第11話



 11話


 はぁ。流石に疲れるな。

 俺は何事もなく、部活が終わりその帰宅途中だ。やろうと思えば、田中さんをよんで車でかえることもできる。中学生の時の俺なら、やる事が多すぎて選択肢が無かったけど、今は一旦色々落ち着いて、ゆっくりする時間がある。


 だから、普通の学生みたいに電車で帰りたいのだ。・・・そのために、学校の近くに引っ越したしね。


 そうだ!今日も何もないし、どこか寄り道でもしようかな。寄り道なんて今までした事が無かったから、少したのしみだ。


 ・・・どこ行こうかな。・・・ん~


 俺は寄り道と言う物が分からず周りを見渡す。だが何も思いつかない。だって、今までは移動するとしたら、その場所数日前までには予約していたし。事前にその日の用事は決まっていた。


 だから、昨日とかはあの強面の人と合うのは緊張したし。

 それにと言うべきか、田中さんもこう言う事は経験していなかったからか、俺の要望に40分も時間が掛かっていた。


 いつもなら、どんな状況でも10分以内には諸々終わっていたのにだ。・・・まあ、つまり俺は何処に行けばいいか分からないのだ。


 ・・・他の人のダンスとか見てみたいな。俺が見た事が有るダンスは、「阿部先輩」と「小奈津さん」だけだ。剛毅さんのダンスはなぜか見せてもらえなかったので、まだまだ目が肥えていない。


 やっぱり良いダンスと分かるためには目を肥やさなければ行けないと思う。・・・一番近いたとえだと、料理とかが近いのではないのだろうか。


 毎日味が濃くて、ドロドロとした物を食べていたら、本当に繊細な料理が分からなくなる。反対に、毎日一流のシェフが作ったものを食べていたら、そこら辺の定食屋で出されるものは食べる事は出来なくなるが、味を追求した料理。


 言ってしまえば一流の世界に片足でも突っ込みたいなら、まずは感覚を整えなければいけない。今の俺は、正直真っ白な状態だ。


 何が美味しいか分からないし、何が美味しくないか分からない。だから、美味しいを知るために食べなければいけない。


 ・・・たぶん自分のダンスはその後の事なんだと思う。俺は表現の仕方が分からないのだか。まだ自分を定義できる状態じゃない。


 ・・・と言う訳で、ダンスを見たいんだよな。出来れば上手い人の。・・・田中さんに聞いてみるか。寄り道はまた今度で良いかな。


 それよりおもろそうなことが思い浮かんじゃったし。プルプル!


「田中さん?光樹だよ。」

「どうしました。」

「・・・もしかして今忙しい?」


 なんか、いつもよりも声に覇気がない気がする。そう言えば昨日原稿を渡したんだよな。・・・それが原因なのか?


 いや、俺の小説ってそれなりに影響力があるから、原稿を出すと編集者一気に動くんだよね。それまで休んでいた人も、全員立ち上がって、これからの予定とか出来ればその比重に考えるらしいんだけど。・・・そこらへんは全部田中さんがわに任せていたから、忙しい事を忘れていた。


「大丈夫ですよ。作業もひと段落しましたから。」


 どうしよっかな~。正直、田中さんにマネージャーとしてお金を支払っているから、お願いしても、良いんだけど。・・・流石にお願いするのは、やめといた方が良いよな。


「いや、大丈夫だよ。田中さんはしっかり寝て回復してね。」ぷつ


 ふぅ、何か言う前に切ってしまった。田中さん何気に維持張るからこういう風な時にたぶん無理してでも俺のお願いをきいちゃうだろうし。

 ・・・どうしようかな。。。田中さんだよりで考えたからどうしようもない。それにたぶんこれから、2ヶ月くらいは田中さんは手が離せない程忙しくなるだろうから、田中さんを頼りにしちゃダメなんだよな。


