第29話 戸籍調査の結果
「おっ、どうやら報告が来たようだな。よい、ここにいる全員に聞こえるように話せ。」
国王はまずは初めに彼だけに報告を行おうとしていた人間を制止し、全体に開示するように伝える。報告係は一瞬だけ、ためらう姿を見せるも、国王の命令ということもあり、すぐさま報告を始める。
「それでは、報告をさせていただきます。今回、国王陛下の命令で調査したことに関してですが、戸籍に関してです。
本来は限られたものしか閲覧する権限はなく、貴族であっても閲覧することが許されない重要な書類ですが、今回は国王陛下の命ということもあり、確認をさせていただきました。
調査した、報告をお伝えすると二コラ殿が本来、婚約を結んでいた家。この場合はリズの家となります。どうやら、今回の調査で明らかになったのですが、二コラ殿は本来の婚約者とではなく、その姉と婚約を再びしたようですね。」
「何、そこにいるリズが本来の婚約者ではないのか。」
「はい、違います。調べたところ、彼女たちの父親が生前にチアと呼ばれる妹と二コラ殿の婚約を行っていたようです。」
「そうか、よく分かった。報告を続けてくれ。」
そう話す国王は今にも射殺しそうな目で二コラとリズを睨みつけている。なぜなら、先ほど国王は非はルミニにあると全体に言い渡したばかりだからだ。二人の証言をもとにして判断を下したはずが、報告係の報告で二コラたちが嘘をついていたことが発覚した。
そのため、彼らのせいで自分は間違った判断をし、それを全貴族たちの前で堂々と伝えてしまったのだ。これは国王として大きな屈辱を受けたということになる。そのため、彼はカンカンに怒っていたのだ。
「かしこまりました。調査を進めていくうちに不可思議なことに遭遇いたしました。それはリズの家の戸籍に関してですが、長男が1人、長女が1人となっていることです。
生まれた順は長男、長女の順でした。二コラ殿が新たに婚約したのは姉と事前に伺っていましたが、これでは話が食い違っているのです。
なぜなら、先ほども申しましたように、私の調査では妹との婚約を破棄した後にその姉と婚約を行っているはずなのです。
陛下、私が調査できたのはここまでです。真相を究明できずに誠に申し訳ございません。私の足りない頭ではここまでが精一杯です。何故、事実に矛盾があるのか、本当に理解できません。」
報告係が頭を悩ませているのも無理はない。対外的にはリズは女なのだから。戸籍など、連絡係が言ったように誰でも見れるものではない。そうした理由から、誰一人としてリズの本当の性別を知るものはいなかったのだ。
そのため、彼が調査した内容には間違いが含まれてしまったのだ。そんな奇妙な矛盾に国王は少しだけ悩むそぶりを見せるがすぐさまリズを睨め付け始める。
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