第16話 手のひらで踊らされている人間は自分がカモだと気づかない

「ん?派閥だと?ほう、ジャーニは私が派閥を作ろうとしているのを知っていたはずだが。それを邪魔するように急に派閥を作ろうとするなど、バリット殿も落ちたものだ。やることが幼稚で、姑息としか言えないな。」


ルミニはやれやれと言うように首を振り、バリットをあおるように顔を近づけ、ニヤニヤしている。そんなルミニを相手にしているバリットの表情には変化がない。


そんなバリットをルミニは自身の考えが暴かれたから何も言うことが出来ないと考えていた。そこで、彼はバリットにさらなる追い打ちをかける。


「おい、二コラと言ったな。こんな落ち目の子爵の派閥に入っても何もいいことがないぞ。私も派閥を作ろうと考えていたのだ。私は伯爵家の人間だ。そこにいるバリット殿の派閥よりも強力でお前にとってもプラスになるぞ。


いまなら、好待遇で私の派閥に迎えてやる。そちらにつかずに、私の元に来い!」


そう、ルミニが行った追い打ちとはバリットが派閥に迎え入れようとしていた二コラを自身の派閥に迎え入れることだった。やっていることは完全に派閥に勧誘している人間を奪うことだが、それでバリットが苦しむのであればルミニは満足なのだ。


そのうえ、自分の派閥も人数が増えることによってさらに強化される。バリットの企みを阻止して自身の力に変える。これだけでルミニは自分が優位に立ったように感じ、機嫌が良くなる。


「ニコラ様、ルミニ様についていきましょう。ルミニ様は次期、伯爵なのですから子爵様を気にする必要などありません。」


「ほう、確かリズと言ったか、話が分かるではないか。お前の婚約者はとうやら賢いようだが、おまえはどうなのだ?」


リズは子爵よりもルミニについていく方が良いと二コラに進言すると、ルミニは彼女を褒め、二コラにも返事を尋ねる。


「もちろんでございます、私もルミニ様についていきたいと考えていたのです。ぜひ、私を二コラ様の派閥に入れてください。」


「くくくっ、よく分かっているではないか。そう言うことだ、バリット殿。彼はどうやら私の派閥に入りたいようだからな。まさか、本人が私の派閥に入りたいと言っているのに、バリット殿が止めようとするわけがないよな?」


ルミニがバリットに笑いながら訪ねているが、バリットは答えようとしない。彼が何も言い返してこないのを見て、ルミニは彼が完全に負けを認めたと思ったのだ。


「ふふっ、あははっ。まったく、詰めが甘いとしか言いようがないな。まぁ、私も彼という人間が手に入ったのだ。一応感謝くらいはしておこう。ふははっ。おい、それでは行くぞ。」


「はい!これからよろしくお願いいたします、ルミニ様。」


こうして、すべてはバリットの手のひらで転がっているとも知らずに、二コラはめでたくルミニの派閥へと参加することになり、二人の接点が繋がれることになったのだった。

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