第3話
3話
「初心者には何をやらせればいいのか。。。。。」
俺の目の前には苦悩の末ぶっ倒れている阿部先輩がいた。
何が起きたかというと、・・・端的に言えば教え方が超絶下手。そもそも、このぶっ倒れている人が本物の感覚派だったみたいで、まともに教える事すらできない。
だってさぁ、何で最初からチェアーを教えようとするんかね。
思わず心先輩が走ってきながら止めてたもんね。そのおかげで今年3年になった先輩が適当に相手をしてくれているけど。
ちなみに阿部先輩は隅っこで死んでいる。
「君は覚えが早いね。最初は形だけでいいと思ってたけど、ちゃんと音が聞けてる。」
阿部先輩に比べて、目の前の先輩の教え方はまともでわかりやすい。
ちゃんと、基礎の基礎である所から教えてくれる。いきなり基礎を通り越して応用から入っても何も分からんから、こういう風に教えてくれるのはありがたい。
「ダンスは音を聞くことが大切だからね。ちゃんと音が聞こえているか、これが一番大事。だと、私は思ってる。」
音が大事。
今までやってきたスポーツはそれぞれ意識することが合った。例えば、サッカーだと全体を見ろだとか、卓球だと手を見ろだとか、カバディだとラインとの距離だとか。
色々なスポーツをやってきて様々な特異性を見てきた。だからこそ一つ疑問が湧いた。
「ダンスって動きが決まっているんですよね?それなら音楽は聞かなくても、、、」
「ん~~。確かに振り付けとかが完璧に一寸の狂いもなくできるならそれでいいのかも知れないけど・・・それだと、ストリートダンスはできないよね。」
ストリートダンス。HIPHOP(ヒップホップ)、BEBOP(ビバップ)、BLEAK、BREAKIN’(ブレイク、ブレイキン)、LOCK、LOCKIN’(ロック、ロッキン)、POP、POPPIN’(ポップ、ポッピン)、HOUSE(ハウス)、WAACK(ワック)、REGGAE (ダンス)、SOUL(ソウル)様々な踊り方の総称。
基本的に、即興で踊るダンスを基本としている。
「そう!決まった振り付けを決まった音楽で、舞台の上で踊るダンスとは真反対のフリーなダンスが、ストリートだよ。」
「えっと、、ストリートは好きなんですか?」
熱量が凄い。ここまで早口で教えられるのはまた・・・いや分かりずらい訳では無いからいいんだけど。
「私はストリートはできないな〜。ただのダンスオタクだよ。
あ!でもさっき馬鹿な事をしてた阿部くんはストリート側だって聞いたことがあるよ。」
・・・あの人ちゃんと踊れるんだ。。。あんな教え方をするから全くの初心者なのかとおもってた。
「うちでやるのはヒップホップ系だけど多人数で踊るから阿部くんの趣味とは合わなくて、だから来なくなったって思っているしね。」
ダンスの違い。確かに決まった動きを出すダンスに対して即興でのダンスは真反対とも言える。
バンドで言う、音楽性の違いと同じ風味がする。
「よし!そろそろ始まるから後ろに下がろっか。」
「・・・え?まだ部活は始まってなかったんですか?」
てっきり部活中だと思ってた。普通に踊っている人とかいたし、練習しているなぁ。って思っていたけど、、、
「今は自主練中。皆が自由に踊っているのはそういうこと。」
「あれ?ならなんで俺は教えてもらっていたんですか?」
「あの阿部くんが期待の新人!って連れてきたからだよ。」
・・・阿部先輩はバカでも意外と部活内では評価をもらっておる?あれ?一年来てなかったんだよね?何で?
と、思いながらもここに来たときよりも人が多くなっていたので、早め早めに壁側につく。俺は、見学だからね。
それに対してダンス部の部員はスタジオに並んでいる。
「はーい!注もーく。・・・今回は見学してくれる人が来てくれましたー!!!パチパチ。」
と、言っているのは、さっき阿部先輩と話した心先輩であった。
「まずは部長、副部長、顧問の自己紹介だね。私が部長の心ちゃんです!一応ダンスを教えているのは私なので、実質ここの一番上は私です!
