第14話
14話
授業が終わり放課後になった時、俺は我慢ができずに荷物をもってダンス部に直行だ。
昨日、あの後10時になったときでも、兄弟の言っていた音、音楽については分からなかった。ただ、ダンスの練習に付き合ってもらってだけになってしまって、わりと、気まずい。だから、早く意味が分かる用に、練習しなきゃ。
「こんにちは。」
部室に挨拶をしながら入る。
部活のルールというか、マナーというか俺が初めてここに来たときも、挨拶をしたから流れのようにするようになった。
「こんにちは。そこにプリントがあるから、取っていってね。」
あまり関わったことの無い部活の女子が教えてくれた。・・・まあ、掛からると言っても小奈津さん意外と話したことはそんなにないんだけどね。
「なんのプリント?」
それでも、普通に話せる雰囲気ではあったので、そのプリントに掛かれている内容をきいた。
そのプロントには説明やが書いておらず、そこにはダンスのムーブの名前がズラッと書いてあるだけだった。それが何を示しているのか分からない。
「大会で使うかも知れないムーブだって。」
「ありがと。」
そっか。大会は決まったムーブを先に用意しておくんだったな。
それなら、これは覚えておかなきゃ。ただ、全く知らないムーブもあるから、それはどうしようか。・・・後で阿部先輩に聞くか。
大会の振付に関しては阿部先輩も関わっているみたいだから、聞けば教えてくれるだろう。それに、今日もあの兄弟と所に集まるから丁度いい。
「は~い!皆始めるから並んで!」
☆
「そこじゃねえぞ!!」
「音に合ってないぞ!」
「動きが気持ち悪いぞ!」
「すみません・・・はぁはぁ。」
今日も3兄弟の所に来たのだ。だけど、なぜか昨日よりも当たりが強いと言うか・・・指導が難しくなった気がする。
「音をちゃんと聞けぇ。」
「次がどんな音が来るか分かるだろ!」
「ちゃんと聞け!」
ふぅ。ふぅ。・・・流れている音楽に対して、決まったところで決まった場所のアイソレをしろと。そう言う練習をしているのだが、まいかい曲が変わるのにその中に知っている曲は一つもない。
だから、決まった音で決まったアイソレをするのは・・・無理なんじゃないのか。そう思ってしまった。
だって、やれって言われているのは・・・次の音はなんでしょうか?と言う絶対勝てないじゃんけんと同じだ。・・・それなのに兄弟たちは、なぜか音にドンピシャで対応したアイソレをちゃんと出してくる。思わず何かからくりが有るのではないのか?と疑ってしまうほどだ。
これなら、隣で踊っている兄弟たちに合わせた方が簡単に・・・っ
その瞬間俺の脳内に衝撃が走った。
「・・・もう一回。」
「OK!」
「正念場だ!」
「これを逃したら次はねえぞ!」
ただ、その感覚をつかってみたい。
その意気が伝わったのか。もしくは俺の雰囲気が変わったのか。3兄弟たちはさっきの様な、「ダメだダメだ」という表情はやめ、今だ。
と何かを感じ取った域で、気合を入れた。
俺はさっきとは何も変わらないように立ち上がる。ただ変わるのは俺の体じゃない、俺の思考だ。
「♪♪♪・・・いま」
その動かなければいけない音が聞こえた瞬間。4人ともほぼ同時に胸をドン!と前に出した。・・・さっきまでは音が聞こえてから、動き出していた光ヶ丘はなぜか遅れることなく、胸のアイソレを出せた。
「いいじゃねえか!」
「もっとだもっと!」
「ここからだ!」
その事実に、3兄弟は興奮し・・・光ヶ丘が何をしたのか自覚した。
ただ、その事に気が付くのはもっと経ってからだと思っていた。ただ、今回はそれに対して片足でもわかればと、そう。
「ワン、ツー、スリー、ここ」
そしてまたもや、腰のアイソレを4人全員がほぼ同時にだした。
やはり。疑惑から確信に。疑念から正確に。不確定から確定に。暗闇から見出されたその証明は確定と化した。
もう、光ヶ丘は3兄弟がやっていたあのダンスのカラクリが理解できたのだ。
「分かったか?」
「理解できたか?」
「教えろ。」
「ゴホゴホ。・・ちょ、、ちょっと待ってください。」
俺はこの連続した練習で体力を使い切ってしまった。みたいだ。・・・体力の増強もやらなきゃな。ずっとスポーツやってきたはずなんだけど、ダンスは使う筋肉が違いすぎてまだ慣れない。
☆
「・・・つまり、あんたらがやっていたのは、仲間の動きを見ていたんだな。」
俺がこれに気が付いたのは、明らかに難しすぎる練習に合った。どの音が来るか分からない。そんな状態で、3兄弟全員が全く同時で絶対に間違えない。
俺はそれはありえないとおもった。だったらどうやって、当てているのか。
たぶんだが、曲を選んだ人の動きに合わせて動くことが出来ているからだ。だから、間違えない。
「・・・ははは」
「ぶぁははは」
「wwww」
「え。」
なんで笑ってんの?・・・ここはお前凄いな。と言うところでしょ!!
