第20話 勉強と甘いもの

「どういけそう?」

「えっと、どうしているの?」

「仕方ないだろ、俺たちはどっちかが単位を落とすと同居を解消されるんだからな」

「だったら二人で勉強したらいいと思うけど」

「んな、アホな…俺を見捨てるのかゆうと」

「一応見捨てないようにして、ここにいるんだけど」

「ありがとう」

「頑張れー」

「女神!」

「あんた、うちがいるでしょうが」

「くう…」


現在、僕の部屋でじゅん、あい、ゆりが勉強中だ。

ちなみにさっきの会話からわかる通り、じゅんとあいは同棲中だが成績が悪いと同棲を辞めさせられるのだ。

まあ、仕方ないよね。

こういうのは…

ただ、コツコツと勉強はしようよと思うけど、僕もゆりと付き合うまではコツコツやるというのができなかった。

でも隣でゆりが勉強をしているのを見ていると、僕も同じようにして勉強する癖がついて、気づけばゆりと同じように成績が上がった。

そしてじゅんとあいに今は頼られているのだ。

ちなみにゆりはというと英語の新聞を読んでいる。


「ゆりは余裕ね」

「あい…こういうのは積み重ねよ」

「わかってるんだよ、うちだってわかってるんだけど、それができないのよ」

「頑張ろう。あたしも一緒にいるからね」

「そうね。うち頑張る」

「俺はゆうと」

「おう、勉強しろ」

「扱い違うくない?」

「男は黙って手を動かせ」

「な!ひどい親友だ!」

「まあ、そういうなよ。お菓子くらいは作ってやるよ」


僕はそういう。

というのも息抜きついでにお菓子を作ろうと思ったのだ。

前回はゆりがクッキーを作っていたので、できればそれ以外がよくて、あとは手にもって食べられるもの…

そんなことを考えて、作ろうと思ったものはカップケーキだ。

まあ飲み物を飲みながらでないと口が乾燥する食べ物なので好き嫌いがそれなりにある人はいるかもしれないけれど、一つ食べるといくつも食べたくなるものだ。

まずはと材料を用意する。


「ほー、これが材料か…」

「いや、じゅんは勉強しないとだろ」

「わかってる。わかってるが俺にも息抜きがほしいんだ」

「なら走ってくるか?」

「いや、おかしくね?」

「これを装備して走ってこい」

「いや、おかしくねー」


じゅんを追い出す。

ちなみに耳にイヤホンで英語の長文を聞かせるというものだ。

安心していい、聞いていればなれる。

そういうものだ…

ゆりにスパルタのように録音したものを聞かされたのはいい思い出だった。


ようやく作り始める。

小麦粉とベーキングパウダー、バター、砂糖をしっかり測る。

バターを電子レンジで溶かし、そこに砂糖を入れる。

しっかりと混ざったところで溶いた卵を二、三度に分けていれ、その都度混ぜる。

ふるった小麦粉とベーキングパウダーをいれて混ぜればタネが完成。

あとはカップケーキ型に入れるだけだ。

ただのプレーンだけだとあれなので、半分にはチョコチップを入れることで美味しさが増す。

というか自分が好きなだけだ。


あとは予熱したオーブンで焼く。

これで完成だ。

焼きあがるにつれて、いいにおいが漂ってくる。


「いいにおーい」

「ほんとだね」


それによって二人がオーブンの近くによってくる。

時間を見ながら一度取り出す。


「やきあがったの?」

「確認するよ」


僕は竹串をさす。

これにより生焼けだと竹串につくのだが、そうならなかった。


「うん、できあがりかな」

「できたんだね」

「うちも楽しみだったんだよねー」


一度休憩ということで、並べる。

コーヒーを入れて、席につく。

僕とゆりは小さくいただきますをして、先に食べているあいを見ながら二人で笑いあった。


「美味しー」


そう嬉しそうに言うあいだった。

そんなことがありながら、いいにおいにつられて帰ってきたじゅんも含めてお菓子を食べた僕たちは試験までの時間を勉強漬けで過ごすのだった。

夏休みになるまでの時間はこれまでで一番早かったのではないかと思うくらいには気づけば時間がたっていたのだ。

夏の暑さが近づいてくるのを感じながらも僕たちは大学生活で初めての夏休みを迎えるのだった。

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