7着目 初お披露目! 戦士の衣装の力とは……?

 どの部門でもいいのでギルドに登録していると、その人の要望に応じて宿を紹介してくれたり、宿泊手続きを代行でやってくれたりする。

 というのも、ギルドの中には『宿屋部門』という宿泊業を営む人達が加入する部門が存在しているので、その関係を便利に使えるからこそできるサービスなのだ。


 オレもそのサービスを利用して取った宿で休んでいる傍ら、衣装カタログの説明部分を読んでドレスアッパーのジョブ能力について理解に努めていた。

 そしてわかったことだが、やはりドレスアッパーの能力は前世でオレがやっていたゲームのシステムをモデルにしているとしか思えない。

 ドレスメダルの存在や衣装のラインナップなどゲームとは差違が見られるが、基本的な部分は大体同じだ。


 ふと思い出したが、着せ替え人形のことを英語で『Dress up doll』と言うらしい。

 『Dress up』の後の部分を『~な者』を意味する『~er』にすると『Dress upper』、つまりオレのジョブの名前となる。

 着替えることで能力を変えるジョブの名前としてはピッタリではないだろうか。


 このドレスアッパーのジョブだが、実はオレに色々と影響を与えているらしいことも判明した。

 まず体。どうやらオレの理想とする体型になってしまうらしい。

 オレはゲームではロリキャラが好きだったので、ロリっぽくなるように背は低く抑えられ、体の凹凸がなくなり、胸は申し訳程度のままになっているようだ。そしておそらく、毛は髪と眉とまつげ以外は一生生えてこないだろう。

 なおオレの名誉のために言っておくが、俺が好きなのはロリ『キャラ』であって現実の子供ではない。あくまでキャラクターとしての存在のロリが好みであって現実の子供ではないのを強調しておきたい。

 そもそも、オレの好みの女性というのは前世では一切わからなかったし、今世でもまだあやふやな部分がある。

 仕事で忙しく、恋愛しているヒマも無かったので女性の付き合い方はおろか自分のタイプの女性についてじっくり考える事も無かったからな。


 少々話が脱線したが、ジョブの話に戻ろう。

 ジョブがオレの体に影響を与えていると説明したが、顔だけは別らしい。

 なんでも、顔はオレが元々持っている顔にほとんど干渉はしていないらしい。せいぜい体に合わせて顔のバランスを整える程度らしい。

 つまり、オレのかわいい系男子のような顔は今世のオレの生まれつき持った顔であり、ジョブの効果は童顔のまま留める程度なのだ。


 そして衣装やインナーについて。

 当たり前だが、オレのジョブによって手に入る物なので、オレにピッタリなサイズであることは言うまでも無い。

 特にそれが如実に出ているのがブラだ。ブラは全てタンクトップを上半分だけにしたようなジュニアブラをベースにしている。たとえ大人っぽいデザインや装飾でもジュニアブラがベースなのだ。

 明らかに、オレがロリ体系のままであることを前提にしている。


 とまぁ説明を読んで色々とわかったことがあったが、明日は早いしここまでにしておくか。

 これから少しずつ読んでおくことにしよう。




 翌日。朝食を食べ、支度を調えるとクローゼットを呼び出し中に入った。

 もちろん、ヘルミーナさんに実際の戦闘能力を見て貰うため、インナーと衣装を着るためだ。

 オレは一度全裸になり、シンプル・ホワイト・パンツとシンプル・ホワイト・ブラを着る。そして戦士の衣装を着込めば、準備完了だ。

 クローゼットの中には試着室のような着替えスペースが用意されているが、今はオレ一人しかいないので別に使わなくても問題ない。

 ただ、元々着ていた服を掛けておくハンガーが着替えスペースにあるので、それだけ使わせて貰った。


「待ってたわよ、レオナさん。こっちに付いてきて」


 ギルドに到着すると、そこには動きやすい運動服を着たヘルミーナさんが待っていた。

 後に付いていくと、一度ギルドの建物を出て、別の建物に入った。

 その建物の裏手に出ると、運動場のような空間が広がっていた。


「ここはリリエンシュタットのギルド別館、通称『訓練館』。様々な職種の訓練を受けられる施設よ。ここは冒険者なんかの戦闘系職業の訓練を行う場所ね。じゃあ、今できる事を何かやってみて」


 何の前触れもなくそんなことを言われてしまったが、実は今日必ずヘルミーナさんに見せたいものがあった。


「では、これで」


 そう言うと、オレは虚空から剣を取り出した。それを消すと続いて槍、さらに斧を出しては消した。


「この3種が戦士の衣装で使える武器です。どうやら衣装には武器がセットで付いているらしく、自由に取り出すことが出来ます」


「それはまた、便利なものね……。とりあえず、何でもいいから武器を一つ見せてくれる?」


 そう言われたので、オレは剣を出現させてヘルミーナさんに見せた。


「なかなか品質がいいわね。普通に武器屋で買ったらそこそこ値が張りそう。中級くらいの腕前を持つ冒険者が何回か限界ギリギリの依頼をこなして手に入れられる位の価値があると思う。装備の点に関しては心配なさそうね」


 冒険者にとって、戦闘力や戦術も大事な要素だが、装備も決して軽視できない。

 品質がいい武器を使えば少ない体力で敵を倒すことが出来るし、防具を身に纏えば少々強力な敵が相手でも自分の命を危険にさらすリスクが少なくなる。

 つまり、難易度の高い依頼を達成しやすくなるのだ。

 その観点で言えば、オレのジョブは冒険者として非常に恵まれていると思う。


「じゃ、実際に戦ってみましょう。使える武器は全部試すわよ」


 オレは訓練用の剣を取り、ヘルミーナさん相手に何合か打ち合った。

 同じく槍、斧も訓練用の物を使って刃を交えた。


「――はい、そこまで」


「――それで、オレの腕前としてはどうなんですか?」


「ハッキリ言って、めちゃくちゃ驚いたわ。レオナさんと打ち合ってみて、何年も武器を振るってきた中堅冒険者かと勘違いしそうになったくらい。それに、いくら武人の家の出で武術の訓練を受けてきたと言っても、絶対に得られない実戦経験を積んできたのかと錯覚してしまいそうになったわ」


 お、なんかすごく褒められてる。

 でも、これも衣装の力のおかげなのかなと思う。それくらいオレのジョブが規格外とも言える。

 もっとジョブの力を使い倒し、使いこなすことが出来れば、もっともっとその先の強さを手に入れられるのではないだろうか。


「とりあえず、これでレオナさんの実力がある程度わかったわ。一度本館の方に戻りましょう。今のレオナさんに合う依頼を探すわ」

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