第32話 女でないなら女にしてしまえ
「お前、男だったのか!お、俺をずっと騙していたのか!オッ、オエッ。」
ニコラは今までリズと過ごした甘い記憶を思い出してしまい、吐き出してしまう。それもそうだ、あれだけ街中でイチャイチャして、キスまでした人間が男と分かったのだから。
「よくも、よくも、この私をコケにしてくれたな!貴様のせいで私は貴族の恥さらしだ!おい、離せ!こいつを今すぐ殺してやる!」
ルミニは貴族としての名誉を著しく傷つけられ、完全に頭に血が上っていた。近くにいた兵士に取り押さえられていなければすぐにでもリズを殺してしまいそうだ。
「静まれ!何度言わせれば気が済む!お前たちは私が質問した時にだけ、話せばよい。リズとやら貴様一体どういうつもりだ。男の分際で女の振りをし、貴族をたぶらかすなど、大罪だ!お前のせいでこの国の貴族には不名誉な噂が広がっているのだぞ。」
「はっ、何が悪い。別に俺はこいつらに女だなんて一度も言ったことはないんだよ。こいつらが男が好きなだけだろうが、勝手に人のせいにするんじゃねーよ。」
リズは打つ手がないと、ついには開き直り、国王に向かって無礼な態度をとり始める。
「貴様、私に向かってその様な口を効くとは覚悟はできているのだろうな!」
国王はリズの態度にキレそうになっているが、リズはそれどころではない。そもそも、どうして自分の性別が女でないなんて噂が立ち上ったのかが分からないのだ。
「くそっ、なんだってバレたんだ。俺のことを知っている人間なんて、えっ?」
リズはその原因を考えていると、偶然、見つけてしまう。それは、ここには本来、いないはずのチアの姿だ。チアはリズと目があったことに気が付き、ジャーニの後ろに隠れるが、すでに遅かった。
「お前か!お前が全部バラしやがったんだな!ぶっ殺してやる、よくも俺のことを話しやがって!」
突然、暴れ出したリズに周囲は騒然となる。そんなリズが向いている方向が二コラもルミニも気になり、そちらを見るが原因が分からない。
何か原因があるはずだと、二人は必死に目を凝らそうとするが、そこに国王の怒鳴り声が響き渡る。
「控えよ!もうよい、再三の警告も無視し、暴れまわっているなど、論外だ。衛兵、そいつを今すぐ連れていけ!そこまで女になりたいのであればそうしてやろうではないか。リズよ、貴様は今日から名実共に女として生きていくがよい。」
そんな国王の意味が分からない発言にリズは先ほどまでは暴れていたが、流石に国王の話に耳を貸す。
「な、何を言っているんだ、俺は男だぞ!女になんかなれるわけがないだろうが!」
「簡単なことよ、切り落とせばよいのだ!それで貴様も今日から女だ!連れていけ!」
そんな国王の言葉をリズは理解してしまう。そんなことをされるなんてまっぴらだ。
「やめろ!やめてくれ、そんなのあんまりだ。おい、離せ!離せ!あ゛~~~~っ、お前が悪いんだ、お前さえばらさなかったら!殺してやる、殺してやる!」
こうして、リズは兵士に連れていかれてしまい、女となってしまうのだった。しかしながら、あまりの痛みにリズが女としての生を歩んだのはほんの一瞬だけだった。
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