見飽きた世界
私は懐かしい匂いの中で目を開けた。
誰かの腕の中でむっくりと起き上がった。
「ねえ。どいてほしい」
良く知った懐かしいやつだ。外見は違うけど、それだけは分かる。
「...起きたの?」私の知らないことを知っている人間が言う。
「うん」ぽつり呼吸みたいに漏れた声で、その場は十分だ。語る事なんてない。花に水をやる気は失せた。自論の中では、慈愛というものに永遠は存在しないと思っている。
「今日はもういい。送れとも言わない」ただ『待って』そう言われるのが嫌で、私は足早に彼の家を去った。
夜の新宿だ。スクランブルはいつも通り人が雑踏としている。目に悪そうなに輝くネオン。浮世離れた光の中にいる。
「あー。とても素敵な話だ」
まるであの
けれどそれは、つまらない。あの少女はひどく強くて面白くない。
「満足?」私を嫌いになって、それでお仕舞い?
それはどうしてか足りないと思う。
「私の面白いって何?」
ネオンの灼けつく色でケバケバとしたこの街にも少し飽きてきた。嘘に塗れたこの街が、目に痛いくらいの極彩色が、全て嫌いになっていた。
それなのに、現世の依代があれ程に良心深いとは、最早笑えてくる。
「おかしい」里紗が嫌いなのは私じゃない。
地へと俯いて、私の体を見る。
手は白く繊細で、柔らかい肌だ。
「愛されているのね」
私は報われない。けれど、この子は明らかに私と違う。そうと、確たる根拠だってこうして存在するのだ。それは鏡の裏の中で彼女の全てを、嫌という程見せられていた。
「私はあんな風にはなれない」
過去はもう戻せない。私も彼女も一緒だ。私は誰かの不幸や欲望を食べて喜ぶ悪魔だし、彼女は私の
「
非常につまらない。生き方だ。この無意味な街の中で思っていた。
「...分かったわ。ならば、もう飽きた」
悪趣味。昔からの劣等を誤魔化すため。冥界での退屈を誤魔化すため、私は誤った行為をしている。他の誰でもない私自身が、そう認めよう。
「莫迦げた事は、早く終わりにするに限るわ」
ネオンの世界を最後に目に焼いた。
「...この体は今日で捨てる」
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