なし!と言う事で、ハーフコートでやる事にした。するとどうだろうか。

 ・・・全く勝てねぇ。いや、分かっていたと言えばそうだろう。こいつが一番得意とするのはゴール下のプレーだ。


 そんなやつに、オールラウンダーの俺がどうやってかつんだよ。

 3対20圧倒的に離れている。


「ほら、ほら、もうちょっとがんばんなきゃ、スタメン外されちゃうよっ!」

「グぅ!!」


 また点数が決まってしまった。・・・もう勝てない、そんな考えが頭を横切ってしまう。

 まだ全コートなら、まだ仲間がいたら、まだ・・・そう言い訳を考えるが、どれも負けるビジョンしか見えない。


 ・・・いまやっと気が付いたのだ。今の俺だと、こいつには勝てない。目の前に見えているのは、チームメイトではない。どこまでも続く壁に見える。


 ただ、その考えが頭を横切るが諦める事は出来ない。これまで様々なスポーツをやってきて、・・・やっと俺と対等な存在がいる場所なんだから。


 ここで諦めたら、もう一生勝てなくなる。


「ここで、勝たなきゃ。」

「そうだよ。光が生き残るには俺に勝たなきゃいけない。」


 かつ。簡単だ。ただ、このボールをあのリングに通せばいい。


 頭が熱くなってくる。だけど、それには気が付かない。だって、それよりも大事ば事が目の前にあるのだから。・・・脳みそを動かす程度で、こいつを超える事が出来るなら、いくらでも動かす。


 パリンッ


 何かが割れた音は誰の耳にも届かなかった。


 ・・・いま。


 その行動は、誰にも予知出来なかったであろう。だって、俺は真正面からボールを叩きこもうとしているのだから。さっきまで、パワーの差で一切のシュートを防いできた。その相手に、何の策もなく当たっていく。


 その行動は、もう諦めたのかと。俺が戦っている時に集まって観戦していたチームメイトはそうかんがえた。でも、その予感は裏切られることになった。


「真正面からなんて、馬鹿でもやらないぞ!」


 そいつももう飽きれて、終わりにしようと思ったのだろう。

 出来るだけ心が折れるように、後悔すら出来ないように。そう、防ごうとしてた。


 だけど、一瞬だけ恐怖を、冷や汗をかいた。目の前にいるこいつの相手をしてはいけないと。


「・・・・邪魔。」

 そいつのブロックは軽々と抜けられて、元々、そこには何もないかのように、次の瞬間にはリングにゴールが通過していた。


「・・・速くして。」

「ボコボコにしてやる。」


 その言葉は挑発だ。

 お前とやるのは時間の無駄だと、アドレナリンが出まくった結果思わず。


 だが、その言葉をそいつは馬鹿正直に挑発として受け取った。そして、・・・挑発には挑発だ。そいつは慣れない、3ポイントを投げるが当たり前のように入らない。ではなぜ投げたのか。


 リバウンドだ。


 これで勝つことは出来ない。俺はお前より強いんだから。そう言う意味で投げられたボール。言ってしまえば、そのボールを掴んだ奴が強い方だ。


「うをぉぉぉぉ!!!」

「・・・ほんと分からないよね。」


 ・・・そのリバウンド。取ったのは光ヶ丘だった。

 身長でもパワーでも勝っていたそいつは、無残にも地面に転がっている。・・・だから、言ってやるのだ。


「俺の方が強い。」


 その言葉は体育館の中に響いて行く。何回も何回も、反響して。

 別に、こんなことになる予定ではなかった。ただ、少し戦って俺が負ければいいのかなと。・・・負ける事は最初から分かっていた。だけどさ、こいつが言ったことば。


 スタメンから外されてしまうのかも知れない。本当にそう思ってしまった。こんなに圧倒的な差で、負けてしまう俺より上手い人はこのクラブに何人もいるだろう。


 だから、思わず。・・・お前が抜ける側だと。


 ・・・それからの事はよく知らない。あの後、俺は気絶してしまったらしくて、目が覚めたのは病院の中だ。何でも、体と脳の酷使でオーバーヒートと言えばいいのだろうか。そんな感じになってしまったらしい。


 それで、肝心の俺と対決した奴は・・・チームを抜けてしまったらしい。

 そして俺も、母がこの事を聞いて俺が寝ている間に脱退と言う事になったみたいだ。・・・バスケでの全国大会は道半ばで。



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