それと、ダンス歴は15年です。」
・・・個性的な人なんだなぁ。顧問が隣にいる中で自分が上とか言ったり。
それに、一つのスポーツをこの年齢で15年もやっている人はそんなに見ないよ。
「次は私ね。隣りにいる心と同じクラスの3年雨です。一応副顧問をやっています。
ダンス歴は5年です。」
おぉ。意外とちゃんとやっている人が多いのかな?5年もやっていたらベテランだぞ。
それに、おっとりしててまともそう。
「最後なのかぁ。まぁいっか。私が顧問の柊です。顧問だけど、ダンスはやったことが無いので、教えてもらうのは心ちゃんになっちゃうけど、よろしくね。」
さらなるおっとりが出現した。
それにしても、顧問が指導できない部活って本当にあるんだなぁ。
「と、言う訳で自己紹介も終わったことだし、私達はいつもの練習に移ります。
見学の人の中で一緒に練習をしたいよ!っていう人は2年生の後ろに付いて真似しながらやってみてください。」
そこからは普通の部活だった。俺を特別扱いをする訳では無く、普通に接して普通に部活が終わった。
部活届はその場でかかされたけど。まあ、それくらいは別にいい。入ろうと思ってたしね。
「ありがとうございました。」
まだ自主練で人が多い部室から出ていく。まだ踊り足りない感じはするけど、他にやる事が出来たから今日はもう帰る事にした。
☆
ここかな。
今は午後の11時で夜真っ只中。それなのになぜこんな公園に来たかと言うと、とある大切な理由があるからだ。
俺をここに呼んだ人はまだ来ていないみたいで人一人いない静かな場所だ。こういうところで踊ったら楽しいんだろうな。
公園とは行ったが、地面はちゃんと舗装されている上でコンクリートではなくアスファルトなので、スケボーやダンスをするには良さそうだ。
折角なので荷物を置いて今日教えてもらった、事をおさらいしようかな。
持っていた荷物は近くの段差に立てかけて、まだ肌寒いからと羽織っていた服を脱いだ。するとそこから出てきたのは、昼間、部活の先輩たちが着ていたようなかっちょえぇ服だ。
まだの服を着るには自身が無いけど、誰も見てないし、それにダンスの練習をするわけだし。
「あ~気分合がh。」
「ありゃ、誰かいる?」
!!!え、こんな時間に人が?!
驚きながら後ろを振り返ると、そこにはキャップをカッコよく被ってイケているおじさんがいた。
「お前さん、中学生か?こんな時間に外にいつのはよろしくないぞ~。」
俺にたいして言葉では注意をしいているが、表情や、動きに対して注意をしていると言う、意識が籠っていない。ただ、言っているだけ。面白がっている。
・・・こんな時は。。。
「む!僕は中学生ではありませんよ!れっきとした高校生です!」
「へ~www。それならいいのか?」
生意気な高校生よりも、人懐っこくて話を真剣に来てくれる子供の方がこういうおじさんに好かれる。
・・・経験上の話だから、今回が当てはまるか分からにけど。
「そう言えばお前さん何してたんだ?」
「ダンスの練習を!高校のダンス部に入ったんですが家に帰っても熱が収まらなくて出てきてしまいました。てへ」
こういう時は正直に行った方が良い。まあ、出来るだけ個人情報は出さないようにだけど。年食ってくると反射とか身体能力都かは落ちるけど、勘はドンドン研がれていくって卓球の先生が言っていたしな。
あながち間違っていないと思う。俺はそのおじさんのプレーに勝つことが出来なかったわけだし。
「お~そうかそうか。実はなおじさんもダンスをやっていてな。折角だし、少し教えてやろう。」
・・・まあいっか。教えてもらえるなら、貰うに限る。まだまだ初心者なわけだから、吸収出来る物は吸収しないと。
「ありがとうございます。」
「OK!」
するとどこから出したのか手にはスピーカーが構えられていた。
「一曲流すから踊ってみろ!」
え、・・・・ちょちょちょちょ、俺まだ踊れないんだけど!!・・・だけど、こういう時出来ないからやりたくないです!とか言うとぶり切れられる事があるんだよな~
ちなみに俺は一回ある。1から教えろと生意気に言ったら全く教えてもらえなくなった。
・・・踊るか。正直踊り方なんて分からないし、そもそもそこまでダンスの事は知らない。ストリートダンスも知らなかったもんな。
まあ、それくらい知らないから、、、どうしよう。・・・今まで教えてもらった技術でがんばるか。
俺が部活で教えてもらったのは、基本中の基本である首、胸、腰のアイソレーションとリズムの取り方であるダウンとアップだけだ。
このレパートリーで踊らなければいけないわけだが・・・無理くね?
・・・がんばれば・・・行けるのか?
