第11話 看病とうどん

「まずい…」


体がかなりだるい。

間違いなく風邪をひいていることがわかる。

完全にやってしまった。

いろいろ忙しくなってしまったせいで、体調には気を付けていたはずだったのに、風邪をひいてしまうなんて、かなり情けないことだ。


「ああ…学校にも行かないといけないのにな…」


ラッキーなことといえば、今日はバイトがないというところくらいだろうか…

もしあればシフト変更などの面倒くさいことになるからだ。

一度休んでしまうと、次回から休んだときに、変わりにやったのに、やってくれないのかということを言われる可能性がかなり高いからで、それになりたくないからというものだ。

お茶でも安静に寝ておこう。

そう思い、しっかりと寝ていたときだった。

チャイムが鳴る。

誰だろう、こんな時間に…

回らない頭ながらも出ると、そこにはゆりさんの姿が…


「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。寝てるので、すぐによくなりますよ」

「あの…よかったら何かお食事でも」

「あ、ありがとう」


ゆりさんの顔を見ていると、なんだろうか、さっき熱を測ったときにはなかったはずの熱があるように思えてしまうのは本当に不思議だった。

とりあえずあがってもらう。

するとすぐに、飲み物を渡される。


「これを飲んで待っていてください」

「あ、ありがとう」


そして、彼女はキッチンで料理を始める。

わあとかあれとか少し不安になるような言葉が聞こえるが、なるべく聞かないふりをしながらも、料理が出来上がるのを待つ。

でてきたものはチラチラと見えてはいたけれど、予想通りうどんだった。

こういうときにおかゆというものを連想しがちだけれど、料理を失敗しないようにすると考えたときにはかなりいい方法だった。

どうしてもおかゆはお茶碗一杯という、お茶碗の大きさでさえ味が変わったりするからだ。

その点うどんはひと玉でしっかりと分量が決まっているので簡単に料理しやすいというものだった。


「できたよ」

「あ、ありがとう」


しっかりと湯気がたったうどんに僕はにおいで美味しさを感じながらもゆっくりと食べる。

さすがにあーんは勘弁してもらった。

ゆりさんとしては、あーんをやっての看病だったようだけれど、好きな人を至近距離で見ながら、あーんをされるというのは心臓に悪いというものだった。

結局うどんを食べて、すぐに寝てしまった。

というのも寝るまで、一番近くで手を握ってもらっていたのだ。

それに安心するとともに寝てしまったのだ。

しっかりと人の温かさを感じながら、僕は回復へと向かうのだった。

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