第20話 チャンス到来
「ジャーニさん!バリットさん!大変です、大変です!」
ジャーニとバリットが計画に関して話し合っているところ、チアが急いで走ってきたのだ。彼女は買い出しに行っていたはずだが、何かあったのだろう。息を切らしながら、急いでこちらにやってくる。
「チア、そんなに急いでいったいどうしたの。普段のあなたらしくないわよ。」
「ぜ~っ、ぜ~っ。すみません。ですが、大変なんです。私が買い物に行ったときに噂を聞いてしまったんです。二人が奪い合っていたんですよ!」
チアは興奮してしまい、伝えたいことが何を指しているのか、二人には全く理解できないでいた。
「チア、落ち着いてちょうだい。主語がないから何を言いたいのか分からないわよ。いったい、誰と、誰が誰を取り合っていたのよ。」
「ですから!ルミニ様と二コラ様がリズを街の往来で喧嘩をしながら取り合っていたんですよ!」
チアの衝撃的な発言に先ほどまでは座っていた二人が思わず立ち上がってしまう。それくらい、二人にとっても衝撃的な出来事だったのだ。
「チア、いったいどういうことなんだ。詳しく話してくれ。」
こうして、バリットに尋ねられたチアは二人の言い合いを聞いていた住人の話を二人にもするのであった。
「ということなんです。現場にいたのは二コラ様とルミニ様でリズ本人はどこにもいませんでした。二人は突然、リズのことを取り合って喧嘩をし始めたらしいんです。どのような経緯でそうなったかは分かりませんが、住人たちの間ではその噂で持ち切りです。」
「それで、住人たちの彼らに対する反応はどうなのだ!」
二人がリズを奪い合う。しかも、住人たちが大勢見ている目の前でだ。これは計画を実行する上で非常に良いタイミングだ。いや、むしろ今こそが絶好のタイミングであり、今しかない。
しかし、それには住人たちの彼らに対する反応が非常に重要となってくる。だが、その点に関しても問題はなかった。
「安心してください!住人たちの間では貴族の二人があそこまで奪い合うリズという女性は一体どのような人間なのか噂になっており、そんな彼女を奪い合う二人を優しい目と言いますか、生暖かい目で見守るような動きです。
「それって、私達が予定していたよりもいい反応じゃない!そんな温かい目で見ていた住人たちが二人が取り合っていたリズが女でも何でもないと知ったら二人はもう終わりね。その場にリズがいなかったことも良いことだわ。
彼女の容姿を住人たちが見ていれば彼女が男だという噂も広まらないかもしれないけど、偶然にも彼女はいなかったのだから。
それに、二人の中では女性を取りあっていたはずだから、二人の中では正常なことなのかもしれないけど、住人達から見ればそうではないわ。もしも、リズという人間が男なのではないかという人がいれば二人は往来で男を取り合うヤバい人間というレッテルが張られるわね。
そう言うのを私たちは待っていたのよ。お父様、今こそがチャンスだと思うの。今からチアと二人で例の噂を広めようと思のだけれどどうかしら?」
「良い考えだ、そうするべきだろう。二人とも、盛大にリズの噂を広めてやるんだよ!」
こうして、婚約者屈辱計画は最終章を迎えようとしているのだった。
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