いや、無理だよな。・・・
「おい。早くしろ。」
やっべ、もう初心者って事は後で話して、今は音はちゃんと聞いていますよ~って言う事で我慢してもらおう。・・・ダンス歴1時間の超初心者を急に躍らせるんだからしょうがないもんね。
「ふぅ~。」
・・・
その瞬間なぜか体が針金で巻かれたように動かなくなった。・・・緊張しているのだ。ただ目の前の何処ぞの知らないおじさん一人であっても、この緊張は緩まない。
音は聞こえている。だけど、どんな事をすればいいのか、どういう見せ方をすればいいのか。頭がこんがらがっていく。
「・・・音に乗れ。体は勝手に動く。」
音に乗る、この助言は俺の静止していた脳みそを少しずつ動かしていった。
音に乗る。音に乗る。音に乗る。・・・ワン、ツー、スリー、フォー。
・・・ワン&ツー&スリー&フォー&
すると、リズムに乗って覚えたてのダウンを入れていく。
「・・・」
目をつぶって集中しているから、おじさんが何を考えているか分からない。でも、・・・なんだかそんな事も気になんなくなってきた。
周りが見えなくなるようなこの感覚、前もなった事が有る様な・・・今はいいや。それよりも集中したい事が目の前にある。
リズムをとることに慣れてきて、少しずつ振りを入れていく。まずはドンという音に合わせて胸のアイソレーションを。でも、リズムはちゃんと意識して。
ああ、なんかこれだけでも曲に乗っている感じがしてたのしい。
「終わりだ。」
「・・・へ?」
終わりと聞いてからだを止めて、つぶっていた目を開ける。すると、困り顔のおじさんが腕を組んで悩んでいた。
「・・・お前、ダンスはいつからやってる?」
「えっと、今日の午後4時くらいからです。」
あ、やっと言えた。おじさん俺がある程度踊れると思って曲をかけてきた時はすっげえ焦ったな。
「はぁ。そっかぁ。・・・いや、すまん。」
「?どうしたんですか。」
「いや、まだ踊り方すら分からない奴に無理やり躍らせるなんて屑だなぁって。」
・・・ここまで落ち込む?!なんで大の大人が、膝からくぐれ落ちたような姿勢になっているのかなぁ。急に踊れって言われて少しウザかったけど、流石にここまで落ち込まてると許しちゃうじゃん。
・・・まあ、そこまで怒ってないけど。
「あぁそう言う事ですか。良きり踊れって言われた時はどうしようかと悩みましたが、音に乗れて楽しかったですよ。」
「それはよかった。・・・ああ、そうだ。お前さんダンスは今日からなんだよな?」
「はい。?」
「いや、随分ちゃんと音を聞けているなと思ってな。前は何か音楽系の事はやっていたか?」
音楽系か~。ギターなら持ってるけど、上達するまでやらなくて部屋の奥底に大事にしまってあるけど、それは流石に入らないから無いのかな。
「音楽系は無いですね。スポーツなら結構やっていたんですけど。」
「お!そうか、それならある程度は動けるんだな。」
「そうですね。全国に行くくらいは。」
いや~あの時は滅茶苦茶大変だったな~。サッカーの時はフォワードとしてずっと走り回らなきゃいけなかったから、疲労で毎日ぶっ倒れていたな。
「全国に行ったのか?」
「ええっと、サッカーとバスケで一応。」
「えぇ~!凄いな!それでいつの試合なんだ。」
いつだっけな?でも結構最近だよな。
「えっとサッカーは中2の時だから、2019とかだと思います。バスケは、中1だったような。」
「え、ちょっと調べていい?」
「良いですよ。調べたらいくらでも出てくると思うんで。」
いやーあの時はずっとフルスロットルだったからなー。なんで別の競技で連続で全国行けたんだよ。
・・・調べるのに結構時間がかかりそうだな。・・・あ、そうだ曲は流しっぱなしになってるから、少しだけ踊らせてもらお。
・・・・踊ろうと思ったけど、何も教えてもらってないから何も出来ないや。・・・基礎連やっとこ。やって損は無いだろうし。
★
とある編集者(田中)
「やっべぇ。光樹さん待たせちゃった。」
10時には着く予定だった公園には、1時間30分も過ぎた11時30分に到着となってしまった。だが、この遅刻はしょうがないと言えばしょうがないだろう。
本来なら社用車で来るはずだったが、その車がなくて、しょうがなくタクシーを捕まえたはいい物の残念なことに草食やら肉食やらの、よく分かんないデモのせいで遠回りになって、極めつけに渋滞に引っかかった。
全てありえる事だが、その全てに当てはまるとは思わなかった。
だが、こんなしょうもない事で遅刻してしまったのは俺のせいだ。せっかく、休止中にも関わらず作品を書いて《・・・》くれたのに。
連絡はしているから、帰ってはないだろうけど。・・まあ、帰っていてもしょうがないか。その時は、家に取りにいくけど。
その公園の指定された場所に行くと、どこからか洋楽が聞こえてくるような気がする。
ただ、こんな時間に公園に来ている人は、、、いや、結構デカい公園だから夜中でも来ている人はいるのかな?
指定された方に行くにつれてドンドン音が大きくなってくる。
「光樹さんではないよな。・・・いや、ありえる。」
ペンネームである「光樹」くんは、今まで気まぐれで様々な事をしでかしてきた。
ある時は、筆記中なのにバスケの全国に出て優勝したり。ある時は、カバディの世界選手と真剣勝負したり。
サッカーの全国に行った時は正直焦ったな〜。あのときは映画化が進行していたから、無理にでも連れ戻そうとしたっけ。
まあ、「速攻で終わらす。」って、スッゲェかっこいいこと言って初戦の前半戦で10対0で降参負けにしてたな。全国で降参なんて見たことが無かったからこっちとしても面白かったけど。
そのおかげで、その日の会議には間に合ったけど。
まあ、そんな訳だから何をしでかすか分からないのだ。・・・洋楽。ダンスかな。楽器系は苦手だって言ってたし。
そして、目的地につくとそこには曲にノッていた光樹くん。本名 天上院 光ヶ丘。
・・・ダンスかぁ。知り合いにスタジオ持ってるやついたっけな。
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