第7話 休日の秘密

 青い空に浮かぶ雲が目立つようになった今日この頃。

 外に出るよう促す太陽が目立つ5月22日。

 日曜の昼間、千代は何をしていたか。

「………暇だな~」

 ベッドの上で寝転がっているだけだった。

 本来ならば休日は桐花と遊ぶのが定跡だがその本人が家族と出かけているからだ。

 やらなければいけない課題はない。

 クリアすべきゲームもない。

 今日は千代の家族もいない。

 故に千代はただ呆けてるだけの時間を過ごしていた。

 千代はスマホを見ると時刻はいつの間にか正午を過ぎていた。

「…朝飯兼昼飯食べるか~」

 千代は1階のリビングへと足を運んだ。

 少し気だるそうにしながらも冷蔵庫の中を覗いた。

 するとそこには衝撃の光景があった。

「何で何も入ってないんだよ!」

 そう、空だったのだ。

 いつもならば冷凍食品や昨日の夜ご飯のおかずが残っていてもいいはずだ。

 その時千代は思い出した。

「…多分あいつが原因か。」

 千代は静かに冷蔵庫を閉め、自室に戻った。

 さてどうしたものか。千代が頭を悩ませているとスマホが震えた。

 画面を見ると麗華からLanoが来ていた。

(※Lanoとは千代達の世界のL◯NE的なものである)

 内容は、「神社のお吸い物が余ってしまったので良ければ食べに来ませんか?」と。

(…食べるものもなかったし行くか)

 千代は、「それなら行かせて貰おうかな」

と返信し服を着替えた。


 自転車で神社に向かうとそこには沢山の屋台が出店していた。

 昼前と言うのにまるで夏祭りの屋台を見ているかのように賑わっていた。

 その店の一角で祈祷をしている巫女さんこと麗華がいた。

 千代は近くなくまた遠くもない絶妙な距離で終わるのを待っていた。

 数分後、祈祷が終わると麗華が千代に気付いたのか柱の影に隠れてしまった。

(…?そんなに恥ずかしかったのか?)

 千代が麗華に近付くと麗華はその場で座っていた。

「あの…俺、来ないほうがよかったか?」

「い…いえ!そんなことありません!」

 その言葉とは正反対に麗華の胸が見せつけんとばかりに千代の視界に入れてくる。

(落ち着け!理性を保て、俺!)

 千代が動揺しているのを横目に麗華が質問をした。

「ど…どうですか?私の巫女服?そ、その似合ってますか?」

 千代の心に鈍い音が響いた。

(可愛すぎるだろ!近くで見ると余計可愛く見えてしまう!)

「そうだな…すごく似合ってると思うぞ!」

(何言ってんだ俺ー!言いたかったことは可愛いだろ!)

 麗華は千代の言葉に顔を赤らめていた。

「あ、ありがとうございます!とっても嬉しいです!」

 すると今度は千代の右腕に麗華の腕を抱きつかせた。それもなんの前触れもなく。

「ど、どうしたんだよ麗華」

 流石に千代も動揺を隠せなくなり言葉があやふやになっていた。

「いえ、最近私以外の女の子とよく話してましたからね。これは私なりのお仕置きです」

 まるで公衆の面前に見せつけるかのように麗華は千代の腕を強く抱きしめた。

 巫女服姿の彼女からの抱きしめ。

 当然恋愛経験のない千代が耐えられるはずもなくその場に立ち尽くした。

 その状況を影からこっそりと見ていた者がいた。

 麗華はその者の気配に気付くとさらに強く抱きしめた。

 そして立ち尽くす千代に一言。

「千代君、それじゃあ屋台巡りしましょうか!」

 麗華は立ち尽くす千代を無理矢理引っ張り屋台へと足を弾ませた。



「許さないわ!私の天動君にボディータッチするなんて!」

 影からその光景を見ていた者は怒りをあらわにしていた。

「こうなったら私も…あの女に負けない位の格好を!待ってなさい!斎藤麗華!」








 


 

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