7.再開

寺井社長に発破を掛けられた。

行方不明の相田さん探しを再開しないといけない。


相田さんの奥さんへ調査の進捗状況と遅延について、お詫びに伺う事にした。

そう思っていた時、景子が云った。

気が付くと、乙葉ちゃんと乙葉ちゃんママも居所が分からなくなっていた。

景子は、乙葉ちゃんママと、連絡が取れなくなっていた。


慌てて、相田のお兄さんを訪ねると、相田の兄夫婦は不在だった。

相田さんの奥さんも居なかった。


相田のご両親の話では、乙葉ちゃんママの母親が亡くなったということだった。

相田の兄夫婦より一足早く乙葉ちゃんママは、乙葉ちゃんを連れて、北海道の実家へ帰ったそうだ。


今、相田の兄夫婦が葬儀に参列するため、北海道の乙葉ちゃんママの実家へ行っているそうだ。


乙葉ちゃんママの行方不明の相田さんは、北海道の乙葉ちゃんママの実家でいたそうた。


何時から、連絡が取れるようになっていたのかは、分からないが、二人は、連絡を取り合っていたようだ。


ああ、それは良かったですね。

と云ってお暇しようとしたが、相田のお父さんに、暇潰しの話し相手にされてしまった。


世間話の合間に「それはそうと」と云って、アックスの夜間責任者が起こした事件が話題になった。

相田さんと一緒に仕事をしていた夜間責任者が犯人だった事で、お父さんは、興奮していた。

「尾崎さんも、悪い奴に引っ掛かったんやなあ」

相田のお父さんは、尾崎さんの事を知っているような口振りだった。

「尾崎さんを知っているんですか?」

弘は、半信半疑、尋ねた。


相田のお父さんが喋り始めた。

「えぇ?あぁ、知っとる。一緒に昼飯、食べた事がある。儂の友達にのお、野村ちゅうんが、おっての…」


相田さんのお父さんに、野村さんという、古くからの友達がいた。


丸肥町で農家をしていいたが、今から十年程前に亡くなった。

野村さんのお父さんが、まだ健在で、農業を営んでいた。

身体を悪くして、農家を止めた。

奥さんが亡くなって、娘さんが一緒に住もうと云ったが、移らなかった。

農地は処分したが、地元を離れなかった。

丸肥町は、住宅開発が進んでいて、何軒かの古い百姓家の周りは、真新しい住宅街になっている。

今、一人暮らしだ。


相田のお父さんは、野村さんを気に止めて、よく様子を見に行っている。


一年前。

ある日の昼過ぎ、相田のお父さんが野村さんのお宅を訪れると、若い女性が来ていた。

娘さんではない。


会釈をすると、「石木バイパス調剤薬局の尾崎です」と女性が名乗った。

片丘クリックの調剤薬局だ。

片丘クリックは、以前、片山医院といっていた。


今でこそ、丸肥町に何軒もの病院や医院があるのだが、以前は、隣町の片丘医院くらいしかなかった。

だから、丸肥町の古くからの住民には、今でも片丘クリックを掛かり付けにしている人も多い。


「野村さん、これ、忘れてたんで」

尾崎さんは、野村さんが薬局に忘れていた雑嚢ケースを届けに来ていた。

ケースには、通帳、印鑑、保険証が入っていて、貴重品入れのようだった。


尾崎さんは、丁度、昼休みで、丸肥町の惣菜店に寄るついでに、野村さんへ届けに来たそうだ。

アックス丸肥店の北にある交番で事情を説明して、自宅を調べて貰った。


それから何度か野村さんの家で尾崎さんと一緒になったそうだ。


尾崎さんは、野村さんの話し相手になっていたようだ。


惣菜店で買って来たおかずで、遅い昼食を一緒に採っていた。


そのうち、近所の高齢者が、三人、四人と、野村さんの家に集まるようになったそうだ。


聞けば、近所の高齢者で、惣菜店で働いている人が、尾崎さんを見かけて話し掛けたそうだ。

それで、近所の野村さんの事を話しをすると「それでは、わたしも」となったそうだ。


それで、相田さんのお父さんも、一緒に遅い昼食を共にする事が、何度かあったようだ。


弘の謎は、まだ解けていない。

尾崎さんが、昼休み、何処へ出掛けていたのかは、分かった。

しかし、尾崎さんは、何故、野村さん宅へ訪問している事を隠していたのだろうか。

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