第21話 広まるうわさ

彼らは王都の街の住人達、最近ではイベントというイベントが何もなく、みんな娯楽に飢えていたのだ。何か面白いことなどないかと考えている彼らの前でそれは起こった。


そう、ルミニと二コラによるリズの奪い合いである。彼らも他の住人達と同様に、そんな二人を微笑まし気に見ていた。何人かは顔がにやけてしまっていたものもいたくらいだ。


時はそれから数日たった現在でも、そのことに関しての噂がとどまることはない。最近では娯楽に飢えていたこともあり、みんなその話題に持ちきりなのだ。


「やっぱり、私は拝見したことがあるルミニ様がそのリズっていう人と結ばれて欲しいわよね。私も、若い頃はああいう時期があったからお二人がリズっていう人を奪い合っている時はなんだか温かい目で見ちゃったのよね。あぁ、自分にもこんな時期があったんだなって。何だか、こっちも恥ずかしくなっちゃったわよ。」


「私は、二コラ様っていう方の方よ。だって、ルミニ様は王道なんだもん。王道なんて邪道よ。」


そんな話を住人たちが行っている所に、フードで顔を隠した女性と思えるような人間が突然話しかけてくる。


「私は、どちらも結ばれないほうが良いと思いますよ。」


突然、そんなことを話しかけられ、住人たちは戸惑ってしまう。それもそうだ、2人が1人の女性を奪い合っているということで通常であれば片方が失敗し、片方が成功するというのが常識なのだ。もはやそれ以外の答えなど、あってないようなものである。


「えっと、あんたは何を根拠にそんなことを言っているんだ?片方と結婚をするというのであれば分かるけど、両方が結ばれないほうが良いなんて。」


「あれ?ご存じなかったですか?実は、私もひとから聞いた話なんですが、二人が奪い合っていたリズっていう人なんですけど、女性じゃないんですよ。」


そんな彼女の言葉に噂をしていた住人は固まってしまう。彼女は固まってはいるものの、そんなことがあるはずがないと、心の中ではわずかな希望を抱いていた。しかし、そんな希望は次の発言で打ち砕かれてしまう。


「実はリズっていう人は男なんですよ。知らない人もいるかもしれませんがリズのことを取り合っていた二人は男色で有名なんですよ。


ですので、皆さんには一人の女性を二人の男性が奪い合う三角関係に見えていたかもしれませんが、実際には一人の男を二人の男が奪い合っている汚い三角関係だったんですよ。」


「な、何かの冗談なんじゃないのかい?流石にそんなことは。」


「いえ、いえ、これもお城で働いているメイドの知り合いから聞いた話なので間違いないですよ。どうやら、お貴族様は普段から求められることが私達よりもレベルが高いみたいでストレスが溜まっているようですね。


そう言う人は、たいていが男色に目覚めてしまうらしいです。ですから、結構多いらしいですよ。男色の貴族のかたって。」


そんなフードの女の話を聞いた住人は急に冷ややかな目になってしまう。


「はぁ~、なんだそれ。私は女を奪い合うくらいなら、昔はそんなこともあったなって温かい目で見ていたけど、男が男を奪い合っているのなら話は別だよ。


あぁ~、鳥肌が止まらないね。まったく、あんな往来でなんて汚いものを見せつけてくれるんだよ。私はすっかり騙されたよ。そうだ、お隣さんにも教えてあげないと、じゃあ、ありがとうね。」


こうしてその住人はフードの女性の元から去っていき、瞬く間に噂は書き換えられていくのだった。

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