特別編 エイプリルフールの秘密
4月1日、エイプリルフールの日。
私は未だにあの日を覚えています。
あの日の出来事、それは今でも思い出すととても恥ずかしい思い出ですが振り返るとこれが始まりだったのだと思えます。
あれは私がまだ中学2年生の頃のことです。
この日私は唐突に遠出をしたい気分になってしまいました。
勿論理由はありません。
ですが麗らかな春の陽気と桜まじが私の心を躍動させたのです。
私はあの頃から直感で動くことが多く、好きなものの移り変わりが早いと言われることが多かったです。
私はすぐさま自転車に乗り込み、愛用の鞄を背負い桜とともに走り出しました。
あの時の景色は何物にも代えがたいほど美しかったのを今でも覚えてます。
自転車を走らせて数時間後、私の小腹が食を求めるようになってしまいました。
私はたまたま近くにあった公園に自転車を置き、そこで昼食をとることにしました。
腕時計を覗くと、時刻は11時半を刺しておりちょうど良かったと言えば聞こえがいいのでしょうか。
近くのベンチに座り持ってきていたお弁当を袋からとりだしました。
するとどうでしょう。
お弁当の中身はすべて混ざってしまっていました。
原因は何となくですが察することは出来ました。
背負っていた鞄に入れていたため、傾いてしまったのでしょう。
仕方なしに食べましたが卵焼きにバーベキューソースは合わないものですね…。
しばらくのどかな雰囲気に浸りながら桜を眺めていると不意に眠気が襲ってきました。
やはり春の陽気とは侮れないものです。
なので私は休憩がてらに寝ました。
するとどうしたことでしょう。
目が覚めると辺りは暗闇で包まれているではありませんか。
周囲に人はおらず街灯のみが静かな公園を照らしていました。
私は大急ぎで荷物をまとめ、置いていた自転車へと向かいました。
しかしそこには変な輩がたむろしていました。
ここからこの足1つで家へ帰宅するのは途方もないこと。
私が諦めていた時、不意に背後から声がしました。
「もしかして君、あの不良達にどいてほしいの?」
そこには私とほぼ同じ位の身長の男子がいました。
「…え、ええ。ですが心配はいりませんよ。別に1人で帰れますので」
「本当か~?この辺もっとああいうの増えるぞ」
そう言われましても残りは徒歩しかないわけでして。
果たしてどうすべきでしょうか。
悩んでいる私に彼は言いました。
「お前、自転車でしか帰れないんだろ。だったら俺の自転車貸してやるよ」
その言葉を聞いたとき私は思わず
「どこまでお人好しなのか」と言いそうになってしまいました。
ですが彼も善意で言ったことならば甘んじて受け入れるのもやぶさかではないでしょう。
「…なら明日またここに来てください。お礼をしますので」
「ああ、分かったよ」
そう言うと彼は「ちょっと待ってろ」と言いすぐさま自分の自転車をとりに戻りました。
「おう持ってきたぜ」
たった数分で彼は戻ってきました。
果たしてどこに自転車を置いていたのでしょうか。
ともかく私は自転車に乗り込み彼にお礼をしました。
「ありがとうございました。見知らぬ私を助けて頂いて」
「別に構わねえよ。誰だって困ってる人を助けるのが人ってもんだろ」
その言葉に私の胸は貫かれました。
そう、その瞬間私は彼のことが好きになってしまったのです。
「あ、そう言えば。お前名前は」
自己紹介がまだでしたね。
「私は斎藤麗華です。貴方は?」
「俺は天動千代。それじゃあな」
そう言い天動さんは宵闇へと消えてしまいました。
その時の私の胸はとても最高潮でした。
次の日、もう一度公園に来ましたが結局天動さんには会えませんでした。
ですがこの思いは一生忘れられない思いとなりました。
またいつか出会えるだろう。
その時には思いを伝えよう。
「どうしたんだ麗華」
帰り道、私の顔をまじまじと見つめながら伺う彼氏が隣にいました。
「いえ何でもありませんよ~」
上機嫌に答える私に彼は「ふ~ん」と反応しました。
せっかくですのであの時のお返しでもしましょうか。
「ただちょっと初恋の相手のことを思っていただけですよ」
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