第三話 卵の変化
小屋での生活を始めてから一年が経とうとしていた。
ユーリーとスライムと卵の化石の他に、アンガーウルフも生活を共にするようになっていた。本来は群れで行動するアンガーウルフだが、なぜか一頭だけでいるところを見かけ、それ以来なつかれて一緒に行動している。
「スラちゃんとウルちゃんの気持ちはわかるのにこの前森で遭遇したフライングラビットは気持ちが伝わらなかったのよね。モンスターで気持ちが通じ合う子と合わない子って何が違うんだろ」
ユーリーはモンスターと生活するうちに、なぜ一部のモンスターだけ自分と気持ちが伝わるのかを疑問に思っていた。
「いつかモンスターがたくさん出没する場所にいって色々と試してみたいな。ここの森はモンスター少ないから」
そんなことを考えながら今日もいつもの生活が始まった。
ユーリーは日の出前に起き、まず川の水を汲みに行く。そして、森に設置した罠を確認する。たまに小動物がかかっているが、本当に『たまに』だった。
その後、畑の世話をして小屋に戻る。朝ごはんの準備をし、スライムとアンガーウルフと共に朝食を済ませると休憩がてら仮眠をとる。
夕方に起きるとまた川の水を汲みに行き、森の罠を確認する。その後小屋に戻って夕食の準備をし、スライムとアンガーウルフと共に夕食を済ませると就寝する。
ユーリーの生活は基本的に寝てばかりである。週に何度か気が向いた時に釣りをし、月に一度街へ買い出しに行く以外はほとんど変わらない生活をおくっていた。
「本当にここの生活は幸せ。何も考えなくていいしずっと寝てても怒られない」
ユーリーは森での生活に満足していた。この先何年、何十年も同じ生活をする覚悟もしていた。しかし、ユーリーの生活はずっと同じというわけにはいかなかった。
ある時ユーリーが椅子に座りながら暖炉を眺めているとピシッという音が聞こえてきた。
「あれ? 何かしらこの音……。暖炉の薪がはじけた音じゃなかったような」
ユーリーが暖炉の周りを見渡すと、ある変化に気付いた。
「え!? 卵の化石にヒビが入ってる……」
卵の化石のヒビがどんどん大きくなる。
そして、ヒビの隙間から赤い何かが見えた。
「やっぱりそうだ!! この卵の化石……化石じゃなかったんだ!」
ユーリーが気付いた頃には卵は完全に割れていた。
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