どこかに連れて行くことも考えたが、どうしようもなかったので家に来てもらうことにした。一人だから何も問題ない。家に着くまでにできるだけ相手の情報を聞き出そうとした。だが、必要最低限以上答えてくれることはなかった。なんとなくわかった情報だけを頭の中で整理する。

・名前:浅瀬美雪

・年齢:17?

・親はいない

・学校へはいかず、仕事もなし。

年齢は、あやふやに返答され、さらに声も小さかったため多分17歳と言ったのだろうくらいの推測だった。何回も聞き返すのは失礼だから。

そうこうしているうちにやっと家に着いた。今までも通学距離は地獄のような長さだったが、今日はよりによって倍以上に感じられた。特にすることもないので一緒にネットフリックスでも見よう、と誘う。気の利く人ならこう言う時どんな動画を流すのだろうか、と考える。

赤の他人と恋愛映画を見てそう言う気分になりたいと思うド変態でもなければ、バラエティを見て一緒に爆笑するような親密な関係でもない。そんなこと思っていた僕が下した決断は、おすすめ欄の最初の作品を見ることにした。一応彼女にも聞く。

「何が見たい?」

「なんでも」

「適当でいい?」

「うん。」

これから見る映画は、「君の膵臓をたべたい」だ。何度見たか、何度見ても号泣してしまうその作品。確か公開されたのは10年以上前だろう。何年経っても愛されるその作品をおよそ二ヶ月ぶりに見た。

「キミスイ見たことある?」

「映画館で一度だけ」

「映画館? え、いつ?」

「あっ…。少し前に一度だけあったような。」

なぜか動揺している彼女が不思議だった。そんなことより案の定、心を奪われ泣いた。不思議だったのは、彼女も泣いていたことだ。なぜか僕が彼女を泣かせてしまったような罪悪感に包まれていた。

映画も見終わりお腹が鳴ってきたので夕飯を食べることにした。

何食べたいかと聞くと、なんでもいいと返ってきた。

いつも思うのだが、なんでもいいが一番腹立つ。なんでもいいって何?じゃあ雑草でも、泥水でも食べんの?と口に出してしまいそうになる。

冷蔵庫に入っていた余り物で唯一の得意料理「パスタ」を作って一緒に食べた。美味しいともありがとうとも言われなかったが、誰かと夕飯を食べること自体久しぶりだったので少し嬉しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不老不死の君と僕 @mannzigawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