6着目 遂に判明! ドレスアッパーの能力とは?
本が2冊落ちた音がしたと思ったら、目の前のテーブルの上に本当に本が2冊出現していた。
表紙が厚紙で出来ているので、本というよりかはカタログと言った方が近いかもしれない。
この本はそれぞれ『衣装カタログ』、『インナーカタログ』と書かれており、とりあえず衣装カタログの方を読んでみた。
「あー、なるほど。そういうことだったのか」
「レオナさん、その突然出現した本、何かわかった?」
「はい。これ、オレのジョブで出てきた物ですね」
しかも、衣装カタログの最初の方はドレスアッパーのジョブの説明書の様になっていて、ご丁寧にチュートリアル的な構成になっていた。
「そういうわけで、ちょっと能力使ってみていいですかね?」
「ここで? 狭いし危なくない?」
「暴れるとか物を壊すとかそういうのではないので」
「そういうことだったら、まぁ……」
一応このオフィスの主に許可を貰ったので、能力を使ってみた。
最初にやったことは、オレの後に『扉』を出現させたことだった。
「レオナさん……その扉は……?」
「どうも、オレのジョブのキモになる物らしいです。とりあえず中に入ってみましょう」
扉を開けて中に入ると、そこはワンルームのアパートのリビング程度の広さで、白い壁紙とフローリングのおかげでかなり明るく感じられた。
そしてオレの目線くらいの高さにハンガーレールが3本、部屋の端から端を繋ぐように設置されている。
さらにこの空間の奥には、ATMに似た機械とドラム式洗濯機、そして試着室のようなブースが置かれていた。
オレはATMっぽい機械の前に行き、ヘルミーネさんに説明しながら操作を始めた。
「この空間は『クローゼット』と言うらしいです。まぁドレスアッパーの能力から考えればピッタリな名前だと思うんですけど。で、この機械は『注文機』といって、このカタログに載っている物を注文する機械です」
オレは衣装カタログの巻末にある『注文書』に欲しいものを書き込み、注文機の注文書挿入口に入れた。
そしてタッチパネル上に表示された確認ボタンを押す。すると注文機の下部にある取出口に段ボールの箱が現れた。
開封すると、鎧用のインナーと軽鎧が入っていた。
「これは『戦士の衣装』。この衣装を着ると近接戦闘に必要な技術を使えるようになり、ステータスも近接戦闘を行うのに十分なものに変化します」
「ちょ、ちょっと待って。衣装を着るだけで技術を習得できて、ステータスも変化するの?」
「はい。他にも魔法が使える衣装とか、遠距離攻撃が得意になる衣装などもカタログに載っていました」
つまり、衣装を切り替えることでステータスや戦闘スタイルを一変させる。これが『ドレスアッパー』の能力なのだ。
「それって、かなりスゴイ事よ。上手く使いこなすことができればどんな状況にも、どんな依頼にも臨機応変に対応出来てしまう」
冒険者に限った話をすれば、個人によって得意不得意がある。なので、依頼内容の特性によって達成できる・出来ないが存在する。
さらに、複数人でパーティーを組む場合、戦闘でどのような役割を割り振るかで戦略が決まってしまうし、そのパーティーの戦略によっては優秀な人材でも加入を断らなければならない場合もある。
だが、オレのドレスアッパーであれば衣装の選択を間違わなければどんな依頼にも対応出来るし、パーティーに入るにしても(人間関係を考えなければ理論上)欲しい人材に『なって』どこでも入れてしまう。
ハッキリ言って、ブッ壊れ性能と言われても納得できてしまう破格のジョブなのだ。
「そういえば、もう一つのカタログって何があるの?」
「わかりました。では、やってみます」
もう一つの『インナーカタログ』から注文書を取り出し、記入して注文機に入れる。
すぐにやって来た段ボールの箱を開けると、そこには何の飾りもない、真っ白なパンツとブラが入っていた。カタログには『シンプル・ホワイト・パンツ』と『シンプル・ホワイト・ブラ』という名前が付いていた。
ちなみにブラは、タンクトップの上半分だけになったようなジュニアブラであった。
「これ、下着よね?」
「そうですけど、これだけではまだ効果を発揮しません。もう一手間加えます」
オレは注文機の隣にあるドラム式洗濯機に移動した。
洗濯機のそばにある棚からネットを取り出し、下着を中に入れる。それを洗濯機の中に放り込み、洗剤投入口に洗剤を入れ、洗濯機を操作し起動させる。
しばらくすると終了音が鳴り、全ての工程が終了した。
「この機械は『能力付与装置』といいます。インナーに好きな能力を付与させる機械です。例えば攻撃力を上げるとか、魔力を上げるとか」
「それって、衣装とは別にステータスに変化が起こるって事?」
「はい。衣装とは完全に独立しています。ただ、着ていく衣装と能力の相性は考えた方がいいですね。衣装の長所をもっと伸ばすとか、短所を補うとか」
ちなみに、今回はパンツの方に『攻撃力上昇』、ブラの方に『防御力上昇』の効果を付与しておいた。
戦士の衣装に合わせるように付与したのだ。
「まぁ、基本的なところは以上ですね。この他にも色々な効果とかルールみたいな物がありますけど、長くなりそうだしオレも全て理解しているかと聞かれると怪しいので」
「そうね。とりあえず今日はここまでにして、後でゆっくり理解した方がいい気がするわ。最後に質問。衣装や下着は何を対価にして買っているの? お金?」
「専用のお金のようです『ドレスメダル』と言うそうですが」
『ドレスメダル』は、魔物を倒したり賊や敵兵などの害意ある人間を倒すか捕縛すると、手元にドロップするらしい。
手に入れる枚数は、敵の強さなどに依存する。
なお、手に入れたドレスメダルは注文機で管理できる。
今日買った衣装の値段だが、戦士の衣装は100枚、シンプル・ホワイト・ブラとシンプル・ホワイト・ブラはそれぞれ10枚だった。
チュートリアル用に最初から200枚用意されていたので、残りは80枚だ。
「なるほど。ということは、なるべく戦闘を経験して早く魔物を倒せるようになった方がいいわね。レオナさん、明日時間ある?」
「ええ。大丈夫ですけど」
「じゃ、早速訓練と行くわよ。とりあえずジョブ能力を使った戦闘力を見たいし、あなたに合う依頼を選択する指針になるからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます