第31話 逃亡
流石に、婚約者が大勢の目の前で服を脱がされるという事態に二コラもルミニもリズを守るために兵士たちを止めようとしていた。
しかしながら、普段から訓練を積んでいる彼らにかなうわけでもなく、リズの服は大勢の前で脱がされてしまう。
周囲でこの騒ぎを見ている貴族たちはてっきり、良いものでも見ることが出来ると思い込んでいたが、残念ながらそれはなかった。
「なっ!リズ、これは一体どういうことなんだ。お前は、いや、いったい貴様は誰なんだ!」
「お前、これはいったいどういうつもりなんだ!」
ニコラとルミニの二人はあまりの出来事に、大きなショックを受けてしまう。もちろん、この騒ぎを見届けていた周囲の貴族達もそうだ。この場でショックを受けていないものは国王、チア、ジャーニ、バリットの四人だけだろう。
「やはり、そう言うことか。」
国王は分かっていたとでもいうように目の前の現状を見つめる。ついに、リズの秘密がばれてしまうことになったのだ。
「くっ、くそっ!」
リズは秘密がばれてしまった以上、このままではどういった結果になるかなど、明らかだ。リズは間髪入れず、逃げ出そうとするが、ここは謁見の間なのだ。逃げ出す前に兵士たちに捕らえられてしまう。
そんな中、あまりの衝撃から静まり返っていた貴族たちはリズが男であったという事実に騒ぎ始める。
「ま、まさかあのような人間が男だったとは。」
「待ってください、ということは例の噂は本当だったということよね。」
「なんと、まさか貴族家に生まれた存在であるはずなのにそのような趣味を持ち合わせているとは、おい、あの二人の名前は何と言ったか、家のものに奴らだけには関わるなと念押ししろ!」
「お母さま、あの人たち、何がいけないんですか?三人はお友達ではないのですか?」
「しっ、あなたは何も気にしなくていいのよ。あれは人間じゃないのですから、気にしてはいけません。まったく、この子まで変な影響を受けてしまったらどうするつもりなんでしょうか。」
口々に騒いでいるが、みな、彼らに対して否定的な意見ばかりだった。もちろん、ニコラとルミニの二人など、訳が分からないと、誰よりも騒いでいる。なぜなら、彼らが今まで愛していたリズというのは男だと分かってしまったからだ。
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