第13話 終わりの始まりは一通の手紙から
とある日、チアの元婚約者である二コラの元へ一通の手紙が届く。
「坊ちゃま、こんなものが届いております。どうやら、子爵家の当主であるバリット様が坊ちゃまと話をしたいというものなのですが、どういたしましょうか?」
「なに!子爵家の当主がこの俺に話があるっていうのか?親父ではなく?」
「はい、そうでございます。旦那様ではなく、坊ちゃまに対してでございます。どうやら、子爵の派閥に関して話し合いたいということみたいです。場所は国王陛下の誕生パーティーで行いたいと書かれています。きっと、未来の男爵である坊ちゃまを派閥に引き入れたいのでしょう。」
「それはチャンスだな、子爵様に気に入られれば俺も男爵の中でも突出した存在になれるかもしれない。」
爵位が自分よりも上の貴族に気に入られている、それだけで二コラは気分が良くなってしまう。これを機に、自分は男爵の中でも一目置かれる存在になるのだと、高い上昇志向を燃やしている。
そして、ここにいるリズも同様だ。彼女は二コラが子爵に一目を置かれているということに関してはどうでもよかった。彼女が気にいったところはその話し合いが国王陛下の誕生パーティーの会場で行われるということなのだ。
そう言うことなら、当然、招待状も用意されているだろう。いくら国王陛下の誕生パーティーと言えど、こんな田舎の街しか治めていないような男爵が参加することなど不可能なのだ。
いや、不可能ではないかもしれないが、参加したところで誰にも相手にされず、他の貴族達に笑われに行くようなもので二コラが参加することなどないと彼女は考えていた。
しかしながら、子爵からの招待状があれば話は変わってくる。上の爵位のものから誘われたのであれば、それを理由にすれば悠々とパーティーに参加することが出来る。田舎しか治めていないような男爵でも問題が無いのだ。
リズは二コラとはくっついたばかりだというのに、内心では飽き飽きしていたのだ。こういう男は手に入れるまでが楽しいのであって、一度、手に入れてしまえば何も楽しくない。
既に、二コラに飽きてきたリズは次の相手を探したいと考えていた。しかし、今よりもグレードが落ちるのはダメだ。それでは何も面白くない。今の相手よりもさらに落とすのが難しい高貴な相手、そうでなくてはならないのだ。
国王の誕生パーティーと言えば二コラよりも爵位の高いものなどざらにいるだろう。いや、むしろ爵位の高いものしかいない。そんなパーティーにリズが参加しないわけがない。
「二コラ様、私もそのパーティーに参加させていただけませんか?子爵様に二コラ様の婚約者と紹介されたいです!」
「おぉ、そうだな。子爵様にはちゃんとリズのことも紹介しないといけないな。まったく、可愛い奴め。そんなに俺の婚約者として紹介されたいのか?」
「もう、二コラ様、意地悪しないでください!」
こうして、二人の頭の中では全く別のことを考えているが、パーティーに参加することになったのであった。
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