第42話 宿屋の夜

   ~~ 訪問者 ~~


「こうなっていると思いました」

 フィアはそういうと、ザビの頭の方にまわって彼女の頭を膝の上にのせ、肩をしっかりと押さえる。

「ありがとう」

 ボクがそういうと、彼女は笑顔で「何人もみてきましたから」

 これは後で知ることだけれど、このときルゥナは初めてのお酒で、早々に眠ってしまい、ミズクは遊び疲れて寝ていた。フィアは初めてで、かつ筋肉質の女の子とするとき、ボクが苦労していることを知っていて、様子を見に来たら案の定……だったらしい。

 しっかりとザビの体が固定され、ボクも彼女の腰を下から支えるようにしながら、自分の腰をゆっくりと後ろにひき、引き抜きそうになったものを、ふたたび奥へと挿しこんだ。

 ザビは痛いのか、手をぐっと握って胸のところに置いたまま、眼もぎゅっと瞑ってそれに耐えている。

 一回、二回、三回……と動くうち、少しずつスムーズにいくようになった。それは、まだ彼女から潤滑油がでてきていないけれど、彼女の中で全体がボクのそれに馴染んできたような、そんな印象をうける。

 痛みと、刺激にずっと耐えてきた彼女の全身から、力が抜けたが分かった。

「イッた……?」

 ボクも不思議そうに、フィアとともにその顔を覗きこんで、ハッと気づく。

「眠っちゃったようですね」

 意識を失った……というのでもなく、眠ってしまったのだ。それは、いくら昼寝をしたからといって、鬼人族にとってはもう眠る時間。その眠気が勝ってしまったようなのだ。


「まさか、エッチの途中で寝ちゃったのか……」

「多分、痛みがなくなってきて、気持ちよくなってきたから、安心して眠っちゃったんですよ。ザビとするときは、夕方までですね」

 フィアもそういって笑う。ボクも仕方なく彼女から体を放すと、フィアがその乱れた浴衣を整えてあげて、布団をかけてあげた。

「ボクも中途半端で終わっちゃって……」

 フィアをみると、彼女も浴衣だ。ボクの視線に気づいて、やや頬を染めながら「そうなることを少し……いいえ、期待していました」

 彼女を横から抱きしめるようにして、そっと浴衣に手を滑りこませる。大きな胸を包んでいる分、その空間も広くなり、特に帯の上に乗るようになっているので、下から手をまわすとその重み、柔らかさを存分に感じられる。

 今日はエドリーともしてきたし、ザビともした。それでもフィアとするのは、また新鮮だ。

 少しはじらいながら、ボクの手の動き、指使いを全身に伝えようと、じっと目を閉じてそれを受け入れている。

 温かく、柔らかく、そしてその小さな突起はもう準備ができていることを示すかのように、自信たっぷりに存在を主張する。

 ボクがそのほっぺたに唇を当てると、すぐに顔の向きを変えて、唇でそれをうけとめてくれる。

 そうする間にも、ボクの手は浴衣の中を這っていく。服の下にあるその場所は知っているのに、探索することを愉しむように……。




   ~~ 二人きり ~~


 宿屋が気を利かせて、こちらの部屋に布団を二組敷いてくれているので、隣でザビが眠る中、ボクとフィアはゆっくりと横たわった。

「帯は外そうか。でも浴衣はそのまま着ていて」

 ボクはそんなお願いをして、フィアの上にかぶさるようにして、彼女を見下ろす。

 裸身がまるで、浴衣を額にして飾られているようで、美術的にも美しいと感じさせる。

「そんな、じろじろ見ないで下さい」

 照れたように頬を染めるのも可愛らしい。積極性のあるルゥナ、無邪気なミズク、大人の雰囲気をもつエドリー、拒否しつつ実は受け入れるザビ、とも違う。いつでも初めてのようにはじらいながら、受け入れてくれる。それはボクも、いつも初々しい気分でいられる、ということでもあった。

 体を近づけていくと、その大きな胸でしっかりと受け止めてくれ、そのクッションを越えて、ボクたちは唇を重ねた。

 互いに吸い付くように、相手の唾液をなめとろうとするので、より深くまで口の中が結びつく。

 ボクの手は自然と彼女の胸をまさぐる。彼女の手がボクの首にまわって、しっかりと体が密着しているので、その押しつぶされて横に広がったところを、丁寧にさする形となる。

 それがくすぐったかったのか、「いやん」と、フィアが口を放す。

 ボクは口が自由になったので、すぐに胸へと口をもっていく。ボクにしばらく押しつけられていたそこは、しっとりと湿り気があり、ボクの唇でそれを足してあげると、まるでお雑煮に入ったお餅のように、表面がねっとりとするように感じられる。

 フィアがボクの頭を優しく包むように、両腕でボクの頭をふんわりと抱いてくれるのがうれしかった。


 右手を下へともっていくと、表面をなぞっただけで、すでに準備が整っていることが分かった。

 ザビとするのを支え、彼女も感じていたのかもしれない。ボクは彼女としていたときから、もうずっと興奮しっぱなしなので、胸から口を放すと、そのまま体を前へと滑らすようにして、彼女の中に入っていく。

 彼女の中はしっとりとして、よく締まっており、また絡みつくようにしてしっかりとボクを包んでくる。

 本当は彼女に後ろからして、そのケモノ尻尾を感じてするのが、ボクは好きだ。でもフィアは、ちゃんと顔をみてするのが好きで、前からを望む。

 ボクも、フィアが軽く目を閉じ、頬を上気させ、ちょっと切なそうな表情を浮かべて受け入れているのを見るのは好きだ。

 腰をつかっていくと、じわじわと気持ちいい感じが伝わるのか、彼女は少しずつ表情がほぐれていき、やがて楽しそうに弾む感じになる。それを見ていると、ボクも少しずつ感情が高まり、それが脊髄を通って脳まで伝わり、頭頂部までジンと痺れるようになって、ボクはイッた……。

 彼女もそれを受け入れて、小さく「ん!」とつぶやき、背を逸らすのと同時に顎を上げた。

 彼女の中に流れこんでいくものを感じながら、ボクはフィアの胸へと手をふれる。愛おしく、ゆっくりと彼女のそこをマッサージするようにさすると、彼女は伸び上がっていた体を今度は丸めるようにして、顔をボクに向けてきた。

「気持ち……よかったです」

「ボクも……よかった」

 二人で、意味もなく笑った。こうして二人でするのは久しぶりだったので、そのころのことを思い出したのだ。ボクも、フィアも初めてで、互いに何が正解かも分からないまま、一生懸命していた。

 今でも、その純粋で初々しかったころを思い出せるなんて……。

 今日は朝まで……。二人ともそんな意識が芽生えた、その笑顔だった。



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