第二話 新しい生活、卵の発見

「ここで新しい生活が始まるのね」


 ユーリーは森にひっそりと建つ狩人用の小屋で小さくそう呟いた。その言葉には悲壮感はなく、少し楽しそうにも感じられる。


「一応しばらく食べるに困らないだけの食料は持ってきたけれど、せっかくお野菜の種をいくつも貰ってきたのだから畑でも耕さないと。ふふっ、なんだか新鮮ね。ちょっと行ってくるからお留守番よろしくね」


 ユーリーはスライムにそう言うと、その小さく華奢な体に似合わない大きなクワを持って畑になりそうな場所を探しに行った。スライムは返事をするかのようにはずんでみせた。


「ここらへんにしましょう。小屋と川の中間地点で土も柔らかいわ」


 ユーリーはクワでせっせと畑にする場所を耕し始めた。


 一時間程経って、クワに固いものが当たった。


「石かしら? どかさないと……よいしょっと」


 石だと思われた灰色の楕円形の物体にユーリーは見覚えがあった。


「これ……卵だわ。卵の化石だ!」


 ユーリーは思いがけない発見に驚き、そして喜んだ。

 卵の周りには石がこびりついており、かなり古そうに見えた。


「この大きさはかなり大型の爬虫類かしら。でも昔はこの大きさの卵を産む鳥もいたのかもしれないわね」


 その卵を大事そうに抱えると、小屋の中に持って行った。暖炉の隣に布を畳んでその上に卵を置いた。


「この生活の初日にこんな大発見をするなんて、この卵は記念として大切にしよう。ここにおけば暖炉にあたりながら椅子に座るとちょうど卵を眺めることが出来るわね」


 こうしてユーリーとスライム、そして卵の化石との新しい生活が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る