第五話 王子との出会い

 ユーリーはドラゴンと生活をしていていくつか気付いたことがある。


 一つ目は、ドラゴンのパワーについて。まだ生後三か月ながらユーリーの住む森のどのモンスターよりもパワーがある。大きい岩でも軽々持ち上げられるし、大きいイノシシを足で掴んで運ぶことも出来る。


 二つ目は、ドラゴンの知能について。ドラゴンはスライムやアンガーウルフ以上にユーリーの言っていることが理解でき、お願いされたことをこなすことが出来た。生後三か月のそのドラゴンは、言葉さえ喋れないが人間の五歳児程度の知能があるように思えた。


 三つ目は、ドラゴンと他のモンスターの関係性について。スライムやアンガーウルフはモンスターとしての本能がそうさせるのかドラゴンと少し距離を置いて生活していた。森で出会うモンスターもドラゴンを見ると逃げ出してしまう。ユーリーは意思の疎通が密に出来て、まだ幼いドラゴンのことを無意識のうちにスライムやアンガーウルフよりも可愛がっていた。



*****



「ドラちゃん今日もお魚とりに行こう!」


 ユーリーはいつものようにドラゴンを連れて川まで向かった。


 川に向かう途中、モンスターのうなり声と人の悲鳴が聞こえてきた。


「ドラちゃん聞こえた? たぶん人が襲われてる。助けに行こう!」


 ユーリーとドラゴンは声の聞こえる方まで走った。


 ようやく辿り着いた先では、人々が馬車を守りながら大型のクイックベアーと戦っていた。ユーリーの二倍の大きさはあるそのモンスターは、鋭い牙と爪を持っていた。何人かの人間が血を流して倒れていた。


「ドラちゃん、あのモンスターを追い払って!!」


 ドラゴンがクイックベアーに飛び掛かった。鋭い爪が当たり、クイックベアーの目から血が流れた。同時にドラゴンの咆哮が辺り一面に響いた。クイックベアーは驚くほどあっさりと逃げていってしまった。


 モンスターに襲われていた人間たちはドラゴンを見て恐怖を感じていた。咆哮を聞いた瞬間、力が抜けてその場に座り込む者や逃げる者までいた。


「大丈夫ですか? このドラゴンは味方なので安心してください!」


「な、なぜドラゴンが!?」


「やめてくれ! 襲わないでくれ!!」


 人々が次々とそう呟いた。その瞬間、馬車から一人の男が降りてきた。


 ユーリーと隣国であるレッフェッロ王国の第一王子シルヴィスの出会いの瞬間であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る