第2話 婚約破棄はここにもいた
もちろん、今までに散々迷惑をかけられて来たのだから私だって復讐をしてやろうと、兄が奪っていったボーイフレンドたちに彼が女ではなく、男であるということを伝えた。
しかし、現実とは悲しいものだ、男のような風貌をしている私が誰もがうらやむような容姿をしている兄に対してそんなことを言ったところで周囲からはただの嫉妬と言われてしまい、私はこの村では悪質な嘘つきとして扱われている。
だからこそ、私がこんな仕打ちを受けていても周囲の人間は誰も手を差し伸べてはくれず、ニヤニヤと笑っているだけだった。みんな、やっと醜い女に罰が下ってスッキリしたというような表情だ。
もはや、こんな村に私は一秒だっていたくはない。すぐさま、自分の家に帰り、荷物を詰めると私は早々にこの村を立ち去るのであった。
村から逃げ出した私が向かったのは王都だった。そこならば私にも働き口があると思ったからだ、すでに私は家を出た身なのだから仕事が無ければ生活していけない。
そんな中、私が見えたのはにぎわっている酒場だ。普段は絶対に酒など飲まない私だが、こんな日くらい何もかも忘れたいものだ。何か変わるわけでもないが、私は酒場独特の雰囲気に呼ばれるように向かっていくのだった。
「「あークソッ!イライラするな~、絶対許せない!何が婚約破棄だ!」」
私は酒を一気に飲み干し、婚約者、兄、あの村の住人たち全員に怒りを向け、コップを机に叩きつける。
「「えっ?」」
すると、私の隣で飲んでいた女性も私と同じような発言で酒を飲みほしていた。
「あの、もしかして、あなたも婚約破棄されちゃいましたか?」
私は隣の女性に恐る恐る声をかける。先ほど、彼女も婚約破棄という言葉を口にしていたからだ。
「ええ、そうですわ。もしかして、あなたもなのですか?」
「はい、そうなんです。」
こんな偶然があるのだろうか?本当に驚きだ。こうして私たちはお互いの境遇を酒のつまみに話し合うことになった。彼女はフードに身を隠しており、その中からはきれいに整った容姿が覗いている。
どこからどう見ても貴族の娘であることは明らかだ。そんな彼女がこんな場所でいったい何をやっているのだろうか?私は、村の住人たちの怒りよりもそちらの方が気になってしまった。
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