第25話 謁見
「国王陛下のおな~り~。」
国王が貴族たちに招集をかけた翌日、国王の命令通り、貴族たちは謁見の間に集まっていた。その中央では、ルミニと二コラ、リズの三人が兵士に脇を囲まれ、待機していた。
そんな中、ようやく国王が謁見の間へとやってくる。国王の入場と共に、貴族たちは一斉に頭を下げ、国王の発言を待っている。
「頭をあげよ。」
その言葉と共に、貴族たちは一斉に下げていた頭をあげる。それを見届けた国王は本日、貴族達を招集させることとなった本題を話し始める。
「さて、本日みなを招集した理由は既に知っているものもいるかもしれないが、そこにいる三人の件に関してだ。
聞いたところによると、街ではこの国の貴族には男色が多いなどという不名誉な話が噂されているみたいだな。すでに隣国にもこの話は広まっており、事態は急を要する。早急に問題を解決しなければならないと今回は皆を招集した次第だ。
さて、まずはおぬしたちに問おう。なぜ、貴族でありながら、あのような往来で色恋沙汰の話などで喧嘩をしていたのだ。それさえなければ何も問題が無かったものを。」
国王は厳しい目を向け、目の前にひざまずいている三人を睨みつけている。このまま何も話さなければ自分たちはマズいことになると二コラとルミニの二人はすぐさま弁解を始める。
「国王陛下、誤解なのです。こちらのルミニ様がいやしくも私の婚約者を奪おうとして、あのような場所に呼び寄せたのが原因なのです。この男が人の婚約者を略奪するなどという浅ましいことをしなければそのような場で言い争うことなどありませんでした。」
「お待ちください!確かに、あの場所を選んだのは私ではありますが、こいつの言っていることには嘘があります。そもそも、彼女はこいつの婚約者でも何でもないのです。
貴族でありながら、一方的にそのようなことを言い張るなど、貴族の風上にも置けません。私はそのような輩を律するために今回の行動を起こしたのです。」
二コラとルミニは互いに今回の騒ぎの原因は相手のせいだと騒ぎ立てている。あまりにも幼稚な彼らの責任の擦り付け合いに、国王はイライラし始めているが、二人は自分の保身のために頭を必死に動かしているため、そんな国王に気づいていない。
もちろん、この謁見の間でこの茶番を見ているチアたちも同様だ。彼女たちもどうしてこんな奴と婚約をしていたのかと、過去の自分を恥じるとともに、滑稽な二人を冷めた目で見ている。
そんな風に騒いでいる二人の隣では当事者であるにも関わらず、自分は関係ないとでもいうようにリズは黙り込んでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます