第3話 魔力のある世界
付けられたとたんに、腕輪から何らかの力が発するのを感じた。
「これは魔力封じの腕輪です、付けている間は魔力を遮断し、魔法を使うことができなくなります。多少のご不自由があるかと思いますが、外に警備のものが立っていますので、困ったことがあれば声をおかけください」
そう言い終わると、騎士は私の返事も聞かずに家の中に押し込んで、バタンとドアを閉めた。
ガチャン。
外から鍵をかける重たい音。古い塔にたった一人、閉じ込められた。
それだけじゃなくて魔力封じの腕輪までするなんて……。
◇◆◇
この世界には魔力というものがある。
前世の記憶がある私からしたら本当に不思議なのだが、この世界の人たちはごく普通に使っているし、もちろんこの世界で生まれ育った私も普通に使える。
大気中だったり地面の中に含まれている魔力は自然に体の中に取り込まれて、人はそれを意図的に使うことができる。
ただし、魔力を使ってできることは人によって違う。
生まれつき持っているスキルが違うからだ。
例えばスキルで火魔法を持っている人は自分の魔力を着火剤として火を付けたり、武器に火をまとわせることができる。
火や水、光などのスキルを持っている人はとても多い。おそらく古代から人々が生きていくのに必要な能力だったからだろう。人によって魔力を溜められる量みたいなのが違うので、同じ火魔法持ちでも威力は様々だ。
身体強化とかも多い。
治癒魔法持ちが少ないのは、歴史的な背景があるみたい。大昔にどこかの国が治癒魔法持ちを、まるで狩るように集めたことがあるんだとか。
空間魔法や通信、鑑定なんかはすごく珍しい。
意外と希少なのが緑化魔法だ。
植物を急速に成長させる能力は人にとって有用なので多くても良さそうだが、ほんの少し成長させるだけでもとても大きな魔力が必要らしい。なので、すごく大きな魔力と緑化魔法を両方合わせ持っている人は本当に少ない。
王太子の浮気相手だが、実はそんな珍しい緑化魔法のスキルを持っている。私や王太子より一歳年下で、来年成人したのちに聖女の称号を得る予定だ。
もしかしたら、私のスキルと比べれば彼女のほうが王妃にふさわしいという計算もあったのかもしれないなあ。
自分の持っているスキルは、特に調べなくても、誰でもなんとなく使い方が分かる。小さい頃から使えそうな感覚だけはあるし、そこから自分なりに上手な使い方を練習していくことで上達する。もちろん貴族の家では過去の研究成果の論文などを使って教師に習ったりもする。
どんなスキルを持っているのか、というのは貴族にとっては重要な要素のひとつ。だから自己申告ではなく鑑定魔法で調べたりする。
どのくらい正確に鑑定できるかは、その鑑定魔法士の能力にもよるみたい。
鑑定魔法使いは珍しいので庶民は鑑定してもらうようなことはあまりないけれど、王侯貴族にとってはそれなりに近しい存在だ。
私も「王太子の婚約者にふさわしいかどうか」という理由で、十一歳の時に父親に鑑定された。
私のスキルは『時間停止』。
それはとても珍しいスキルだった。
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