第12話 幸せな二人と街の声
「あぁ、リズはなんて美しいんだ。君のような子と婚約できるなんて私は幸せ者だ。」
「そんな!私こそ、二コラ様と一緒になれてうれしいです。」
ここはチアが王都に移動する前に暮らしていた村。村と言っても大きな村なため住人たちやこの村を訪れている商人たちとでにぎわっていた。
そんな中で二人のことは住人たちの間で有名な話になっていたのだ。それはリズが二コラの婚約者になった経緯にある。噂ではリズには男のような容姿をしている妹がおり、彼女は自分よりも姉の方が可愛い容姿をしているからという理由で彼女のとある噂を広げていたのだ。
嫉妬にかられ、あることないことを噂で広める。そんな意地汚い女だったのだ。しかし、そんな可哀想な境遇のリズをこの街の領主の息子である二コラが助け出したのだ。
娯楽が一切ない、この村にそのようなロマンス溢れる話が広がらないわけがなかった。住人たちは娯楽に飢えているのだ。そんな二人の仲睦ましい様子は瞬く間に広がっていくのだった。
「二コラ様、みんなが見ていますよ。こんな往来で口づけなんてやめてください。恥ずかしいです。」
「良いじゃないか、君は今までさんざん虐げられてきたんだよ。今度は幸せにならないと。それに、住人達も僕たちを応援してくれているんだから、見せつけてやるくらいじゃないと。」
そんな二人の仲のいい様に住人たちはホッと和まされるような時間を楽しんでいるのだった。
「いやぁ、本当に良かったわよね、リズ様。両親が死んじゃってから散々、妹にいじめられていたんでしょ?可哀想にね。」
「そうね、何でも自分よりもかわいいからって、リズ様のことを男だって言い張っていたみたいよ。自分の方が男みたいな容姿をしているのにね。まったくどうかしているわ。」
「ほんと、二コラ様と一緒になれてよかったわね。今度こそ、幸せになって欲しいわ。両親も死んじゃって、妹にも裏切られてなんて悲しすぎるわよ。今まで不幸だった分、幸せになって欲しいわ。」
そんな住人たちの井戸端会議ともいえるような話し合いにこんな意見を言うものもいた。
「なぁ、でもよ、俺が聞いた話じゃ、あのリズ様に恋人をとられたって言う女もいるみたいだぞ。」
しかし、リズのことを話している住人はそんな男の話など笑い飛ばしてしまう。
「あははっ、何を言っているんだよ。まったく、あんたはすぐに噂に騙されるんだから、そう言うのはちゃんと調べなさいよ。
いいかい、女って言うのはね、とことん卑怯なもんなんだよ。男に振られたのが恥ずかしくてとりあえず人気者のせいにしておけば周りから同情されるだろ。そうすれば次の男が寄ってくるんだよ。
だから、次の男を捜すためにとりあえず人気者のリズ様のせいにしているだけだよ!まったく、少しは勉強するんだね!」
こうして、住人たちの間ではリズを擁護する声のみが広がっていくのだった。
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