第8話
8話
それは昨日の剛毅さんとの練習とはまた違う感じがする。大人数でのダンス練習は1人でやるよりも楽しい。
それもそうだろう。昨日の練習はあくまでも指導だ。悪い所新しい所。それぞれを指導され、新しい自分を作る事の繰り返しだ。
そこに褒めると言う事は、指導の上にしか無い。
指導の為に褒める。ただ、部活という場で大人数で練習をすると、自分以外にも他の人の動きが見える。
決して集中していないわけではない。ただ、自分以外がいると言うことが分かるのだ。
「昨日帰ってから練習したのか?」
そして、俺は昨日とは圧倒的にダンスの熟練度が上がったであろう。
「はい。昨日たまたまダンスをやっている人に会ったので、指導してもらって。」
「へ~、その人結構ダンスしている人なんだな。」
「どういうことですか?」
確かに昨日の剛毅さんは忍者っていうグループ?に入っていると言っていたから、長くやっているのだろう。
「指導って言ったら、ムーブを教える奴が多いんだが、・・・その人は基礎を教えたんだろ。」
「そうです!音の捉え方を教えてもらいました。」
昨日は0時になってしまっていたので、そんなに長く指導をしてもらえる状況じゃなかった。だから、軽く教えて貰ったのだが、その時に、ダンスの中で一番大事な事を教えてもらったんだ。
剛毅さんが言うにはダンスは音に対しての捉え方によって、ダンスの癖が決まるんだとか。だけど、俺はまだ曲とか音とか全然分からないから、まずは音に慣れように・。と言う事で、ポップの練習は後回しにして、ダンスの事について色々教えてもらったのだ。
ただ、本当に基礎的な事は教えてもらったけど。
「やっぱり。昨日よりはダンスに慣れてる。」
「ありがとうございます。」
やっぱり褒めて貰えるのは嬉しい。
「はーい。次はダウンからアップに!ワン&ツー&スリー&フォー&。」
ダウンはオンカウントと言うワン、ツーの部分でリズムを取るのだが、アップはエンカウントという、&の部分でリズムをとる。
ダンスには基礎的に必要な技術だ。
だけど・・・・
「あれ?全然出来ないんだけど?」
「だよね。リズムが分かんない!」
「え!これ間違ってる?」
・・・アップはダウンに比べて難しい。・・いや、日本人にとって難しいと言える。理由としては・・諸説あると思うが、剛毅さんから聞いた限りでは日本の人は音を取る時は基本時に腕を下げたりとか、首を下げたりとか。
基本的にダウンで音を取るのだが、外国の人はリズムをとる時、首を上げるなど、上げる事でリズムを取る事が多いのだとか。
だから、日本人はオンで踊る事が多いと言われる。
「・・・ワン&ツー&スリー&フォー&。オンカウントで屈伸!エンカウントで伸ばす!意識して!」
☆
ふう。今まで使った事の無い筋肉を使うから、疲れるな。今までも新しくスポーツを始めた時は毎回筋肉痛に悩まされた。
バトミントンを始めた時は使う筋肉が違いすぎて、あの時は本気でやばいと思った。なまじ体力はあったから、それも重なって普通の初心者がやる練習量とは大きく違ったもんな。
正直、ダンスもそれ系の、今まで使ってこなかった筋肉を使うと思う。首の筋肉とか、腰の筋肉とか、使った覚えが無いもんな。
「光ヶ丘、さっきのアップに変わる所でつまずいてなかったよな?」
「あ!そうそう。昨日の今日で何があったの!」
休んでいると、阿部先輩と部長の心先輩が興味津々に近づいて来た。
何があったか。練習はしたけど、・・・でも特別な事はしてないんだよな。確かに昨日の部活では全然音とか分からなかったし、正直身体能力が高いだけの初心者の域から出てなかった。だから昨日来ていた1年生の中でも出来てい無い方だと思う。
「えっと、俺が色々なスポーツをやっていたって言いましたよね。」
「うん!色々やってたよね。」
「そのスポーツでの事なんですか、スポーツそれぞれにそれぞれで一定のリズムがあるんですよね。」
