第8話 見習い料理人?
「美味しい!これ、チアが作ったの!すごいじゃない。うちの料理長は厳しいから、料理なんて出させてくれないと思っていたのに。」
「はい、いくらお嬢さまの紹介ということであっても調理場は料理人にとっての聖地です。ですので、どんな人間であっても料理を作らせないと決心していました。
ですが、彼女の料理の腕は天才的です。そんな彼女の料理を旦那様やお嬢様のお口にお届けしないことの方が料理人として許せなかったのです。だからこそ、彼女には料理を一品、任せてみました。」
現在は夕食どき、ここでチアは初日にして料理を任されることになってしまい、ジャーニや彼女の父に一品だけ、料理を披露していたのだ。こんなことになってしまったのには理由がある。
ジャーニの計らいによってここで働くことになったチアは料理が得意ということで厨房で働くことになった。そんな彼女を迎え入れたのは何人もの屈強な料理人たちだ。
「お前がお嬢様が連れてきたっていうチアか。」
「は、はい。チアと申します。料理が得意なのでこちらで働かせていただくようにお願いしました。今日からお世話になります。」
チアは頭を下げるが料理人たちは彼女をあまり歓迎していないというのが伝わってくる。
「一回しか言わないから、よく聞いておけ。ここは料理人にとって、聖地ともいえる場所だ。ここには足手まといなんか必要ない。お嬢さまの紹介か、料理が得意だか知らんが邪魔する奴は追い出してやる。新人は、俺が良いって言うまで厨房にすら入ることを許さねぇ。お前ができるのは掃除だけだ。」
「はい!分かりました。精一杯お仕事をさせていただきます。」
「しかし、今日だけは特別だ。新人が入った時にはそいつに自分の実力を知ってもらうために料理を作らせることになっている。ここにいる全員がお前の料理に対して評価を行うぞ。中にはこれでやめていった奴もいるからな。せいぜい、気を引き締めろよ。ここで腕を見せればそれだけ厨房に入る期間が速くなるからな。」
彼はおそらくいい人なのだろう。チアは第一印象ではコワモテだと感じていたが、先ほどの発言から料理に対しては一切妥協がない人だと分かった。こういう、職人のような人間は料理に対しては公平だから嫌いではない。
「分かりました、私も皆さんに認めてもらえるような料理を作って早く厨房に立たせてもらえるような料理人になります!」
「ナマ言うじゃねぇか!いいだろう、お前の料理をきちんと評価してやるぜ!だがな、それだけ言ったんだ。下手なものを作りやがったらすぐにでも追い出してやるからな。」
特に生意気なことを言った覚えはないがなぜかそういう風に受け取られてしまった。こうして、チアは料理人たちが凝視している中で料理を行う羽目になる。
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