 ・・・そうだ!剛毅さんにメールだけ居れとこ。

 こういう時の大人だよな。昨日の今日だけど、ダンス歴が長いから、ダンスを見る事が出来る場所は知っているだろうし。


「よしこれでOKかな。」


 さっそく送ったので、今日はそのまま帰りましょう。


 ☆


「光ヶ丘くん!ライン入れてきた?」


 たった数日の繰り返し。だけどこの会話は日常となってきた。隣の席の・・・女性が毎日放課後になるとラインの有無を聞いてくる。

 だけど、ラインを入れる気は無いので気にしていない。


「ごめんね。。この後予定が入ってるから急ぐね。」


 決まり文句の様に毎日の言葉。

 そこから、いつの間にか居なくなる俺もいつも通りだ。別に人付き合いが苦手と言う訳では無い。ただ、なぜかこの空気感が苦手なのだ。


 なぜなのかは分からないけど。


 だけど、今日はいつもとは違う。


 俺は急いで、本来は休みである部室に来た。

 ただ、前と同じように心先輩が来る訳では無い。心先輩が居なければここの鍵を開ける事は出来ない。ならなぜここに来たのか。


 本来なら、心先輩が来なければ開けられないが、とある体育科の先生に相談したところ特別に使っていいとの許可が出たのだ。


 ただ、つかって良いのは今日だけで、鍵をちゃんと職員室に戻すことが条件だ。


「あ!やっと来た!」


 今日は俺だけだと思っていたがなぜか部室の前から声が聞こえた。

 その声は最近よく合っていて、よくダンスの練習をしている人のこえだ。


「小奈津さん来たんですね。用事が合って来れないと聞きましたが。」

「うん。急に用事が無くなっちゃって・・・一緒に練習していいかな?」

「元々は一緒に練習する予定でしたから、全然いいですよ。俺も、1人で練習するのは少し心細かったですから。」


 ・・・それからはいつも通りと言うか、普通に部活になぞった練習をしていた。すると、途中で何かをしてほしさそうに小奈津さんが声をかけてきた。


「この前から、いろんなムーブを教えてもらったけど、覚えられた?」


 部活ではでは色々な事を教えてくれているのだが、わりと助かっているのがムーブ、技の練習だ。俺は技なんて良く分からないから、無いを練習すればいいか分からないけど、部活に行けば教えてくれるから助かっている。


「部活でやってるムーブはそれなりに出来るけど、前に小奈津がやってたスネークが難しいんだよね。」


 スネークはポップダンスでも使うみたいなので折角だし覚えたいなと思ったけど、想像以上に上手く行かない。


 すると、個人はぴたっと止まりこっちをむいて話しかけてきた。


「光ヶ丘くんは何のジャンルをやってんの?てっきり、ブレイキンだと思ってたけど。」


 体がそれなりにデカいから、ブレイキンとか体を大きく使うダンスをやれば迫力があるだろうけど、・・・うん。なんかやっぱり違うんだよな。個人的な物だけど、音に対して向き合ってないような気がして、俺は上手く踊れない気がする。


 まあ、それでもブレイキンのあの迫力は一度くらいはやりたい。


「俺はポップだよ。」

「へ~だから、それ系のムーブを覚えようとしてたんだね。・・・そう言えば、ウェーブはできるようになった?」


 ポップでも重要であるウェーブは自分の体の事が良く分かっていないと出来ない。それらな、今までいろんなスポーツをやってきたから出来るんじゃ無いのかな?

 と思ってやっていたが、最近気が付いた事が有る。


 ウェーブの体の使い方をウェーブ以外でみたことがない。・・・ここまで関節を上手く使う事は俺には出来なかったのだ。


 と言う訳で、今は猛練習中である。


「練習中です。。。」

「それなら、ウェーブを見せてよ。私、部活の中では一番ウェーブが出来る自信があるから。」


 そう言いやってくれた、ウェーブは本当に波打っているような。手本の様なウェーブだった。いつかはナチュラルにこのレベルのウェーブをしたい。


 そう思いながらも、俺が出来る最大限のウェーブを見せた。


「・・・どうかな?」

「ん~ちゃんと分解して一つ一つ意識する事は出来てる。・・・だけど、もっと動作を大きくして。ちゃんと悪い所が分かるように。」


 もっと大きくか。・・・こう!かな。


「うんそれで練習したら直ぐ上達するよ。誰を参考にしたか分からないけど小さくやるのは上達してからじゃないとダメ。

 自分でも、出来ているか分からない。」


 おお!さすが部活1。

 そっか、大きくやらなきゃ、自分でダメなところが分からないもんな。剛毅さんは小さくやっていたから、そう言う物だと思っていたけど、大きくやってもいいんだな。


「お!今のいい感じなんじゃない?」

「うん。良さそう。」


 よし、一旦区切りがついたし少し休憩しようかな。

 結構やっているし。


「・・・そう言えば、小奈津さんは何のジャンルをやっているの?」


 そう言えばだ。小奈津さんに関して知っていることは、なんかうねうねした動きをしている位しかしらない。


「私は、、、ソウルが好きなんだよね。」

「ソウル?」


 聞いたことが無いジャンルだ。・・・聞いたことがあるんは定番だけだけど。


「ソウルミュージックで踊るダンスの事をソウルっていうんだけど、昔は結構流行ったみたいだけどね。」


 そう言い、ソウルミュージックをつけてくれた。

 その音楽は直ぐい楽し気で、そんな曲で踊ったら楽しいんだろうな。と思う曲だった。



「こんな感じで私は踊るんだけど、ソウルはどんな踊り方でも良いんだよね。ただ、リズムにノルって楽しく踊れば。」


 ・・・知らなかった。

 正直定番と言われているダンスのジャンル以外は調べていなかった。だけど、俺が知らないダンスでここまで楽しそうなダンスがある何て。


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