バスケなら、ボールをバウンドさせる時のドンドンドンドンと言うリズム。卓球なら、タッタッタッタッ。
テニスなら、た~ンた、た~ンた、。
もちろんリズムが無いスポーツもあるけど。野球とか。
「そのリズムの事を思い出して、そしたらわりと簡単に。」
「他のスポーツが生きたのか。すげぇじゃん。」
ただ、それは他のスポーツから取ってきた貼り付けの歯だ。
俺はバスケのリズムでも、卓球のリズムでも無い。ダンスのリズムが欲しいのだ。だから、このリズムをダンスに出来るようにしていきたい。
「・・・光ヶ丘君は放課後は来る?」
「部活にですか?行けますよ。今日は予定はないので。」
心さんが何か真剣な顔をしているが、俺には何を考えているか分からない。だけど、俺の他のスポーツの感覚をダンスにつなげた事を話した時から、何か考えていた。
「じゃあ、部室で待ってるから。阿部君ももちろん来るよね?」
「・・・わぁかったよ。」
「よろしい!」
それからは普通に部活をやって、授業に移行した。普通の学校生活だ。
☆
それは授業が全て終わった放課後の時間。
俺は約束通り物質に来たが、そこには人気が無く本当にこれから部活が始まるのか?と思ってしまう程だった。
確かに早く来たとは思うけど、それでも1人二人はいると思ていた。なのに、俺以外誰もいない。
あまつさえ、部長も居ない。ということはどういうことか?
部室が開いていないのである。
「どうしよう。」
まじで、困った。
部長が居ないと鍵を開ける事は出来ないだろうから、俺が職員室に行って鍵を貰おうとしてもダメだろう。
それなら、ここで待たなければ行けないのだが、・・・誰もいないよな(キョロキョロ)
・・・部室と体育館の様な運動する場所以外で、踊るのはダメだと言われた。・・・だけど、誰も見ていないなら、・・・少しくらい良いよな。。。
今の俺は昨日今日で、ダンスのモチベは最高潮だ。ダ荒こそ、ある程度自重して気持ちを抑えなければ行けないんだろうけど・・・部室の前で待たせられるのは、流石に我慢ができなくなりそうだった。
「少しくらいなら。。。」
そう思い、音楽を流そうとした瞬間
「だ~め~だぞ~。」
ぱん!と肩にあてがわれたその手。
その手は緊迫状態だった俺の心の隙を上手く通ってきており、誰がやられても驚くだろう。
「うぉ!!」
実際に俺も心臓が飛び出るほど、驚いた。
「言われた次の日に、破る奴が要るか。」
後ろを振り返るとそこに居るのは、阿部先輩であった。先生でも顧問でも部長でもなく。
「・・・はぁ、俺だったら良かったけどな。次からは気負付けろよ。」
「すみません。」
「反省したならOKだ。・・・そうだ、今日は部活は無いらしくてな。」
「え。」
てっきり、部活に来てね。っていう意味で「放課後は来れる?」って意味だと思っていたけど。今日って部活無いの。
「俺も忘れてたよ。てっきり部活は毎日やるもんだと思ってたけど、週3らしいな。」
「・・・それなら、なんで心先輩は俺を呼んだんですか?」
「あ〜お前がスポーツの話をしたときに切り出して聞いた話だから、・・・やって欲しいムーブとかがあるんじゃないか?
俺もよく聞いてない。」
そう言う事か。確かに、今日は部活だと思ってたから、別にいいけど。・・それに部活が無くても、ダンスの練習は凸化でやっていただろうし。
「・・・よし開けれた。」
部室のドア前で、何かガチャガチャやっていた阿部先輩はなぜか部長か顧問しか開けることが出来ない扉を開けた。
「いやそんなに驚く事か?」
「なんで、阿部先輩が鍵を持っているんですか?」
「いやな、心が来るのに時間がかかるらしいから、鍵だけ貰って来たんだよ。」
なんだ、そう言う事か。てっきり盗んだのかと思ったよ。
「まあ、入れ。直ぐに空調も聞くと思うからな。」
「ありがとうございます。」
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