二章 紡績工場

シゲノは、水飛沫を上げて、川を走って横切った。

多田川の河原から川を渡り、向こう岸の河原まで走る。

土手へ駆け登ると、懐から草履を取り出して履く。

川に沿って土手道を走った。


橋を渡らずに、川を横切ると、郵便局が近い。

毎月、シゲノは、給金を受け取ると、郵便局から故郷へ小遣を残して、送金している。


郵便局からは、ちょっと遠回りになるのだが、橋を渡って工場まで帰る。

シゲノは、兵庫にある、軍需工場へ勤めている。

従姉のキクさんに、誘われたのだ。


シゲノは、尋常小学校を修業して六年、父親と一緒に畑仕事をしていた。

妹のサキエも四年前から一緒に畑仕事を手伝っていたが、父親が亡くなった。

お継母さんの静と、サキエに田畑を任せて、紡績工場へ勤めに出ることにした。


一度は、都会で働いてみたいと思っていた。

工場のある場所は、シゲノの憧れていたような、都会ではありませんでした。

それでも、故郷を離れて働いている。

作業にも慣れて、友達もできた。

友達のウメさんは、富山から工場へ来ていました。


休みの日に、ウメさんの親戚家へ、二人で遊びに行ったことがあります。

神戸に親戚の家があって、遊びに行くことになったのです。

街も洋風で、田舎の家とは違っていて、とても刺激的でした。

そんな事をとても楽しく、思っていたのでした。

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