「い、いや」
「完全に違う」
「訳では無いんだけどな。」
「どういうことですか?」
「確かに兄弟の動きを見て判断した時もあったが、」
「基本的にはちがう。」
「俺たちは流れを見ていたんだよ。」
ながれ?
「ほら、この曲のここんところ。」
「お前もここだけは」
「ちゃんと出せていただろ?」
「はい、こんな感じの曲を知っていたので、ここでドン!って来るのかなって。」
「それが流れだよ。」
「俺たちはそれをナチュラルに感じている」
「毎日聞こえている。」
・・・そっか。何が来るのか分かっていたら、ちゃんと正解のアイソレが出せるもんな。俺はじゃんけんでこの練習をたとえたけど、実際は全然違った。
手だけがか見えないじゃんけんじゃなくて、知っている人で、その人の癖も知ってて。だから、こんな手を出すんだろうなって分かる。
「俺たちは」
「音楽だけじゃない。」
「人でも分かる。」
「流れが人でも?」
「「「ほら」」」
すると、俺が立ち上がろうとした瞬間、元々分かっていて、計画していたようにばさっと、全員同じポーズで決めていた。これがほんとにさっき言った、流れで出来上がっているなら・・・どれだけ凄い事だろうか。
何のアクション、合図もなく無尽蔵に動く人間に合わせる。それは、ただ流れを読むとはまた違う。・・・俺にはマネできない、その人の個性。
才能の方が近い気がする。
俺がどれだけ人間の心理について調べて、どれだけその人に関わっても、今の様な突然の俺も何となくの行動。できない。
・・・出来るビジョンが思い浮かばない。
「その人の流れを読むのは、他に出来るようになった人は居るんですか?」
「ん~」
「むむむ。」
「ぬぬぬ」
「「「あ。あいつは出来てたよな。」」」
「え!誰ですか?!」
才能から来るものだから、無理だと。俺には出来ないとおもった。だから、他の人も出来ないのだろう。そう勘違いしていた。
「・・・あんまり、いけ好かない奴だったな。」
「なんか羽根が生えて居たよな。」
「頭にリングも!」
「ダンサーの事を聞いているんですが?!」
え・・・コスプレイヤーのかたなの?
いやいや、羽根が生えててリングがある人なんて生まれてこの方見た事無いぞ!
・・・でも、この人たち嘘を着く様な人じゃないんだよな。それに目がまじな気がする。本当にそう言う人がいたと。
単純に思い出している。
「まあ、そいつの事は忘れろ。」
「俺たちもそいつの事は聞かないしな。」
「前までは聞いていたんだけどね。」
へ~もうダンス界隈には居ないんだ。
その時少し安心したと言うか、肩の力がぬけたと言うか。
俺はダンスの世界では最底辺のゴミなんじゃないかと。そんな感じがして、・・・今までだってそうだ。他のスポーツ業界では稀にしか見なかった才能がある人達。
そんな人が部活に入ってから沢山見てきた。阿部先輩、小奈津さん、さらには目の前にいる3兄弟。この短期間の間でこれだけ多くの才能ある人たちに出会った。サッカーなんて最初に入ったクラブでは1人も才能がある人なんていなかった。
・・・だから。。。。
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