第23話 真相は闇の中

「チア、ジャーニ、少しいいだろうか?」


現在、チアとジャーニの二人はバリットに呼び出されていたのだ。この三人がそろうということは例の計画に関してだろうが、二人が噂を流し始めてからまだほとんど時間はたっていない。そんな短時間で何か進展があったのだろうかと二人は疑問に思っている。


「お父様、どうかしましたか?まだ噂を流して数日ですよ。お父様が私達を集めるということは例の計画に関してだと思いますが、何か進展があったのですか?」


「うん、進展があったと言えば、進展があったのだけれどね。私達が予想していなかった方向に話が進んでしまってね。」


「というと?」


すると、バリットは現在、王城内で持ちきりの驚愕の事実を話し始める。


「それがね、王都の街ではこの国の貴族が男色という噂が急激に広がっているんだ。そして、その噂は商人たちから他国にも広がっており、既に周辺国家からはこの国の貴族は男色家が多いなんて言う噂も広がっている。」


「そ、それは何ともインパクトの強い噂ですね。ぷぷっ、それにしても男色家が多いなんて、どうしてそんなことになってしまっているですか。」


ジャーニは必死に笑いをこらえているが、バリットはそれどころではない。


「ジャーニ、笑い事ではないよ。こんな不名誉な話はこの国の貴族の沽券にかかわる。城の貴族達の間では既にこうなってしまった原因を排除しようとする動きが活発になってきている。


そして、ここからが問題だ。今回の騒動の原因なんだが、どうやら、ルミニ殿と二コラ殿の騒ぎが原因だそうだ。


その二人が往来で一人の人間を奪い合っている所を住人たちが見ていたらしいんだが、どこからか、その二人が奪い合っていた人間というのが男であるという話が広まっていったらしいんだよ。


本来であればその噂の元を探るのが正解なんだが、既に何人もの住人たちに広まってしまっていてね。その人間を特定するのは不可能らしい。」


そんなバリットの話を聞いて、チアとジャーニの二人は冷や汗を流し始めてしまう。


「お父様、それってもしかして。」


「あぁ、その通りだ。完全に噂の元とは私たちのことだろうな。これがばれたら大問題だ、二人とも、この秘密は自分の墓まで持って行ってもらうよ。」


バリットはいつものようなふざけた様子ではなく、今は真剣に彼女たちの反応を伺っている。


「えぇ、もちろんよ、お父様。こんな話、絶対に誰にも話さないわ。」


「私も、誓います。絶対に秘密は洩らしませんし、この話は私が死んでも話しません。」


こうして、噂の元となった人間の存在は闇に葬られ、二度と人前に出ることはなくなったのであった。

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