第28話 まさか、そんなはずはないよな?

「言ったはずだ、お前たちの発言が許されるのは私が訪ねた時のみだと。これ以上騒ぎ立てるのであれば、無理やりにでも静かにさせるぞ。」


二コラやルミニが再度騒ぎ出し、またしても国王の一喝が響き渡る。流石に二回目はマズいと、二人も一瞬にして口を閉じる。


「よろしい、二人の人間がそう言っているのであればルミニが誤解したということが一番可能性としては大きいだろうな。まぁ、このことに関しては互いの誤解があったということで全員、不問とする。今後、この件に関して意見を言うということはどういうことかを考えてから意見を発言するがよい。」


そう言われてしまえば、今回はルミニ誤解が生んだ責任があるということになってしまう。もちろん、ルミニはそんなことはないと言いたかったが、国王にあそこまで言われてしまえばこれ以上の意見は国王の意見を疑うということになってしまう。


そんなことなど、貴族家の当主ですらない彼にできるわけがない。怒りで爆発してしまいそうになるが、必死に拳を握り込み、彼は耐えるのであった。


そんな彼とは反対に、自分たちの意見を国王に認められた二コラとリズの表情は明るい。なぜなら、国王が彼らの言い分を認めたのだ。これほど強い後押しはない。


「さて、もちろん、お前たちがくだらないことで喧嘩をしていたことは問題ではあるが、最大の問題はお前たちが男色であるという噂だ。まさかとは思うが、噂は噂という認識で良いのか?」


そんな国王の質問に二コラとルミニはすぐさま答える。なぜなら、二人にとってこれだけは即答することが出来る問いだったからだ。


「もちろんでございます、私は男色などではありません。普通に女が好きです。」


「私も同様です。そのような趣味は持ち合わせていません。」


そんな二人の言葉に国王は少しだけ、顔をしかめる。


「そうか、それならばいいのであるが。一応聞いておくが、お前たちが愛していると騒いでいたのはそこにいるリズという人間なのだな。」


「「はい、そうです。」」


国王の問いに対して二人は嬉しそうに、息ぴったりに答える。


「そうか、まぁ問題はないと思うがここまで大きな騒ぎになってしまったのだからな。念のため確認だけ、させて欲しい。なに、簡単なことだ。既に調べさせているから何も気にすることはない。あとは調べた結果を待つだけだ。」


「それなら問題ありません、私が愛しているのはこちらのリズだけです。」


「私も問題ありません、最も、先日は確かにこの女を奪い合いはしましたが、今は全くその気はありませんが。」


国王の問いに、二コラ、ルミニの順で返事をする。二人の返事の内容は異なっているものの、共通しているのは、どちらも至って冷静であったということだ。


しかし、そんな二人の隣でリズの顔色だけが悪かったのだった。

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