第7話 心地よい暗闇へ

「結局、何の話だったんだ……」


『今の君には誰も救えないから』


 そう告げられたが、まったく意味がわからなかった。


 詳しく話を聞こうとしたが、龍ケ崎さんの端末に着信があった。


 別の用事があったらしく、もうお店を出ないと間に合わないということで代金を置いて帰ってしまった。


 俺はとりあえず残っていたコーヒーを飲み干してから、会計を済ませて帰路についた。


「うーん……そっち系の人だったのか?いや、でもなー」


 ちょっと不思議な人かとも思ったがそれにしてやけに真剣な様子だった。


 冗談にしては少し本気過ぎる忠告だったことも気になる。


「あ、連絡先交換しとけばよかった」


 今からでもメッセージを送って時間のある時に返してもらえれば答えがわかるはずだ。


 いや、玲司なら知っていてもおかしくはない。


 元はあいつからのメッセージが発端だ。


 アプリを立ち上げて、龍ケ崎さんの連絡先を教えて欲しいと伝える。


 いつ見るかはわからないが今日中には返事があるだろう。


 わからないことを延々と考えても仕方ない。


 一旦、疑問は棚上げすることにした。


 家に着くと十二時近かった。


「ただいまー」


「おかえりなさい、唯人。あと少しでご飯できるよ~」


 リビングの前を通るといい匂いが漂ってきた。


 お腹が空腹を訴えるように鳴る。


 そういえば急いでいて朝はほとんど食べれなかったことを思い出す。


 返事をして、財布を置きに自分の部屋に行く。


 引き出しにしまって、この後は出かける予定もないので上着は適当に椅子の上に置いておく。


「……ねっむいな…………」


 大きな欠伸が出る。


 ここ数日、ぐっすりと眠ったはずなのに眠気が取れないことが多い。


 今日も例に埋もれず眠たい。


 母さんはあと少しで昼食ができると言っていた。


 呼ばれるだろうから熟睡することもないはず。


 誘惑に抗いきれずにベットに歩み寄り、横なって目を瞑る。


 眠らないように気をつけつつも、そんな意志など関係ないと言わんばかりに睡魔が訪れる。


「……仮眠なら……大丈夫か……?」


 抵抗は意味をなさずに、心地よい暗闇へと意識が落ちていった。

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