婚約者が婚約破棄で乗り換えたのは私の姉でした。でも彼女がオスだというのを知っているのは私だけです。

創造執筆者

第1話 婚約者は見る目がない

「悪いな、やっぱりお前との婚約はなしにするわ。だって、おまえ、女として魅力がないんだもん。今日からリズが俺の婚約者な。」


私、チアは婚約者とのデート中に婚約破棄をされた、しかもこんな往来でだ。周囲には何事かと人が集まり始めている。


そんな私の婚約者の名前は二コラ。彼は貴族で男爵家の跡取りだ。とはいっても彼の家は貴族というよりも平民の代表というほうが正確である。それは彼の家が収める領地が村のような場所だけだからであり、とても貴族と呼べるような生活をしていないからだ。


そんな彼の両親は村の有力者の娘、つまりは私との婚約を行うことによって、自身の治めている領地での結束を強くしようとした。


初めのうちは人のよさそうな男性と思い、彼と婚約できたことを幸せだと感じていたが私の両親がある事故で無くなってからというもの彼は本性を現したのだった。


彼の言い分ではボーイッシュな身なりをしている私のことが気に入らなかったというのだ。そんなこともあり、婚約者としての関係は冷え切っていた。


そんな彼が新しく選んだ相手は私の姉らしい。本来、デートと言うのは男女が二人っきりで行うものだが婚約者の二コラが彼女を連れてきたときから嫌な予感はしていた。


実は彼女は昔から他人の男にしか興味がなかったのだ。時には友人の彼氏を、時には私の男友達をと。そして、その行為がエスカレートし、ついには私の婚約者でさえ手を出してしまったのだ。


「本当ですか!嬉しいです、ニコラ様!さっ、こんな子なんて放っておいてデートでもしましょう!」


彼女はいま聞いたような口ぶりをしているが私から見れば白々しい。本当に彼女にはうんざりだ。だが、もっと腹が立つのは婚約者に対してだ。確かに関係は冷え切っていたため、婚約破棄となるのも時間の問題だと感じていた。


しかし、婚約破棄をするのであればこんな往来で行う必要などないではないか。これも、どうせリズの入れ知恵だろう、こういうことだけは昔から得意なのだ。


こんな人前で婚約破棄をされるなど、どれだけ屈辱的なことか。悔しくて、悔しくて仕方ないが今は我慢する。こんな場所で騒げばそれこそ、リズの思惑通りだ。


でも、これでいいのかもしれない。むしろ、私が何か言わずに二人が結ばれた方がいいのかもしれない。


だって、二人が結ばれれば最後には二コラのおぞましい、恐怖に満ちた顔が見られるのだから。なぜ、二コラが恐怖に満ちた顔をするのか?それは本人以外には私しか知らない事実だ。彼が新しく選んだ婚約者、つまりは自称私の姉であるリズは姉ではなく兄なのだ。


正真正銘、生物学的にはリズはメスではなくオスなのだ!

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