第4話 計画の思いつき

そんな二人の会話も酒が入っていたことによってどんどん弾んでいく。そんな中、二人はようやくお互いの名前も知らないことに気が付いたのだ。


「あれ、そういえばまだ名前を言っていなかったわね。私はジャーニって言うのだけど、あなたの名前はなんていうの?」


「おっと、これは失礼しました。ジャーニ様、私の名前はチアと言います。すみません、私の愚痴ばっかり聞いていただいて。」


そんなチアの反応にジャーニはなんだか不満気だ。チアに顔を近づけ、不貞腐れたような表情をしている。


「ちょっと、あたしたちは友達なんだから呼び捨てでいいわよ。様なんてやめてよね、他人行儀で嫌なのよ。それに、愚痴は私だって聞いてもらっているんだからお互い様よ。」


「えっ、そうですか?でも流石に呼び捨てはマズいですよ、ジャーニさんでどうですか?」


「まっ、良いわ。それよりも、なんかやられっぱなしで悔しいわね。私達がこんな酒場で飲んでいるっているのにあなたの兄と元婚約者は今頃、幸せそうに二人だけの時間を過ごしているんでしょ?私の元婚約者には相手がいないからまぁ、良いけど。」


チアが自分のことを様付けして呼ばないことが分かると先ほどまで不貞腐れていたジャーニの顔は瞬く間に笑顔になる。


そして、ジャーニはさらにお酒を追加で注文し、グイグイと飲み干すのだ。すでに何杯も飲んでおり、彼女の顔は赤くなっている。


「それはそれで気持ちが悪いですけどね。兄の性別を知ったら元婚約者がどんな顔をするのか。発狂するんじゃないですか?」


「あははっ、何それ、面白い!あっ、良いこと思いついちゃった。あなたのお兄さんって、すごくかわいいのよね?」


ジャーニは酒を持っている手と反対の手でバンバンと机をたたき、笑い転げている。


「えっ、まぁそうですね。村にいたころは大抵の人たちが振り向いてはいるほどでした。」


チアは彼女が一体何を思いついたのか不思議そうに、ワクワクしながら考えている。


「私の元婚約者にあなたのお兄さんを略奪させるのはどう?」


「はい?どういうことですか?」


チアの元婚約者は男性であり、彼が選んだ相手もチアの兄であるため男性だ。そんな彼をジャーニの元婚約者に略奪させる?もはやチアの頭の中ではカオスな現象が出来上がっていた。

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