第13話



 13話





 それはある日のこと。鳴る事はないと思い込んでいたそのスマホから突然プルルルルと、耳障りの悪い音が鳴り響いた。


「・・・っ」


 その電話番号を見た時俺は思わず顔をしかめてしまった。本来なら、そんな事をするはずがない相手に。・・・・本来の高校生なら。


 その着信にでる必要があるのか。出るのならどうするか。・・・そう考えている間に、電話は切れていた。相手はでれだけまっても俺が出ない事が分かったのだろう。



「ふう。・・・厄日にならないといいが。」


 朝っぱらから、大量の疲労をかかえさせられたが、これから普通に朝練だ。気を戻して行かないと、練習に身が入らなくなる。


 切り替えて行こう。


 そう思っても心に残ったままで消えない。それはそういう物だから。


 ☆


「おくれてすみません。阿部先輩。」

「いや、1分程度だろ。遅れたうちに入らないよ。」


 ここはとある公園。

 今日は先輩に連れられて、この前お願いした約束。阿部先輩の友人に会いに来たのだ。何でも、阿部先輩が部活を休んでいた時に一緒に活動していた仲間らしくて、結構最近も会ったみたいだ。


 その時に聞いてくれたらしく、快く引き受けてくれた。・・・ここだけの話、心先輩から聞いた話なのだが、先輩の友人は結構癖がある人みたいなのだ。


 癖が、どの方向の癖なのか分からないが、あんまりにも変な方向の奴じゃないと言いな。


「そう言えば、小奈津はよくこんな時間に来れたな。まだ7時とは言え、親も心配したんじゃないか?」

「少し心配みたいでしたけど、このくらいの時間に拘束しても自閉的な正確になるんじゃないかと。そっちの方が心配みたいでしたよ。」


 小奈津は俺が上手い人に会いに行くと話すと、何処から情報を集めたのか阿部先輩に相談して、ついてきた。阿部先輩と俺で話は終わっていたはずなのに、何処に情報が転がっていたんだろう?


 いや、別に来てほしくなかったとかそう言う訳では無いからいいんだけどさ。小奈津もドンドン上手くなりたいだろうから。


「よし、じゃあ集合場所に行くか。」

「集合場所はここじゃないんですか?」

「いやもう少し奥の場所なんだけど、・・・お前ら1人であいつらと合わせるのは教育上良くないのかなと思って、、、」


 癖が強いとは聞いたけど、本当にどんな人なんだよ。

 暗くなって電灯が輝いて見える道を歩いて進むと、ドンドン音楽の音が近くなってきた。


「お、あいつらだ。・・・オイ!おめーらぁ!生きてるか!」


 その声は楽しく踊っていたであろう、ヤンチャな見た目の男性たちの耳に届いた。

「・・・この声は。」

「ああ、あいつだよな。」

「だよなだよな!」

「「「あべ~く~ん!!よく来てくれた!!!」」」


 それはどこか息が合っている、兄弟?と思わしき人たちであった。なんか、漫画で見た事があるような、どこそれとなく知っている雰囲気だ。


「おめえら、元気そうだな。」

「まだ、二日しか経ってないしね。」

「もう二日じゃない?」

「前は毎日合ってたしね。」


 なんか、リズム感が違う。俺が普通に人とはなる時よりもなんか・・・


「オンカウントで話しているんですか?」


 それだ!なんか知っているリズム感覚だったから、違和感があったけどオンカウントで喋っていたんだ。


「お!嬢ちゃん良く分かったな。」

「流石嬢ちゃん」

「初見でよく分かったね!」

「やっぱりそうなんですか。何か違和感があるような気がして。」

「兄ちゃんはどうなんだ?」

「兄ちゃんは分かったか?」

「どこまで分かった?」

「ん~なんか違和感があるなって言う所までしか。」

「まあ、こいつらの喋り方に違和感を持てただけでも上出来だよ。」


 それにしても、よく違和感があるって分かったな。

 正直、音楽は全然聞いてこなかったから、カウントの感覚を知るのももうちょっと掛かると思ってた。だけど、普通に立っているだけでオンカウントの違和感にきづれるほどになっていたなんて。


「それで、何をしにきたんだ?」

「ここには何を?」

「俺たちは何をすれば?」

「えっと、いろんな人のダンスを見たくて。貴方のダンスを見せてくれませんか?」

「いいぞ」

「OKだ!」

「任せとけ!」


 すると待ってましたと言わんばかりに、曲が流れ出した。・・・阿部先輩はつけたみたい。さすがの友人の中。


 三人の兄弟たちは踊りだした。曲がかかったかと言って阿部先輩みたいに雰囲気が変わるとかはないみたいだ。


 そういえば、3人で踊るんだな。・・今まで見てきたのは全部ひとりだったらか、違和感がある。


 ちゃんと見なきゃそのダンスの特徴がわからないかも。そう思い、じっくり見ようと思っていたが、その必要がないことがすぐにわかった。


 ・・・すごい。単純に俺はそのダンスに賞賛をしてしまった。

 それは、そのダンスの特徴だ。・・・一人ひとりのムーブは普通だ、だけど普通のダンスと違って一人ひとりの動作が、全体の良さに繋がっている。


 それに、特徴といって差し支えない点が一つある。それは、3人のムーブの繰り返し。といえばいいだろうか。


 例えばウェーブのムーブをやろうとしたとき、一人だけがやるのではなく、3人で一気にやるわけでもなく。


 ・・・オンビートのリズムではいはいはい、と意図的にずらて踊っている。


 多分この動作を入れるために頑張って練習をしたのだろう。


「・・・どうだった?俺たちのダンスは」

「結構疲れた。」

「割と疲れた。」

「・・・」


 小奈津さんだんまりしてる。


「そのダンスは即興なんですか、」

「よくわかったな!」

「流石だ!」

「わかるなんて流石だな!」


 え、今のが即興なの。てっきり、前から作っていたムーブをこの曲に合わせて踊っているのかと思ってた。


 ・・・俺が思っているような、即興とはまた違う。

 即興なのに揃っていた。・・・。


 なぜか、その3兄弟の事が驚異的に思えてきた。いや、ストリートというジャンルに対しての楽観視がなくなった。


「・・・即興でどうやってそこまで揃えることが出来るんですか。」

「そ」

「れ」

「は」


 一瞬のうちに立っている姿から、決めポーズに変わった。

 それも、さっきと同じで動くタイミングがわかっているような。


「リズムがわかるんだよ。」

「何となくここなんだよ。」

「ずっと音楽がなってるみたいな。」


 音楽が流れている?どういう事だ?

 ・・・分かんない。公園の中だから音は、聞こえる。木々のさざめきや人の足音。


 でも、それが音楽だとは思えない。


「わかんないか?まあ、俺も最初はコイツラの言っていることは分からなかったしな。」


 分かんない。・・・でも、それで終わっては行けない気がする。


 この事が分かればこの人たちと同じような事が出来るようになるのかもしれない。


「今日はじっくり見ていけよ。」

「明日もな!」

「来週もな!」


 それから、俺は3兄弟のダンスを何回も見させてもらった。




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