第18話 親子丼と停電と
「今日は何を作るの?」
「親子丼になるかな」
「親子丼…美味しそう」
早速作っていく。
玉ねぎをカットして、その後にむね肉を焼く。
他人丼という鶏肉以外のものを入れるものもあるけれど、なんだかんだで、親子丼が安定して美味しいのだ。
普通であれば、先に出汁を作って、そこに切った具材を入れて煮ていくのだけれど、なんとなくそれが苦手な僕はまずは油をしいて鶏肉を炒める。
こうすることで、たぶん香ばしさがでるはずだ。
焼き色がつきよくなったところで、一度お皿などにあげておき、荒熱が取れればカットしておく、次にようやく出汁といってもお水と顆粒出汁を使った簡単なものを入れた。
その後にみりん、しょうゆ、砂糖などを入れて、沸騰したところで玉ねぎを入れる。
蓋をして少ししたら焼いた鶏肉を入れて、煮込む。
鶏肉を入れて4、5分煮たら、最後に卵を回し入れて完成だ。
最後の卵に関しては半熟が好きな人もいるので、半分しっかりと入れて固めて後でもう一度入れることをすれば半熟を作りやすいと聞いたことがある。
ただ、僕はこういうときはあまり半熟よりもしっかりと固まっているほうが好きだったりする。
その方がお汁を多めに入れたときに美味しいからだったりする。
そんなことをしながらも、お互いにご飯を入れて、食べることにする。
「「いただきます」」
二人の声が響いて、ご飯を食べすすめる。
「美味しい…最初に焼いても美味しいんだね!」
「まあ、調味料の分量さえ間違えなかったらかな」
「なるほど」
僕も食べて、これはなかなかいけると感じた。
やっぱり焼いて香ばしさをプラスした方が食べやすい。
確かにむね肉はしっとりしてるから、少しの香ばしさがアクセントになっていたりした。
「「ごちそうさまでした」」
二人で食べ終わったときだった。
部屋が真っ暗になった。
今日はずっと雨が降っていたということもあったし、先ほどから雷も鳴っていたから怪しいのではと思っていたが、どうやら予感が的中したみたいだ。
暗いといっても、もともと体質が田舎者だということもあるのだろう。
目はすぐに暗さに慣れた。
ただ、立ち上がった時に、ゆりと頭をぶつける。
「いたっ」
「いったいよ、ゆうと」
「ごめん、急に立つなんて思わなくて」
「あたしもだよ…」
それで、どうしたのと聞きそうになってやめる。
暗いのが怖いのだろう。
確かに前に実家に来たときも、暗いの怖い、虫も怖いと言っていたように、まだ時間的にも七時を過ぎたくらいだというのに、これだけ真っ暗だと怖いのだろう。
それに、一度ゆりの自宅近くまで送っていったが、今いる僕の大学に近い少しぼろいアパートと違い、目の前にはビルがたち、その中でも少し低めの、ただしっかりといい場所なんだろうと思わされるマンションに入っていったのだ。
「これ使ってよ」
僕は持っていたスマホのライトをつける。
最低限の明かりがついただけでも、ゆりは安心したように少し笑顔になる。
ただ、まだ怖いのだろう、外で何かが倒れたり音がするたびにびくっと体を震わせている。
気づけば僕はゆりの体をゆっくり抱きしめていた。
「ゆ、ゆうと?」
「大丈夫、大丈夫」
「うん…」
その後停電が直るまでは抱きしめていたのはいうまでもなく、そして停電が解除されると、お互いが恥ずかしくなったのも言うまでもないだろう…
その後は迎えに来てくれたゆりのお母さんとともに帰っていったのを見送った。
少しの温かさを体に残したまま…
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