第19話 デジャブ
「ニコラ!君には本当に失望したよ。君など貴族としての資格すらない。そんな奴が私の派閥に所属していれば私の沽券にかかわる。さっさと私の目の前から消えるのだな。」
ニコラはルミニの言っていることが全く理解できない為、完全に思考が停止してしまっていた。彼はルミニに話があると言われ、なぜかわからないがこの繁華街に呼び出されていたのだ。
「いきなり何を言っているのですか!あなたが私を派閥に入れたいと言ってきたのではないですか!それなのにいきなりこのような場所でそのようなことを言うなど理解に苦しみます。」
「お前の話など聞くつもりはない。そんなことは時間の無駄だからな。それと、お前の婚約者は話の分かるなかなか良い女だ。この際、私の女としよう。だからお前はあの女から手を引くのだな。」
そう言われてしまい、ニコラはようやくルミニがどのような目的でこのような場所に呼び出したのかを理解したのだ。
「そう言うことですか、あんた本当に汚い人間だな。人の婚約者をわざわざ奪うために私を派閥に迎え入れようとして、用が済めばこんな場所でポイか。ご苦労様だな、こんな往来でそのようなことを言い放てば、こちらが言い返さないとでも思っていたのか?
残念だったな!俺はそんな甘ちゃんじゃないんだよ。ふざけるなよ!この卑怯者が。お前なんかの派閥になんか、誰が入ってやるかよ。こっちこそ、願い下げだ!それに、リズは俺の女だ!お前みたいに卑怯なことをしないと手に入れることが出来ないチキンになんか渡すわけがないだろ。」
このような往来で自分の前から消えるように言えば貴族としてのプライドから口答えをせずに、すぐに立ち去ると考えていた。そのため、まさか二コラからこのようなことを言われるなど考えることすらしていなかったのだ。
そんな予想外の発言に、徐々に、徐々にルミニは顔を赤くし、怒りをあらわにする。彼は怒りの感情から、このような往来で騒ぐという恥ずべき行為を完全に忘れてしまっていた。
「キッサマ!何だその口の利き方は、なめているのか!お前は私の言うことを聞いていればいいのだ!さっさとリズを諦めて貴様は消えろ!」
「諦めるのはあんただ!リズは俺の婚約者だ!他人の女を追いかけるなんている卑しい真似をしていないで自分の女でも見つけるんだな!」
そんな二人は何人もの人間が歩いている往来で言い争っていたのだ。彼らのことなどすぐに噂になり、住人たちが彼らの周りに集まり、何やら噂を始めてしまっている。
しかし、二人はお互いの発言に怒りを抱き、相手のことを罵倒し続けてる。そんな二人が集まってきた住人達の存在に気づくことなどなかったのである。
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