第27話 切り捨て

「ルミニはこう言っているが、どうなのだ。真実のみを答えよ、リズ!この場所で嘘をつくようなことは許さない。」


国王にそう問われるが、リズは返事をすることが出来ない。真実は、ルミニを騙して彼に乗り換えようとしていたからだ。


しかし、ここまで事態が大きくなってしまった以上、本当のことを言ってしまえば間違いなく大罪人となってしまうだろう。リズは必死に頭を回転させて、起死回生の一手をひらめく。


「なんだ、答えられないというのか?ということは、ルミニの言っていることは事実であり、嘘をついているのはお前ということになるぞ。」


「お待ちください、陛下。そうではありません、今回のことは全員の誤解が招いた不幸な事故なのです。確かに、私はルミニ様に二コラ様の婚約者ではないと言いました。でも、それは親の決めた正式な婚約者ではないということで私たちは愛し合っているのです!」


リズが下した決断とは、ルミニを切る捨てることだった。本来であれば爵位の高い伯爵に将来が約束されているルミニをとるはずだったが、王都で今回のような騒ぎになってしまったのだ。


そうなってしまえばこのような場所で生きていくのはなかなか難しい。しかしながら、ニコラであれば別だ。彼なら、田舎の貴族ということもあり、王都に等今後一生来ないことも考えられるだろう。


そうであるのならばルミニに目をつけられても問題はない。彼は王都に、二コラは田舎にいるのだから。ルミニのことは惜しいと思うリズだが、今後の暮らしのことを考えると、ここは二コラに取り入っておいた方がいいのだ。


そんな彼女の思惑により、結果的にはめられたことになったルミニであるが、彼からしてみればたまったものではない。


「ま、待て!貴様何を言っている!言っていたではないか、そいつに無理やり婚約者にさせられたから私に助けて欲しいと。」


「そんなことは一言も言っておりません、私は二コラ様だけを愛しています。自分が助かりたいからと、嘘をつかないでください。」


「ふっ、どうやら嘘を言っている卑怯者がどいつか分かったようだな。陛下、今の話を聞きましたでしょうか。嘘を言っているのはこのルミニ殿です。私達は彼の浅ましい思惑で被害をこうむったただの被害者です!」


リズの発言により、謁見の間の流れは一気に二コラが優勢となる。周囲で彼らの話を伺っている者たちでさえも徐々に、ルミニのことを冷たい目で見下し始める。


「ち、違う!陛下、違うのです!私は、本当に彼女からそう言われたからこそ、今回のことを行ったのです、どうか信じてください。」


しかし、そんなルミニの発言も周囲の貴族達からしてみればただの言い訳にしか感じられないのであった。

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