第15話 二コラが二コラたる所以
出会って早々に、ルミニにジャーニのことを馬鹿にされ、バリットは心の中では怒りが爆発しそうであった。しかし、ここは国王の誕生パーティーの会場なのだ。このような場所で怒りに身を任せ、怒鳴りつけるなどもってのほかだ。
長年、貴族として生きてきた経験で怒りを抑え込むが彼だって人の親なのだ。ここまで娘を馬鹿にされ、貶められ怒りが溢れてこないわけがない。
彼は拳を強く握ることで必死に怒りを抑えるのだった。そもそも、ルミニは伯爵家の息子ではあるが当主ではない。そのため、厳密には爵位はないためバリットと比較すればバリットとのほうが爵位は上なのだ。
しかしながら、この国の貴族は世襲制であるため、将来、彼が伯爵になることは間違いないだろう。そうした理由から、本来であれば爵位が下であるルミニがバリットに対して偉そうにすることが出来るのだ。
「ルミニ殿、娘には何の非がないのにもかかわらず婚約破棄を行ったあなたにそのようなことを言われるとは私も思いませんでしたな。いやはや、ご自分の性格をよく理解されている。」
もちろん、バリットだってバカにされるばかりではない。このムカつく男に皮肉の一つだって言いたくなるのだ。
しかし、そんなことを気にするルミニではない。なぜなら、自分は伯爵の息子で相手は子爵なのだ。貴族の世界というのは爵位が高いものの言うことがすべてであり、ルミニが黒と言えば白でも黒になるのだ。
「何を言っているのか理解に苦しむな。今回の婚約破棄はそちら側の不手際だ。その責任を私に擦り付けようなど、子も子であれば親も親だ。ん?そういえば、そちらの二人はどなたかな?」
「はて、別にあなたには関係ないことですので答える必要はありませんな。さて、二コラ殿、話の続きはあちらで行いましょう。あまりこの話は聞かれたくありませんので。」
そうして、バリットは二コラたちを連れて行こうとしたが、それを止めたのはルミニだった。
「まて、そちらの二人は私に挨拶をしてから去るべきだろ、伯爵家の私に無礼だとは思わないのか。」
そう言われてしまえばいくらバリットに呼ばれたからと言っても答えないわけにはいかない。いや、むしろ二コラが挨拶を行おうとした理由は伯爵家の人間という言葉を聞いたことが大きいのかもしれない。
「これは失礼いたしました。私は本日こちらのバリット様に招待されてこちらに参りました男爵家の二コラと申します。こちらは私の婚約者であるリズです。」
「ほう、いったい男爵家の人間がどうしてバリット殿に招待を受けたのかな?」
「それは、バリット殿から派閥に入らないかというお話をお受けしまして、参った次第なのです。」
二コラは目の前にバリットがいるというのにもかかわらず、派閥の話をしてしまう。派閥の人間でもないルミニにこのような話を行うことなど許されることではない。
今回は派閥を作るという嘘の理由で二コラを呼び寄せていたからよかったものの、そんなことをしえしまえば恨まれ、後から何をされるか分からない。
そう言った事すら理解できないから、二コラは二コラなのだ。
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