第22話 貴族はみんな男色
王都の街にて。
「ねぇ、聞いた?この間ね、なんと二人のお貴族様が1人の女性を奪い合っていたのよ。ロマンスよね。」
「へぇ~、そんなこともあるんだな。まさかお貴族様がそんなことをやるなんて。それで、どこのお貴族様だったんだ?」
「確かね、男爵家の二コラ様という方と、伯爵家のルミニ様という二人がリズっていう女を奪い合っていたらしいわよ。誰が教えてくれたか分からないけど、いつの間にか、お貴族様の名前が分かっていたのよね。」
住人の二人がルミニと二コラの二人がリズを奪い合っている噂に関して語っていたがその噂は既に古いものだ。
「あら、あなた達知らないの?その噂は古いものよ。例のお貴族様の奪い合いの話はロマンスなんていいものではないわよ。」
「えっ?そうなの?ロマンスじゃないのなら、いったい何だっていうの?」
三人目の住人が先に話していた二人に加わり、彼らの誤解を訂正する。
「どうやらね、二人が奪い合っていたリズっていうのは男らしいの。だから、あの奪い合いはあなた達が思っているほど、良いものじゃないのよ。」
「うそ、がっかりだわ。そんな汚いものをどうして私たちになんか見せようと思ったのかしら。まったく、そんな人が伯爵ってこの国は大丈夫なのかしら?」
「そう言えば、その二コラ様が住んでいる領地からやってきたっていう商人にいつからか聞いたことがあったような気がしたな。リズは男なんだって言い張っている男勝りの女がいるって。その商人は、嫉妬に駆られて嘘を言っているだけだって笑っていたけど。」
「火の無いところに煙は立たないっていうでしょ。もしかしたら、そのリズっていう人がどうにかして自分が男っていう噂をもみ消そうとしていたからその時は誰も信じなかったんじゃないの?」
「そうかもしれないな。ということは、本当にお貴族様が奪い合っていた人間は男だったのか。お貴族様ってみんな男色なのかな?」
こうして、王都の街ではリズという人間が実は男で、彼を奪い合っていたルミニと二コラは男色という噂が急激に広がっていった。
噂は住人達から商人に、商人たちから王都以外の街の人間に。そんな噂が王都の貴族達の耳に入るまでに時間はかからなかった。もちろん、二コラやリズ、チアが住んでいた村にもすぐさまその噂は広がることとなる。
彼らと関係のない貴族達がかわいそうな点が一点あるとすれば、チアたちが想定していた噂に少しだけ、尾ひれがついてしまった事だろうか。貴族はみんな男色という噂が。
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